【仕事術】「メンタル超人」になるための管理職のマインドセット3つの掟

「指示を出すことが苦手」。そんな「指示イップス」が増えている。新しく部下を持ったり、指示する立場になったりしたものの、「期待していたものと、全然違うものが出てくる」「途中で何も言ってこないので心配になる」「反論される、断られる」など、業務に支障を来たしかねない局面をどう打開したらいいのか? 100人規模のプロジェクトを任され、多くのビジネスパーソンを「メンタル超人」へと引き上げてきたメンタルトレーナー西井健一氏が、そのメソッドを伝授する。


「指示イップス」脱却3つの秘訣

新しく管理職になったOさん。部下のY君にほとほと困っています。期限までに仕事が上がってこない。報告もない……。「あの件どうなった?」と聞いて初めて「今こんな状況で……」と言い訳めいた理由が返ってくる。Y君の仕事が進まないため、Oさんも仕事を終えられず、上司から管理力を問われる始末。

あるいは、新たにプロジェクトリーダーを任されたA君。まだまだ経験の浅いA君をフォローすべく編成されたメンバーは個性派ぞろい。職人気質のベテランデザイナーI氏に、仕事を依頼してもことごとく反論されてしまい、A君は自信を喪失。

あなたは、このような状況に陥っていませんか?

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まず言っておきたいのは、人を動かす仕事に苦手意識を感じる人は非常に多い、ということ。あなただけではありません。また、性分だから仕方がない、と諦める必要もありません。苦手意識を感じる指示イップスの状態から脱却することは、実はあなたが考えるよりもずっと簡単です。自転車に一度乗れると、なぜ乗れなかったのか不思議に感じるように、実はコツがあるのです。「なぜできなかったのか」と思うくらい、簡単に苦手意識が払拭できます。その秘訣を3つご紹介します。これを実践すれば、驚くほど人が自然に動いてくれるようになります。

秘訣① 伝える時の態度を変える
相手が行動してくれない原因の一つは「不安」です。誰でも何か心配事があると行動が止まってしまいます。人間は不安を感じていると心と体が動かなくなる仕組みになっているのです。もし、相手が思うように動いてくれないとしたら、不安が原因かもしれません。例えば、あなたが不安そうに指示を出せば、不安が相手に伝染します。自信のなさそうな態度や、ビクビクした態度も同様です。

「本当にこの指示で大丈夫か」「間違っているのではないか」「しても無駄なんじゃないか」と感じるような仕事は、相手もできるだけ避けたいはずです。そこで一つ目のコツ「伝える時の態度を変える」です。つまり、相手に不安を与えないようにするのです。

例えば人に仕事を依頼する時に、

・声を大きくする
・相手の目を見て話す
・言葉尻を曖昧にせず言い切る

などに注意するだけで、相手に与える印象は大きく変わります。

話し手が聞き手に与える影響のうち、言葉の情報は7%にすぎず、残りの93%は言葉以外とする「メラビアンの法則」というものがあります。まさに声の大きさなどが言葉以外に当たります。一般に声が大きい人の方が声の小さい人よりも信頼されやすいのも、「自信がありそう」と勝手に判断されるからです。あなたが態度を変え、相手の不安が少なくなれば、相手も動きやすくなるのです。

最初はあなたに不安があり、簡単ではないかもしれません。堂々と振る舞うにはそれなりの覚悟がいりますし、仕事がうまくいかなかった時には自分が責任を持つという気概も必要でしょう。しかし、それだけの価値があります。態度は内面をも変えます。毅然とした振る舞いに心が後から追い付き、本当の自信になっていきます。もちろんそのような変化は相手にも伝わり、信頼へと変わっていくのです。

秘訣② して欲しいことを明確にする
人が行動できない二つ目の原因は、指示の内容が「曖昧」なことです。相手は「動かない」のではなく、「どう動いていいのか分からない」のです。「どうして指示通りにしてくれないのだろう」と、苦手意識を感じるだけ損というもの。ちゃんと伝わってないから動けないだけなのです。「話し上手世界チャンピオン」と「聞き上手世界チャンピオン」でも、会話がスタートした瞬間に誤解が生じると言われているくらいです。ではどうすればよいのでしょうか?

「誤解は必ず生まれる」という前提でいればよいのです。その上で、あなたがするべきことは二つ目の秘訣「明確に伝えるための工夫」です。もし途中で誤解が発生しても、最終的にしっかりと伝わるように工夫をする。そういう意識を持つようにしてください。そのための工夫は以下の3つです。

・話を短く簡潔に

話が長ければ長いほど、誤解は生じやすくなります。指示内容はできる限り短く簡潔にします。

・伝わっているかどうか復唱させる
指示を伝えたら、確認の意味で相手に復唱してもらいましょう。言ったことが誤解なく伝わったか確認できます。必要なら軌道修正しましょう。復唱には別の効果もあります。それは、相手の人が言葉に出すことで、頭の中が整理され行動しやすくなります。

・何度も何度も言う
私たちは「一度で分かる」ことを美徳にしがちですが、それは一度忘れましょう。例えば、子供にご飯を食べたら「ごちそうさま」と言うようにしつける時のコツは、ご飯を食べる前にいつも繰り返し言っておくことです。そしてちゃんと言えたら褒めてあげるのです。大人も同じです。して欲しいことを、タイミングを見計らって何度も伝えると効果があります。もちろん、してくれたら「ありがとう」を忘れずに伝えましょう。

秘訣③  障壁、ブレーキを取り除く
人が動いてくれない三つ目の原因は、何か「障壁」があることです。別の上司に頼まれた仕事とバッティングしてしまう、子供の体調が悪くて早く家に帰らないといけない、体調がすぐれないなど理由があるかもしれません。聞いてしまえばたった1分で解決することを、悩み続けることはありません。そこで、最後の秘訣です。相手に「心配な点ある? 」と「障壁、ブレーキを取り除く」ひと言聞く習慣をつければいいのです。

問題があるなら解決すればいいですし、あらかじめそうした問題を想定しておくだけでも不安は軽減します。こうした姿勢は、後で問題が生じた時にも相談しやすい環境をつくる効果もあります。

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人を動かす3つの裏技

ここまで人を動かすことへの苦手意識「指示イップス」から脱却する3つのコツをお話してきましたが、さらに裏技的な3つ要素を伝授しましょう。

裏技①  期限をつける
人を動かす強力な特効薬は「期限」です。人は期限がないといつまでも行動しない性質があります。先延ばしにするだけでなく、時間が経つと忘れるという性質もあります。しかし、期限を決めれば、始める動機になります。人を動かすために、期限をうまく活用することも欠かせない裏技の要素です。

裏技②  相手のタイプを見極め、言い方を変える 
「沈没しそうな豪華客船から速やかに脱出するため、乗客を海に飛び込ませるには? 」というジョークをご存知でしょうか?

アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄」
イギリス人には「紳士ならこういう時に飛び込む」
ドイツ人には「規則で飛び込むことになっています」
イタリア人には「飛び込むと女にモテるぞ」
日本人には「みんな飛び込んでいますよ」

ここにも人を動かす裏技の要素が隠されています。それは「人間には色んなタイプがいる」ということ。相手をよく見ましょう。そして、どう言えば動いてくれるかを考えて指示しましょう。

裏技③ 相手に期待する
最後に、ある意味一番大事な裏技をご紹介します。人に仕事を依頼するときは、「相手に期待しなさい」ということです。人は期待されていると感じると、期待に応えようとします。逆に「どうせダメだろう」と思っている人のためには、仕事なんてしたくないと思うはずです。

もちろん、部下が未熟な場合など失敗することもあるでしょう。しかし、長い目で見ることも必要です。大きな気持ちで子供に接する親のように相手に期待して接してください。人は感情をもつ生き物です。「この人のために頑張りたい」と思ってもらえるような管理職を目指しましょう。

いかがでしたか? 今回お伝えしたことに共通することは、「相手の気持ちに立つこと」。相手の不安を解消し、気持ちよく働ける場をつくり、気持ちよく仕事してもらえるように取り組んでいきましょう。また、ご紹介した秘訣や裏技は使うことで初めて、あなたの中にインストールされていきます。ピンときたものを、まずは一つだけでも実践してみるといいでしょう。

Kenichi Nishii
パーソナルビジネスコーチ。1973年大阪府生まれ。大阪大学大学院電子制御機械工学専攻修士課程修了。富士通株式会社に勤務後、WEBデザイナーになるため転職。人間中心の設計手法を学び、大企業のWEBサイトの設計やディレクションを多数手掛ける。現在は、これまでの経験を生かしつつ、人のコミュニケーションや能力発揮をテーマに、執筆や教育活動を精力的に行う。

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