【中田英寿/に・ほ・ん・も・の外伝】「佐賀は地味な印象があるが、文化的には豊か」<佐賀④>

2009年から’15年の約6年半、のべ500日以上をかけて、47都道府県、2000近くの場所を訪れた中田英寿。世界に誇る日本の伝統・文化・農業・ものづくりに触れ、さまざまなものを学んだ中田が、再び旅に出た。

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100万人以上が訪れる「有田陶器市」

意外に思う人もいるかもしれないが、中田英寿は祭りが好きだ。旅のスケジュールに地域の祭りが重なると、必ずと行っていいくらい足を運ぶ。佐賀を旅したゴールデンウィーク、佐賀では全国でも最大規模の陶器市であり4/19〜5/5の開催期間中に100万人以上が訪れるといわれる「有田陶器市」が開催されていた。

「100万人って本当かな? 歩くのも大変らしいよ」

そんなふうに語る中田だが、その表情はとても楽しそうだ。クルマで有田市へ向かうが広範囲にわたって交通規制が行われるため、かなり大回りに迂回しなければならない。狭い山道を抜けてようやくたどり着いたのは、地元の陶芸家・庄村久喜さんのアトリエ。中田とは展覧会などを通じて旧知の仲だ。

「今日は少し落ち着いてるほうかもしれません。早速行ってみましょうか」

街へ繰り出すと、両側の店舗に磁器、陶器がずらり。そしてそれを楽しそうに見て歩く家族連れやカップル。普段より価格も安いということで、カートを持って買い物をする人の姿も見える。有田焼だけではない。伊万里焼、鍋島焼、波佐見焼、唐津焼……地元以外の焼き物も多数並んでいる。佐賀の人にとって、焼き物は日常なのだ。子どものころからこんな風景を見ていたら、自然と興味を持つようになるだろう。

「これは地元の土を使っているんですか?」

「この模様は有田焼? 伊万里焼?」

気になった店に立ち寄り、焼き物トークを繰り広げる中田。焼きものと祭り、好きなものが2つあるわけだから、密かにテンションが上っているのかもしれない。

この旅では、秘窯の里といわれる大川内山や唐津焼の窯元なども訪ねた。丘陵地に窯元がならぶ大川内山は散策するのにちょうどいい街。唐津焼の隆太窯は作陶の過程を見学できるだけでなく、販売も行うギャラリーもあり、ゆったりとした時間を過ごすことができる。

「陶器が、磁器が、その歴史がとか、難しく考える必要はないと思います。たとえば飯茶碗が気に入ったものになれば、それだけで毎日が楽しくなるじゃないですか。日常を豊かにしてくれるのが文化。文化は生活のなかにあるからこそ意味があるんだと思います。佐賀は地味だという印象がありますが、文化的にすごく豊か。生活に文化が溶け込んだ場所だとあらためて感じました」

もちろん佐賀の焼き物の発展には、今回のテーマである茶も大きく関わっている。その地を巡り、知識と経験が増えれば、毎日が豊かになる。中田英寿と旅をしていると、常にそんな発見と出合えるのがうれしい。

佐賀⑤に続く

「に・ほ・ん・も・の」とは
2009年に沖縄をスタートし、2016年に北海道でゴールするまで6年半、延べ500日以上、走行距離は20万km近くに及んだ日本文化再発見プロジェクト。"にほん"の"ほんもの"を多くの人に知ってもらうきっかけをつくり、新たな価値を見出すことにより、文化の継承・発展を促すことを目的とする。中田英寿が出会った日本の文化・伝統・農業・ものづくりはウェブサイトに記録。現在は英語化され、世界にも発信されている。2018年には書籍化。この本も英語、中国語、タイ語などに翻訳される予定だ。
https://nihonmono.jp/


Composition=川上康介 Photograph=淺田 創



中田英寿
中田英寿
1977年生まれ。日本、ヨーロッパでサッカー選手として活躍。W杯は3大会続出場。2006年に現役引退後は、国内外の旅を続ける。2016年、日本文化のPRを手がける「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」を設立。
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