ビジネスパーソンにも効く! 武蔵野美術大学での片山正通の特別講義

長時間の講義でありながら、学生が整理券を求めて行列を作るほどの人気で知られる武蔵野美術大学の特別講義「instigator(インスティゲーター)」。インテリアデザイナーとして、Wonderwall®を率いながら、武蔵野美術大学で教授をつとめる片山正通さんが各界で活躍するクリエイターや著名人を招き、自らの仕事について本音で語り合うこの特別講義がスタートしたのは、2011年だった。


書籍『instigator』第4弾リリース!

「学生のモチベーションをあげるために、僕が語るよりも学生が興味を持つ“スーパースター”を呼ぼうと思ったのがきっかけ。最初のゲストが佐藤可士和さん、その次が中田英寿さん。そのあとも蜷川実花さんやサカナクションの山口一郎さんなどにゲストとして来てもらいました。みんな学生の前だと、飾らない本音を語ってくれるから、僕自身もすごく刺激を受けています。毎回3〜4時間と長丁場になりますが、それでも話し足りないっていう人もいるんですよ」

これらの講義はこれまで3冊の単行本にまとめられてきたが、この秋、待望の4作目『片山正通教授の「仕事」の「ルール」のつくり方』が発売された。今回のゲストは、編集者の都築響一さん、ミュージシャンのトータス松本さん、チームラボ代表の猪子寿之さん、映画監督の是枝裕和さん、写真家のホンマタカシさんと個性豊かなメンバー。いずれ劣らぬ興味深いトークが目白押しだが、そのなかからホスト役である片山さん自身に"ビジネスパーソンにも読んでほしい"各氏の名言を選んでもらった。

「よく勝ち組とか負け組とかいうけど、人生の最終的な勝ち負けって死ぬ5秒くらい前に『ああ面白かった』って言えるかどうかじゃないかと、最近思うんですよ。どんなにビジネスで成功しても、有名になっても、死ぬ5秒前に『ほんとは音楽がやりたかったんだよな、絵描きたかったんだよな』とか思ったら、それはもう遅い。負け組ってことでしょ。逆に、客なんかいなくても自分の好きな音楽をやり続けて、お金もなくて、病気になってもいい治療を受けられず、でも5秒前に『ああ面白かった』と思えたら、もうそれでいいじゃないですか。究極の勝ち組ですよ」」(都築響一)

「自分のやりたいことだけやれるように、今から10年間かけて鍛え上げていきたい。10年の間に自分がほんとにやりたいことだけをやりながら、伝えたいことをちゃんと伝えられるだけの力をつけたい。かつ、くそ生意気な誰の言うことも聞かへんジジイになりたいです」(トータス松本)

「集団で何か新しいことをやる、って決めたなら、どこかカルト化する必要があると思うんです。チームラボの場合は、デジタル以外禁止。あと20世紀的な概念も禁じました。例えば、一人のスターをつくるの禁止。イベントに安易にミュージシャンを呼ぶのも禁止」(猪子寿之)

「20歳くらいのときに、初めてフェリーニの映画を観たんです。『道』と『カリビアの夜』の二本立てを。それがもうショックだったんですね。この映像を撮っている監督は、絶対にこの主演女優のことが好きなんだろうなってまず思って、帰ってすぐに調べて二人が夫婦だってことがわかって、なんて素敵なんだろうと。監督が映っていないのに画面のなかに監督がいる、と思ったのはこのときが初めてで、そこから映画監督という存在を意識するようになりました」(是枝裕和)

「この前、生物学者の福岡伸一さんと対談したとき、『何で勉強するか』っていう質問に対して、福岡さんは明確に答えたんですよ。『自由になるためだ』って。直感とか、自分の癖みたいなものって、わりとクリエイティブな世界では良いことみたいに捉えられがちだけど、じつはそれによって自分の可能性の枠が、驚くほど狭められちゃってる」(ホンマタカシ)

片山さんは、彼らと語り合い、改めて思ったという。

「結局、どんな世界にも天才はいないじゃないかって思います。みんな足掻いて、一歩ずつ前に進んでいる。でもとにかく好きだからやっているんです。ゲストとして来てくれた方々は、世間のルールや一般的なマニュアルなんか気にせず、みんな自分でルールを決めている。極論を言えば、芸術家になりたければ、芸術大学なんか通っちゃダメなんですよ(笑)。『好き』なことが見つかれば、努力を意識せずとも頑張ることができるし、そうしているうちに結果がついてくるんだと思います」

時代をリードする人間たちの本音には、片山さんならずとも刺激を受ける。ビジネスはもちろん、人生のヒントもこの本には隠されているのだ。

『片山正通教授の「仕事」の「ルール」のつくり方 (CASA BOOKS instigator 4)』
片山正通
¥1,400 マガジンハウス

各界の著名人を招いて行われる武蔵野美術大学での特別講義「instigator」をまとめた人気講義録の第4弾。ホスト役の片山さんの本音の引き出し方も見事。誰もがさらりと自らの“手の内”を明かしている。


Text=川上康介 Photograph=神藤 剛、高木 亜麗


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