中田英寿が『十四代』の蔵元へ! 衝撃を受けた日本酒の原点を探る

中田英寿さんと高木酒造の髙木社長は、たがいに「共感と尊敬」を持つ間柄。日本一になった酒を酌み交わしながら、日本酒づくりの面白さを語り合った。


妥協なき信念が銘酒を醸す

午前7時すぎ、山形県村山市の高木酒造を訪ねると、すでに数名のスタッフが敷地内を忙しそうに動いていた。こちらに気づくと、立ち止まって大きな声で挨拶をしてくれる。それだけで、「この蔵ではいい酒づくりをしているんだな」と確信めいた思いがこみ上げてきた。

2019年6月に発表されたSAKE COMPETITION 2019のSuper Premium部門で1位の「十四代 龍泉」は、この酒蔵で誕生した。中田英寿さんが10年前の「十四代」との出合いを振り返る。

午前7時すぎ、山形県村山市の高木酒造を訪ねると、すでに数名のスタッフが敷地内を忙しそうに動いていた。こちらに気づくと、立ち止まって大きな声で挨拶をしてくれる。それだけで、「この蔵ではいい酒づくりをしているんだな」と確信めいた思いがこみ上げてきた。

「こんなにおいしい酒があるんだと衝撃を受けたことを覚えています。すべてにおいて抜群にバランスがいい。しかもそのときに飲んだのは十四代のなかで一番安価な銘柄だったんです」

大正時代につくられた接待室で酒を飲み交わすふたり。

1615年に創業した高木酒造。この酒蔵で日本を代表する銘酒をつくっているのは、十五代目の髙木顕統(あきつな)社長だ。

「十四代を飲んで、喜び楽しんでもらうことをすごく大事にしています。でもそれよりも大切なのは、400年間続いてきた酒づくりの歴史を引き継ぎ、次の世代に伝えること。日本酒は国酒。その誇りを守っていきたいと思っています」(髙木社長)

酒づくりには、「正解もゴールもない」(髙木社長)。だからこそ日々精進し、挑戦し続ける。

「髙木さんは、よりよい酒をつくることをとことん考えている。僕は2ヵ月に1回くらいこの蔵を訪ねているんですが、来るたびに設備が変わっています。知識や理論も常にアップデートされていて、"そこまでやるのか"と思わされます」(中田さん)

SAKE COMPETITION 2019のSuper Premium部門1位の『十四代 龍泉』。敢えて1年寝かせるという挑戦が見事に実を結んだ。

例えば高木酒造は3種類の酒米を自社で開発し、地元の農家に依頼して生産している。その米は縁のある酒蔵に譲られることで、その地でもまたおいしい日本酒になっていく。受賞酒『十四代 龍泉』もそんな"そこまでやるのか"が詰まった逸品だ。新酒を敢えてマイナス8℃で1年間熟成させてから出荷。試行錯誤を繰り返し、最適な保管温度や熟成期間にたどりついたのだという。中田さんがひと口飲み、そして笑顔になる。

「きれいな香りが立ち上がってきて、そのあとフルーティな味わいがあるけれど、それがすっと喉を越えてキレていく。1年寝かせたとは思えないフレッシュさに驚きます」

伝統を守り常識に挑む。高木酒造の挑戦は、今後も中田さんをはじめ多くの日本酒ファンを喜ばせ、驚かせるのだろう。


世界一の日本酒を決める祭典 SAKE COMPETITION
全国、さらには海外からも過去最多となる1919点が出品された「SAKE COMPETITION 2019」。Super Premium、純米大吟醸、純米吟醸、純米酒、吟醸、スパークリング、海外出品酒の7 部門を審査したのは、技術指導者、有識者、蔵元からなる、予審48名、決審52名の審査員。すべてブラインドで審査が行われるため、その結果は人気や売上げにも直結するといわれている。今回紹介した「十四代 龍泉」が1位を獲得したSuper Premium部門は、720mlで小売価格が10,000円以上、1,800mlで15,000円以上の清酒が対象。ちなみに他の部門では、純米大吟醸部門「作 朝日米」(清水清三郎商店/三重県)、純米吟醸部門「飛露喜 純米吟醸」(廣木酒造本店/福島県)、純米酒部門「宝剣 純米酒 レトロラベル」(宝剣酒造/広島県)、吟醸部門「天上夢幻 大吟醸 山田錦」(中勇酒造店/宮城県)が1位に選ばれた。

高木酒造
1615年、山形県村山市にて創業。近代的な技法と伝統の技を用いて、万人に受け入れられる地酒をつくり続けている老舗の蔵元。


Text=川上康介 Photograph=たかはしじゅんいち