【田中 圭】「攻め続けてこそ見えてくるものがある!」

映画、ドラマ、CM、さらにはバラエティや雑誌まで、その姿を見ない日はないのではないか。田中 圭。演じる役柄は多彩で変化に富んでも、揺らがぬ本人の存在を感じさせる。そこには、攻め続けてこそ見えてくるものがある。自らを鼓舞しつつ、周囲を巻きこみ、楽しく上げる。そんな生き方、仕事との向き合い方が複雑化する時代でも軽やかに自分らしく輝き続ける。


疲れた時こそ上を見る。いい作品を作るために。

撮影スタジオのフィッティングルームから、本人の嬌声とスタッフの笑いが聞こえてくる。カメラの前に立ってもそのテンションは変わらない。

「やっぱりハイブランドの服ってパワーがあって、僕には普段着る感覚がないので、それに立ち向かうためにも気分を上げていこうと思って」と田中圭さん。

さあ、ステージの始まりだ。ジャンプを繰り返す撮影はまるでハードなフィットネスのトレーニングを行っているよう。それでも笑みを絶やさない。「疲れた時に『ああ疲れた』って思うか、『まだまだ行くぞぉ』って思うのかでだいぶ変わりますから。ネガティブになることは簡単ですけど、結果としてあまりいいことはない。下を見れば本当に切りがないし、それなら上を見ていたほうがいいなぁって。でも上を見るのは結構大変じゃないですか。そこでどれだけ自分を鼓舞できるか。たとえ体調が悪くても、気持ちひとつで乗り越えられる習性なんですよ」と笑う。

「それに疲れたという表情をしていると、やっぱり現場自体が沈むでしょ」と言葉を続ける。

「僕に限らず、全員が好きでやっている仕事であるはずで、みんなが楽しいほうがいいっていうのが大前提です。かといって、なあなあでやるということでは決してない。基本的にはやるべきことができる人たちが集まっているので、あとは気持ちよくできたほうが絶対にクオリティは上がると思うんです」

そう思うようになったのも、多くの現場でさまざまな経験を積んできたからこそ。

「すごく落ちこむ時とか自分自身も人を嫉んだり、羨ましいなと思った時期も当然あって、でもそう思っても何も解決しないんですよね。だから時間の無駄だなって思うようになって」

そんな周囲を慮る気持ちは、田中 圭という個性であると同時に、役者としてのあり方にも通じるのだろう。自身は受けの芝居を心がけ、相手のどんな感情も逃がさない。

「結局、自分だけでお芝居をしているのではなく、相手役がいて初めて成立します。極端なことを言うと、まず相手ありき。もちろん役の気持ちは自分が一番理解してあげたいと思いますが、あまりこういう芝居がしたいと決めつけません。それに自分の想定外から打ち返されるのが楽しいで。おお、こう来るんだとか。僕自身は自分の芝居がどうあるべきかってわかってなくて。でもお芝居を生業としている人間にしてみれば、ほとんどがその本人にしかできないこと。だから特別なことをやろうという意識もないし、別に人と比べもしないし、結局自分がやれることをやるしかないんです」

年に1度、舞台を続けてきたのもそんな役者としての基本に戻るという思いからだ。

「お芝居の基本は絶対的に舞台だと思っています。舞台ってすごく稽古を重ね、動きも決まってきますが、むしろそうした予定調和を取っ払い、より自然に芝居をするために長い時間を費やしているように思います。その瞬間を相手と一緒に生きるというか。それは舞台でないとなかなか実感できませんから」

だがその意識も変わってきた。『おっさんずラブ』をきっかけに、それまで舞台でしかやれないと思っていた演技が映像でもできることに開眼したからだ。

「舞台と同様、その瞬間をリアルに生きるという実感があの撮影の現場でも得られ、むしろ映像でもそれをやるべきだと考え方が変わってきました。なかなか難しいことですが、その瞬間をいつも求めています」

来年はデビュー20周年を迎え、その節目も意識するという。

「とりあえず20年続けられたことで自分自身を評価していいですね。これまで、仕事がない時以外、1回も休んだことがないのでそろそろ自分を振り返ってもいい頃かも。作品が増えることがすごく励みになり、頑張れるんですが、それでクオリティを下げてしまっては本末転倒というか、意味がない。それにとにかく休むという経験を1回してもいいんじゃないかなと思っています」

田中さんのことだ。その経験がさらに引きだしを増やすのだろう。その先に新たな目標が見えてくる。

Kei Tanaka
1984年東京都生まれ。2000年にCMデビューし、’03年ドラマ『WATER BOYS』で注目を集める。昨年主演したドラマ『おっさんずラブ』は日本中に社会現象を巻き起こし、今年も人気ドラマ『あなたの番です』で主演を務めた。自身のファッションは「基本スウェット」と笑う。「毎日ほとんど衣装で、私服より圧倒的に長いんです。それに公園でチビと走り回ったり、もし、いい服を着て抱っこして汚されたら瞬間でも気になっちゃうじゃないですか。そう思う自分が嫌だから」


Direction=島田 明 Text=柴田 充 Photograph=レスリー・キー (SIGNO)
Styling=山本隆司 Hair & Make-up=大橋 覚(VANESSA+embrasse)



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