【アンドレス・イニエスタ】ワインづくりを通じ、家族や故郷をひとつに

日本のサッカー界に大きな旋風を巻き起こす世界的プレイヤー、アンドレス・イニエスタ。一般誌では初めてとなる独占取材を雑誌「ゲーテ」が実現! 家族への想いやワイナリー経営について聞いた。


時代のニーズを見据えてビジネスをする

スペインのみならず世界中のサッカーファンに愛されるアンドレス・イニエスタが、昨年5月、ヴィッセル神戸に加入した。「El Ilusionista(手品師)」「El Cerebro(頭脳)」と親しみと尊敬を込めて呼ばれる名手のプレイをひと目見たいと、多くのファンがスタジアムに押し寄せる。彼が出場するゲームのチケットは即刻完売する人気ぶりだ。

撮影スタジオにアンナ夫人を伴って現れたイニエスタは、世界的なアスリートならではのオーラを放ちつつも、至って自然体。ファミリーを何より大切にする彼らしく、今回の撮影もアンナさんとともに臨みたいとリクエストがあった。サッカー以外は極力家族と過ごす彼のライフスタイルが垣間見える。淡々と撮影に臨みながらも、周囲に気を配る姿は、ジェントルな彼のプレイスタイルそのものだ。

そんなトッププレイヤーが、熱い想いと信念を持ってビジネスに取り組んでいることは、意外にも知られていない。

「サッカーから離れている時間も好きなことをしていたい。それが今年チャレンジするスニーカーブランドのプロジェクトだったり、既に始めているワイナリーの運営だったり。これから先の時代のニーズを見据えてビジネスをすることは、楽しくてワクワクするし、とても興味深い。将来、自分がどんなふうにいたいかという理想も念頭に置いています」

最も人気なのが「イニエスタ・ コラソン・ロコ・ティント」と同ブランコ各 ¥1,400(日本リカー TEL:03・5643・ 9770)。ロゼやスパークリング も揃う。取り扱いは大丸(東京、神戸)、神戸そごう、京橋ワイン(オンライン)など。

計画的な経営者の一面も見せるイニエスタが、故郷のラ・マンチャに広大な敷地を取得して、ファミリーでブドウ栽培を開始したのが1990年。20年を経て、2010年に誕生したワイナリー「ボデガ・イニエスタ」は、既に日本のファンやワイン通の間で話題になっている。

「祖父も父もワインに携わる仕事をしていました。だから僕にとってワインは幼い頃から身近で大切なものだった。ホームタウンでワイナリーを開くことは、そういう意味では家族がやってきたことの延長で、みんながひとつになるための夢の実現でもあったんです」

ワイナリーを始めたことで、地域の人たちとの関わりがより深くなった。産業が少なかった村を豊かにし、雇用を増やすこともできた。それは、自分を育ててくれた故郷への恩返しでもあるのだという。

「スペインの故郷にいる時は、毎日のようにワイナリーに行ってブドウのでき具合やワインの状態を確認します。家族や運営してくれている人たちとワインの話をすることも多い。でもそれは、スペインにいる時だけじゃない。日本にいても電話をするし、何かないかと常に気にかけてコンタクトを取るようにしています。そうでなければ、自分の想いをワインに注ぎこむことはできないよ」

ワインづくりはビジネスではあるが、それ以上に、故郷とイニエスタをつなぎ、豊かな関係を築く絆でもあるのだ。

「日本のワインを飲むこともあって、そんな時は刺激を受けるし、アイデアがひらめくこともあります。日本のワインはレベルが高いものが多いから、学ぶことがたくさんあります」

ワイン研究にも熱心なイニエスタは、休日には、アンナさんと一緒に自らのワインを味わい、そのできばえを楽しむというが、チームメイトとワインを味わう機会はあるのだろうか。

「スペインでも、神戸に来てからも、チームメイト全員にボデガ・イニエスタのワインをプレゼントしたよ。僕がつくったワインを味わってもらうことは、コミュニケーションの一端だと思っているから。時には彼らと一緒に味わうこともあります」

ルーカス・ポドルスキ選手やウェリントン選手、三田啓貴選手ともワインを楽しむ時間を共有し、親睦を深めているそうだ。

自信を持って世に送りだすボデガ・イニエスタのワインは、すべてオーガニックの認証を目指す自然派ワイン。なかでも「コラソン・ロコ(熱狂的な想い)」は、イニエスタのサインもプリントされたベストセラーだ。フルーティーですっきりした白はシーフード、深みのある赤は神戸牛など肉料理に合わせてほしいと説明する。

若い人も気軽に購入できるカジュアルな価格設定は、「故郷スペインの味を、より多くの人に味わってほしい」というイニエスタの願いがあるから。

「大切なのは、どんなシチュエーションで誰と飲むかです。皆さんにも、僕が愛情を注いだワインを、家族や友人など大切な人と幸せな時間を過ごすために飲んでほしい」

チームの勝利やチームメイトを輝かせることに尽力するイニエスタらしい優しさと愛が、ボデガ・イニエスタのワインにもたっぷり詰まっている。

イニエスタ:スーツ¥360,000、 ベスト¥99,000、シャツ¥108,000、 タイ¥18,000、チーフ¥16,000、 シューズ¥94,000(すべてジョルジオ アルマーニ)、時計は 本人私物 アンナさん:ブラウス、パンツ、パンプスすべて参考商品(すべてジョルジオ アルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン TEL:03・6274・7070)、ピアスはスタイリスト私物
Andrés Iniesta
1984年スペイン生まれ。ヴィッセル神戸のミッドフィルダー。FCバルセロナではリーグ優勝9 回など、数々のタイトルを獲得。2010年にワイナリー「ボデガ・イニエスタ」を創立。


Text=中井シノブ Photograph=岩本浩伸  Styling=久保コウヘイ Hair & Make-up=古川由起子(CALME)



イニエスタが情熱を注ぐワインとは?