TBM 山﨑敦義 素材革命を起こす中卒社長。水も木も不要。魔法の紙で地球を救う

差し出された1枚の名刺。一見普通の紙だが、使われているのは日本で100%自給自足できる石灰石を主原料とし、原料に木材パルプも水もいっさい使用しないLIMEX(ライメックス)という素材だ。枯渇しつつある木と水を、大量に消費する現在の製紙に代わる新素材として世界中で注目されている。新素材の開発こそ、TBM代表取締役山﨑敦義氏が生涯をかけるべきだと確信したという。

未来の世の中のために変革を恐れない

 20歳で中古車販売業を起業後10年が経ち、この先の人生に悩んでいたころのこと。

「訪れたヨーロッパで何百年もかけ存在する建物や街を見て、自分も世の中に貢献できる仕事で、何百年も挑戦し続ける会社を残したいと思ったんです」

 その後出会った石灰石が原料のストーンペーパーが、その漠然たる思いの解になった。知れば知るほど、高い可能性と地球規模で貢献できる事業になると確信は深まる。当初は台湾から輸入していたが、品質など課題も多く、ならば自分が日本の技術で作ろうと、自社開発に踏み切ったのだ。

「何十億と資金が必要な新素材の開発・製造なんて、気がふれた? とまで言われました」 

素材「LIMEX」

 幾度も危機を乗り越え、それでも挑戦し続けられたのは、LIMEXを信じてくれた人たちに報いたい。それだけだった。

「僕の想いを支持しさまざまな助言を下さった経営学者・野田一夫先生はじめ、補助金を採択してくれた経産省の方や素材の完成を待つ方の期待に応えたい。でも自分のバックボーンを考えれば、この期待と責任を背負えること自体ありがたいんです」

 LIMEXは紙だけではなく、プラスティックの代替にもなり、可能性は無限大だ。

「まさに"素材革命"。ワクワクしてます。いつの日か、使うものすべてLIMEXでできているという世界を作っていきたい」

 山﨑氏の、世界を変えるチャレンジは無限に続く。

悲願の自社工場は2015年宮城県白石市に完成。雇用創出という復興支援も考慮。紙は印刷発色もよく、水に強い。
TBM
世界的にも埋蔵量豊富で、リサイクル可能な石灰石を原料とした素材「LIMEX」を自社開発。東京大学と共同研究、凸版印刷などと共同開発も進む。

Nobuyoshi Yamasaki
1973年大阪府生まれ。中学校卒業後、20歳で中古車販売業を起業。2011年TBM設立。現在第2工場を宮城県多賀城市に計画中。16年シリコンバレーPlugand Playにて「世の中に最も社会的影響を与える企業ソーシャルインパクトアワード」受賞。

Text=牛丸由紀子 Photograph=関 竜太

*本記事の内容は17年2月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)