巨人の“問題児”澤村拓一投手が最後に残した前向きなコメントの意味

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。111回目、いざ開講!

「後ろ向きなことは一切ないです。楽しみでしかない」ーーー巨人からロッテへの移籍が決まった澤村拓一投手

会社員にたとえるなら、左遷とまでいわないまでも、栄転ではないことは確かだ。シーズン中の電撃的なトレードで巨人からロッテへの移籍が決まった澤村拓一投手は、それでも前向きなコメントを発表し、ロッテでの活躍を誓った。

「後ろ向きなことは一切ないです。楽しみでしかない」

「優勝争いをしているチームで井口監督からも『優勝する戦力に』っていう言葉もいただいた。求められていくと思っているので、与えられたポジションでしっかり結果を残せるように頑張っていきたい」

問題児の印象のあった澤村投手にしては、殊勝なコメントだ。ふてくされた顔で球団に対する愚痴をこぼしてもおかしくないようなパブリックイメージすらある。

澤村投手は2010年ドラフト1位で巨人に入団すると、翌年新人王を獲得する活躍。'16年には、最多セーブのタイトルも獲得した。しかし一方で150キロを超える速球と変化球を持ち、誰もが高いポテンシャルがあると認める投手でありながら、制球難に苦しむ時期も長かった。私生活でのトラブルもあり、ここ数年はファンや球団の期待を裏切るよう投球が少なくなかった。

巨人のドラフト1位選手がトレードに出されるのは、きわめて異例だ。だが、今年7月、巨人の高田萌生投手と楽天・高梨雄平投手のトレードが成立した際、大塚球団副代表はこう語っていた。

「昔ジャイアンツはトレードを出して活躍されると困るという話になって、どっちかという飼い殺ししていたんです。監督と私は生かす道があるなら探した方がいいんじゃないかと」

とりわけ澤村に厳しいように見えた原監督は、澤村についてこうコメントした。

「私にとっても思い出深い素晴らしい選手でした。環境は変わってもステップ材料とするように。求められたことが、彼にとって素晴らしいこと。飛躍することを願います」

「同じ野球界にいるという部分においてはオレは味方だと。応援している」

おそらく、澤村のトレードも球団や監督の最後の“愛情”だったのだろう。そして澤村自身もそれを感じとったからこそ、前向きな言葉を最後にのこすことができた。あとは、彼自身がその愛情に応える活躍を新天地で見せるだけだ。

ビジネスにおいても、高いポテンシャルを持ちながら、それを活かしきれないという人間は少なくない。問題は本人にあるのか、あるいは環境にあるのか。少なくとも“飼い殺し”のような状態は、本人にとってもまわりにとってもまったくメリットはない。新しい場所で心機一転することで化ける可能性があるのなら、そうしてあげるのも愛情と期待のあらわれといえるのではないだろうか。


Text=星野三千雄