「それ、会社病ですよ。」半沢直樹の大ヒットから読み解く 企業が悩む、なくならない”ムラ意識” Vol.13


TBSのドラマ『半沢直樹』が大変な人気です。視聴率が30%を超えているということは、相当に幅広い層から支持されているということ。それは、ゲーム的、マンガ的なストーリー展開に加え、世代を超えた多くの人が「あるある」と共感できるところがあるからです。
 言ってみれば、“クソ・サラリーマン”をめぐる物語です。しかし、バブル期はドラマに出てくる自己保身、他責主義という内向きの行動原理が頂点を極めた時代でもありました。そして舞台となっているかつての銀行は、そうした行動原理によって形作られた、最も完成度の高い組織だった。日本的カイシャの究極の姿、といってもいい。上司におもねり、ウルトラ忠犬ハチ公になる一方、自分の身が危なくなれば、裏切り、陥れることも厭わない……。
 どうしてそんなことになったのかといえば、視野が狭いからです。半径5メートルほどの世界で生きて、そこだけにすべての知力、体力を投入する。組織は本来、何かを達成するための手段ですが、それ自体が目的化し、自分の所属する組織を存続させ、そこで出世することが、すべてに優先してしまう。
 この行動原理は、多くの企業を蝕(むしば)みました。バブル崩壊以降、会社組織はその反省から大きく変わったように見えますが、実は今も本質は変わっていません。帰属意識、相互監視、阻害の恐怖……。私はこれを、“日本的ムラ意識”と呼んでいます。ドラマの人気は、実は多くの人たちが今なお縛られているムラ意識に、エリートの宝庫の大銀行という舞台で敢然と立ち向かう“遠山の金さん”的ヒーローにある。

しかし、今やこのムラ意識が強すぎると企業は本当に立ち行かなくなりつつあります。グローバル競争時代を迎え、ムラ内の調整に手間取っている間にさっさと全滅させられてしまうからです。
 しかし難しいのは、日本的なムラ意識を完全に組織からなくしてしまえばいいのかといえば、そんなことはない、ということです。問題点が多いのは事実ですが、ムラ的なよさもあるからです。それが、日本人にとって、DNA的に居心地がいい。実際、ムラ意識を改革しようとして、失敗した会社が数多くあります。
 今、必要なのは、ムラ的なよさを理解しつつも、改革を実行できるリーダーです。実際、多くの会社が次世代トップ養成に躍起になっています。グローバル競争が激化するなか、これまでのようなムラ長的なリーダーでは、将来がないと気づいているからでしょう。
 ムラ的なよさを残しながらも会社をうまく変革できた実例は結構あります。カルロス・ゴーン社長率いる日産自動車は、その代表例だと思います。ムラの行動様式のプラス面、例えば集団性などは、日本の組織の強みです。国際競争を行ううえでは、これは逆にテコにしたほうがいい。そこまで理解してマネージができれば、ムラ意識はむしろ強みにすらなるのです。


Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は13年9月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい