FC今治・岡田武史代表からの言葉に心が揺さぶられる【GM城彰二物語④】

信頼する先輩であり、前任者でもあった藤川孝幸の死をきっかけに、2019年、城彰二は、突然北海道十勝スカイアースの統括ゼネラル・マネージャーに就任した。所属はまだ、社会人リーグ。スタジアムはもちろん、決まった練習場さえもない。スポンサーヘの営業、自治体との連係、クラブ運営など、すべてを行わなければいけない。北海道室蘭市で生まれ、中学1年まで過ごした城の目標。それは、北海道にJリーグクラブをゼロから作ること。連載「GM城彰二物語」、第4回。

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「スポンサー企業の存在も重要だけれど、地域に密着できないと難しいぞ」

岡田武史サッカー元日本代表監督からのアドバイスだ。

社会人リーグである、地域リーグはチケット代が無料のため、チケット収入での収益が望めない。

そのため、クラブ運営資金はスポンサー頼みというところが大きく、僕らの夢に力を貸してくれる企業への感謝は大きい。

しかし、今もっとも重要なのは、地元の方々の「十勝スカイアース」への認知度を高める活動だ。

この仕事を引き受けたとき、FC今治(四国リーグに所属していた2014年、岡田さんが代表に就任し、強化を図り、2017年JFL入り)の岡田さんと話した。今治で苦労されているだけに、その言葉は重く響いた。

たとえば、一時的に多くの資金を投じて、有力な選手を補強して、チームを強化し、J3へ昇格させることは可能だろう。しかし、地域に根付かないクラブには、将来はない。成績が悪くなれば、離れていくスポンサーもいるだろう。けれど、地域に密着し、地元の人たちに愛される存在になることで、成績に関係なく、クラブの存在意味が生まれる。それがクラブのブランド力という価値に繋がっていく。

今季開幕前から、ポスターを作り、お店に貼ってもらえないかと、商店街などへ出向き、お願いをしている。

「あれ、城さんですよね、どうして帯広にいるんですか?」

そんなふうに驚かれることもまだまだ少なくない。

「僕は今、十勝スカイアースというサッカーチームの統括GMをしているんですよ」

十勝スカイアースの話題をするきっかけにはなるが、本来なら、僕が帯広にいることが当然というようにならなくてはいけない。

地元企業のイベントに選手を参加させてもらったり、さまざまな形でPR活動をやらせてもらっている。イベントは試飲会といった小規模なものから、帯広大正メークインまつりといった大規模なものまでさまざまだ。帯広はゲートボール発祥の地であり、発祥の地杯全国ゲートボール大会というものがあり、そこにも参加させてもらった。小さな出会いであっても、それが将来大きくなる可能性はある。まずは知ってもらうことが大事だと、休みの日にもかかわらず、選手たちが積極的に参加してくれていることが頼もしい。

ホームゲームでは、クラブでフードトラックを用意したり、地元企業にブースを出してもらったり、試合観戦だけではない、体験や楽しみを提案したい。十勝スカイアースの試合が、地元の方にとっての「お祭り」のようになればいいと考えている。

そこで、あらためて、「LEGAL」(レガウ)というファンクラブを作ることにした。ブラジルでは相手を称えるとき、「LEGAL」と声を掛け合うが、クラブとファン、サポーターとの距離を縮め、一体感が生まれることを願って、名づけた。年会費3000円をいただき、特典としてタオルマフラーを用意した。メールマガジンという形での情報発信やファンクラブイベント、サポーターズ・ミーティングなども計画している。

同時に、子どもたちにも働きかけたいと考え、小学6年生までを対象とした「キッズ会員」も募集している。こちらは年会費1000円。キーホルダーやステッカーを特典として用意した。未来を担う子どもたちにとって、身近な存在になることを願った先行投資として考えている。

将来的に、Jリーグ参入を果たせば、子どもたちがプレーする下部組織を持たなければならない。十勝地域の子どもたちにとって、見ること、プレーすることによって、サッカーへ親近感を抱いてほしい。十勝スカイアースには数多くの地元の選手たちが戦っている。その姿が子どもたちにとっての力になればとも思う。

十勝では、ドイツのバーデン=バーデンと世界で2ヵ所にしかない「モール温泉」をはじめとした数々の観光資源があり、観光客も多い。たとえば、企業の社員旅行で十勝を訪れ、十勝スカイアースの試合観戦を楽しんでもらうといったことも実現できるかもしれない。そこでは前述したように、地元食材を使ったフードトラックや地元企業が出店する物産店のようなイベントが開催されていれば、試合も観光業としてのコンテンツになれるだろう。

今はまだ、知名度も低い十勝スカイアースだが、「ホーム試合」という場を提供することで、地元に貢献することもできると考えている。

いろいろとアイデアは浮かぶ。

しかし、なにかをやろうとすれば、お金も必要になる。予算は限られている。それをいかに配分するのか? 工夫することで予算を圧縮できる部分はないのか? 日々知恵を絞る作業が続いている。

大切なのは、長期的な視野で考えることだ。地域に受け入れてもらうには、そういう姿勢が重要になっていくだろう。

続く

Shoji Jo
1975年北海道室蘭市生まれ。元サッカー日本代表。‘98年フランスW杯メンバー。2006年、現役引退。’17年、現・北海道十勝スカイアースのスーパーバイザー、’19年、北海道十勝スカイアースの統括ゼネラル・マネージャーに就任。


Text=寺野典子 Photograph=杉田裕一


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