プロサッカー選手 川島永嗣 著書耐心力」発売記念セミナー開催【レポート】

「ゲーテ」では、 サッカーW杯3大会連続日本代表正GKの川島永嗣の最新著書『耐心力 重圧をコントロールする術がある』の出版(10月11日発売)を記念し、昨年12月26日にスペシャルセミナーを開催した。満員となる100人の聴衆が集まった中で、講師・川島永嗣が幻冬舎のセミナー会場に来場。さまざまな重圧を乗り越え、欧州で戦い続ける川島が重圧をコントロールする極意を語り尽くした。

多くの人が難しい状況でいる中で、それを乗り越えていってほしいなと思う

セミナーの2日前に拠点とするフランス・ストラスブールから帰国したばかりの川島永嗣。この日もロシアW杯でともにピッチに立ったDF槙野智章(浦和)の結婚式に出席後、そのまま幻冬舎に駆けつけるなど大忙し。午後6時半頃に控え室に到着すると、会場販売用の自著『耐心力』にサインをしながら、「自身2度目」というセミナーへの意気込みを語ってくれた。

「自分がサッカーを通して経験してきたことは一筋縄でいかなかったことが多かった。目標や夢に向かう中でうまくいかない時期の方が多かった。それは、自分だけの苦しみだけじゃなくて、他の人に繋がればいいかなと思っている。この本を読んでくれた人から、“勇気をもらいました”と言われることがありますが、自分がうれしいというより、やっぱりその人に頑張ってもらいたいなと思う。多くの人が難しい状況でいる中で、それを乗り越えていってほしいなと思っていますし、本で書かせてもらったことをさらに掘り下げて、少しでも聞いてくれた人の力になれればいいかな」

午後7時半、会場には100人を超える聴衆と関係者が集まり、まさに満員御礼。サッカーファン、ビジネスマン、家族連れなど、幅広い層の読者が集まった。聞き手を務めたのは、「耐心力」の編集を担当した雑誌「ゲーテ」編集長の二本柳陵介。万来の拍手の中で入場した川島選手はまず、所属するフランスのストラスブールで試合に出場できていない現状について「地味にベンチとかには入れるようになってきた。地味に状況を変えつつあります。毎日、手応えはある。(前所属の)メスの時もそうだったけど、信頼を得ていくためには一日一日自分の実力や、信頼を得るための行動をしていかなければならない。変わる日のために、そういう行動を見せ続けるしかないと思ってやっている。時間はかかる」と報告。今もなお「耐える」生活をしていることを明かした。

二本柳から「なんで、日本に戻って来ないのですか? なんで、そんなに頑ななんですか?」と尋ねられると、川島は「頑なではないんですけどね。ただ向こうでやっている中で自分としてはやれる感覚がある。その中で挑戦を終わらせたくない。難しさはあるけど、自分の気持ちに従って、高いところに挑戦していく方が選手として成長できると思っている」と説明した。

『耐心力』というタイトルについて

話題は『耐心力』という本のタイトルについて及んだ。二本柳からタイトル案を提示された当時について川島は「最初は耐心力⁉ と思いましたが、自分がヨーロッパに出てからいろいろ経験してきたこと、時代の中で人がどういうことを考えているかを客観的に考えてみたときに、悪くないと思った。そんなに時間はかからずに自分の中では腑に落ちた」と振り返った。二本柳が「時代に逆行しているかもしれないけど、耐えるといことはじっくり考えること。なかなか今の時代は難しいから」とタイトルの意図を説明すれば、川島も「いろんなことが便利になっているから耐えることが難しくなっている。携帯で調べればすぐにわかるし、わからないことに悩む時間すらない。でも、実際にパッと見てわかることと、経験を通してわかることは、自分の中に残るものは違う」と、便利な時代だからこそ耐える心が必要であることを力説した。

ハリルホジッチ監督について

『耐心力』の本の中でも触れている、ロシアW杯直前で解任されたハリルホジッチ日本代表前監督への思いも改めて吐露する場面もあった。「メールして、留守電も残しましたけど、いまだに返信がない……」と言うと、会場には笑いが起きたが「また会いたいですね」とひと言。「サッカーの世界は1日で監督も変わるし、結果がすべて。けど、自分をただ試合に使ってくれる人と、自分を成長させてくれる人は違いますし、(ハリルホジッチ前監督は)難しい状況にいながら一人の選手としてだけではなくて愛情をもって厳しいことを言ってくれた人だったと思います。どんな試合も見てくれていて、常に選手が満足しないようにアドバイスをくれていた」と語った。

W杯で受けた批判について

なぜ『耐心力』は「史実」としても後世に残る本なのか。それは、ロシアW杯で日本の守護神が感じた真実がありのままに記載されているからだ。いかに苦しみ、何を感じ、そしてどう耐えて、どう切り替えたのか。「キーパーは根本的にそういうポジションなんです」と川島は言う。「キーパーはひとつミスすれば、周りから批判される。でも、いいプレーをすれば一日でヒーローになる。常に隣り合わせにある。それがキーパーの人生」。セネガル戦でのミスにより批判を受けたが、ポーランド戦では切り替え、日本の16強入りに貢献。ポーランド戦前、西野監督の元へ出向き、赤裸々に話し合ったエピソードについて「ずっと監督からの信頼は感じていたけど、それを自分の中でパフォーマンスとして出せていないことが引っかかっていた。やっぱり話をしなかったら前に進めないと思った。とにかく“申し訳ないです”という素直な気持ちを伝えたかった。話して、つっかえていたものが取れた」と振り返った。

『耐心力』を編集した二本柳陵介(左)が聞き手となった。

取材中に号泣した件について

次に話題となったのは、ロシアW杯後に行った最後の『耐心力』取材中に川島が号泣した話。二本柳が「あの時はどういった涙だったのですか?」と聞くと、川島は「語りますか?(笑)。あの時は、話している時に思い出してしまったんです。W杯の最中にいろんな自分の思いがあって、それまでの思いとか、4年間苦しんできてなんでそういう思いをしなきゃいけないんだと頭の中でぐるぐる回って。自分がやってきたことがうまく出せてない自分がいて……」と説明。そんな時にふと思い出したのが「メスで試合に出れない時もスタジアムで日本の国旗を持って“俺は信じてますから”と応援にきてくれたサポーター」だったという。「自分のことしか考えていないことが悔しかった。なんで俺は自分のことを考えているんだと、思った。周りに支えてくれている人がいて今の自分がいる。ポーランド戦前はキャリアの最後になってもいいと思った。あのときはそういう気持ちだった」と明かした。

質問タイムを実施!

セミナーの最後には、質問タイムを実施。そのやり取りを少し紹介したい。

Q「小学生、中学生の頃はどんな練習をしていましたか?」
A「基本的なことをずっとやっていた。教わった事を反復するか。言われたことをどういうふうにアレンジすればいいかを考えてやっていた」

Q「セネガル戦、ミスした直後にどう切り替えたのですか?」
A「キーパーはミスと隣り合わせ。ミスしたことは1回置いておいて、次のプレーに集中する。あとで考えればいい。でもミスはしないように!」

Q「環境が変わる中で何を大事にしていました?」
A「どうアダプトしなきゃいけないと常に考えています。新しい環境に行った時は自分で順応しなければならない。でも、自分の強み、得てきたものはプラスアルファにできるので、そこは変えるつもりはない。自分の強みをどの環境でも出せるか常に持っておくようにしています」

Q「最終的にどんなキーパーになりたい?」
A「僕はどう見ても日本人GKだし、誰がなんと言っても、川島永嗣であることには変わりない。ヨーロッパでやっている中でも川島永嗣にしかやれないことをやりたいし、自分のうちから出る表現を最後まで磨き続けたい」

Q「子供がキーパーなのですが、母としてどんな言葉をかければいい?」
A「小中学校の時、親から“今日どうだった?”と聞かれるのがすごく嫌だった。子供は子供なりに考えることがあるし、それをサポートしてあげるぐらいが僕はいいのかなと思います。昔、中学時代に同じ年代のキーパーに負けてメンバーに入れなかった。その時に泣いて家に帰って、母が何も言わないで横にいてくれた。辛いときに見守っていれる存在が一番心強いのかな」

約1時間のセミナーを終え、最後には聴衆との「じゃんけん大会」を開催。川島に勝った人には、サイン入りのグローブ、スパイク、ツーショット写真撮影の権利などが与えられ、大いに盛り上がり、セミナーはお開きとなった。


『耐心力 重圧をコントロールする術がある』 
川島永嗣著幻冬舎 ¥1,400(税抜)
【目次】
第一章 ロシアW杯備忘録 -苦しんだ先につかんだ、日本サッカーの目指す道-
第二章 心を養う、18の人生訓 -1日1%成長論-
第三章 ひたすら耐え忍んだ、浪人時代
第四章 日本人、そして日本人GKという高いハードル
第五章 夢や希望を繫げていきたい


Text=ゲーテWEB編集部