「それ、会社病ですよ。」”第3の矢”が放たれなければ、待つのは破滅、参院選後にむしろ追い込まれる安倍政権 Vol.10


アベノミクスで日本はムードが大きく変わりつつあります。背景にあるのは、大きなふたつの期待です。ひとつは、金融政策による資産価格上昇への期待です。金融緩和によって最も動くのは資産価格。これはまさにその通りになって、土地、株、債券のトリプル高になっています。
 そしてもうひとつが、これから実体経済がよくなっていくのではないか、きっと“3本目の矢”が放たれるだろうという期待です。TPPへの交渉参加や、産業競争力会議の提言など、きっと何かやってくれるだろうと人々は考えている。
 このふたつの期待感が時間を引っ張っているわけですが、期待感だけでいつまでも続くわけがありません。その賞味期限は、持って1年だと私は見ています。実際、ひとつ目のバブル期待には、早くも息切れの兆候が出ています。もしふたつ目の期待がそのとおりにならず、次に出てきたものが“大山鳴動ネズミ一匹”のようなことになったら、その期待は裏切られたと、今度は逆の渦が生まれます。
 これだけの財政出動と金融緩和をやってきているのですから、“ギリシャ化”の危険すらある。金利もインフレ率も跳ね上がり、円は極端に弱くなって200円くらいまで落ちてもおかしくない。円安は輸入物価を直撃し、国民生活に大変な影響を与えることは必至です。国債の暴落で国内金融機関のバランスシートは大きく傷つき、危機的状況に。文字どおり、カタストロフィーが起こりかねないのです。

そうならないために必要なことは、財政再建の道筋をきちんと示すことと、実体経済を押し上げられるようなシビアな規制改革に挑めるかどうかです。とりわけ厚い岩盤に守られている農業、医療介護、社会福祉、エネルギーなどの分野に斬り込めるかどうか。
 7月には参議院議員選挙が控えていますが、おそらく自民党は圧勝するでしょう。しかし、そうなったら、衆参両院で過半数を手に入れることになり、思い切った改革ができない理由はなくなります。選挙に勝ったあとは、規制改革や構造改革をやる以外にない状況に追いこまれるのです。やらなければ、破滅が待ち構えているのですから。
 そして今度の政権の敵は、野党ではなく与党ということになる。戦う場所が、党内に変わるのです。相手は、改革に反対する抵抗勢力。小泉改革の時と同じ構図です。しかし、今度はもうあとがありません。抵抗勢力と袂(たもと)を分かち、他の党と合流する政界再編へとつながる可能性もある。
 逆に、新興の政党にチャンスが巡ってくるとするなら、政権が中途半端な改革しかできずに、日本がカタストロフィーに陥ったあとでしょう。日本維新の会の橋下徹氏が政権を取れるとすれば、それしかない。
 安倍政権にしてみれば、やることははっきりしている。それを断行できるか。それとも自身も含めて破滅の道に突き進むのか。実は7月の参院選は、政権にその決断を迫る厳しい分水嶺なのです。


Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は13年6月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい