【草野満代】人と人の縁を紡ぐ古きよきサロン「中川ワイン会」とは?

ワインに魅せられた者たちには、 ある種の共通する熱量がある。 彼らにとって、ワインとはいかなる存在なのか? カリフォルニアワインに特化した輸入商社をいち早く興した中川一三さんは、ワイン界の重鎮中の重鎮。その中川さんをワインの師匠と仰ぐのは、フリーアナウンサー・草野満代さん。ワインが紡いだ"おいしい関係"のふたりに話を聞いた。


肩書きも地位も関係なく、皆が等しく着席し味わう伝説のワイン会

中川ワインオーナー、中川一三さんの開催するワイン会はまさにサロンである。プライベートセラーに続く奥のダイニングルームへ足を踏み入れられるのは、限られた者だけ。肩書きも地位も関係なく、皆が等しく着席し、現地でも入手困難なカリフォルニアワインをじっくり味わう。フリーアナウンサーの草野満代さんは、中川ワイン会に招かれる常連のひとり。30代から中川さんの元で数々の希少ワインを堪能してきた。

「中川さんのワイン会では、カリフォルニア産ならではの価値を知っている人たちと一緒に飲んで盛り上がります。幻のワインと出合えた時の共有感は、本当にすごいんです!」

「いろんな人と会って話をするのが大好きでね」と話す中川さんの元には、ワイン会以外の日でも訪問者が絶えない。先日は世界屈指の指揮者ワレリー・ゲルギエフがしこたまワインを飲んで帰っていったのだとか。「彼は何度か来てますねぇ」と中川さんは事もなげに言う。

白洲次 郎はじめ、錚そう々そうたる顔ぶれが 並ぶ芳名帳。

ドイツ、ブルゴーニュと順々にハマった中川さんは、世界の一流ワインをひととおり飲み尽くしたうえで、カリフォルニアに心を定めた。

「何億という金を注ぎこんで畑を改良し、研究で判明した適量の水を与えてブドウを育てることができるのがカリフォルニア。もはや、ワイン法に縛られたヨーロッパは追いつけないですよ」

一度実力が認められたワインは、"正当な高価格"へと一気に値が上がるのがカリフォルニア流。例えば、カルトワインとして名を馳せるハーラン・エステートは、ラスベガスのホテルが「顧客へのおもてなしに」と、ワイナリーから直接大量に買い上げるため市場に出回る数が僅かとなり、「街のレストランで飲めば軽く50万円は超える」と中川さん。とはいえ、こういった価格高騰は一過性の現象ではない。

「私が普段飲むのは3000円程度のものですが、どの価格帯でも完成度が高い」と、草野さんはカリフォルニアワイン全体の安定した品質を強調する。

「草野さんは 娘みたいなもんだね」と中川さん。ワインを介した心地よい師弟関係であることがうかがえる。ダナ、ハーラン、 アリルなど、この日開けたワ インは5 本以上。

ふたりでワイン談義をする間にも、中川さんはコルクの栓を抜き続ける。その豪快さについつい笑ってしまう草野さん。

「皆、ここに来ると心を許し、ピリピリした空気がふわりと溶ける。ここは、社会的地位のある方々もプライベートで集うことができる、いわゆるサロン空間なんです。こういったサロン文化は、後の時代にもぜひ伝えていただきたいですね」


中川さんセレクトのワイン

■ハーラン・エステート レッド・ワイン 1994(右)
20万本生産できるブドウを収穫しながら、上質なブドウを選りすぐり1 万5000本のみリリース。そのストイックさは見事。"ツウ"に振る舞う1本として。約¥149,000 ※写真は2009

■コルギン ナンバー・ナイン エステート レッド・ワイン2014(左)
最近、中川さんが注目しているのが、カルトワインの最高峰であるコルギン。2017年慈善オークションではナパ・ツアーつきで大容量ボトルのセットが出品、2 億円以上の値に。約¥82,000(参考上代)※写真は2008


草野さんセレクトのワイン

■ハーラン・エステート レッド・ワイン 1998(右)
人生で最も印象深い1本として選んだのは、中川ワイン会にて、初めて口にしたカリフォルニア産。味わいの美しさに驚き、「孤高のワイン」との印象を抱いた。約¥83,000 ※写真は2009

■ナパのオークションで競り落としたワイン(左)
″ツウ″に振る舞う1本は、毎年入手している「プレミア・ナパ・ヴァレー」で競り落とされるワイン。オークション用の独自ラベルを見て驚愕する人も。約¥10,000(年によって変わる)

Ichizo Nakagawa
1937年東京都生まれ。木材商の息子に生まれ、学生時代に諸外国を周遊しワインと出合う。’85年、日本での知名度がまだ低かったカリフォルニアワインに特化した輸入商社をいち早く興す。
Mitsuyo Kusano
1967年岐阜県生まれ。’89年にNHK入局、ニュースやスポーツ番組のキャスターを中心に活躍し、『紅白歌合戦』総合司会も務める。’97年よりフリーランス。茶道仲間を介して中川さんと出会う。


Text=山本真紀 Photograph=滝川一真

※ワインの価格は編集部調べ。「Cellar Watch」( 1 ドル=約¥110[2018年12月30日時点])と「wine-searcher」、ワイン輸入元の価格を参考に算出しています。