経済学者 竹中平蔵 熱き経済学者が日本へ檄!温かい心と冷静な頭脳

閉塞感を打破すべく、日本を代表する経済学者のひとり、竹中平蔵氏がエールを贈る。とくと耳を傾けて今を生き抜くヒントにしたい。

 今の日本の状況は本当に厳しい。複合連鎖危機です。地震、津波、そして放射能と電力不足。特に経済にとって電力不足は深刻で、企業がどんどん海外に出て行きかねない。日本の空洞化を決定的にする可能性があります。企業はまだいい。国境を越えられるから。でも、国民は労働機会を失っても、簡単には国境を越えられない。空洞化した日本に取り残されてしまいます。うわついた優しさを言っていられない状態です。

 私が、いつも自分に言い聞かせているのは、Warm Heart and Cool Head、温かい心と冷静な頭脳。これはリーダーに必要な資質でもあります。経営者であれば、顧客を思い、従業員の生活を守る。でも、温かい心だけでは何もできない。優しさを実行するには、冷静な頭脳が必要なのです。そもそも社会の大原則、組織の大原則は自助自立。自助自立できる人が多ければ多いほど、本当に困っている人を助けることができる。乗っていた船が難破したら、泳げる人には泳いでもらう、泳げない人には救命ボートに乗ってもらう。それを決めるのがリーダーの役割。厳しさがあって、初めて温かさをもたらすことができるんですね。

 今、世界ではフラットとスパイキーが同時進行しています。フラットとは、世界中が同じ条件になること。日本のような先進国は、途上国と同じ条件になれと言われたら、もう沈むしかありません。一方でスパイキー、尖った人たちは、毎日イノベーションを起こしている。つまり、日本はスパイキーの道を選ぶしかないんですね。それには敵も多いし、困難もたくさんある。優しいことばかりを言うリーダーは「日本はフラット化でいい」と言っているのと同じこと。スパイキーなリーダーは「痛みはあるけど、乗り越えていこう」と言うはずです。何をしても、賛成と反対は必ず出てくる。ですから、物議を醸すような人でなければリーダーではないのです。「出る杭は打たれる」という言葉がありますね。私は「打たれることを覚悟して、どんどん出なさい」と言ってあげたい。だってね、出すぎた杭は、もう打たれなくなるんですから。

Heizo Takenaka
1951年生まれ。慶應義塾大学教授の他にパソナグループ取締役会長、アカデミーヒルズ理事長などを務める。小泉政権下で経済財政政策担当大臣などを歴任し、規制緩和と構造改革を広く訴えた。『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)をはじめ、著書も多数。近著は「日本経済こうすれば復興する!」(アスコム)。

Text=牧野隆文、本田大樹 Photograph=星 武志

*本記事の内容は11年7月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい