動画クリエイターを束ねて快進撃! "かくれんぼ"マインドで仕事に挑む【UUUM鎌田和樹】

7000以上のYouTubeチャンネルのマネジメント・サポートを行い、急激な成長を続けるUUUM。新時代の企業を率いる鎌田和樹氏の「人」と「好きなこと」を大事にする仕事術とは。


独立するまでの20代は仕事しかしていなかった

ネットがテレビに取って代わる時代が来る。10年以上前から言われ続けてきた言葉だが、ビジネスの世界ではその中核となる可能性を秘めた企業が登場している。それが、鎌田和樹氏が率いるUUUMだ。 

YouTuberのマネジメント事業などを行うUUUMは、鎌田氏がYouTuber・HIKAKIN氏との出会いを機に2013年6月に設立。わずか4年後の’17年8月には東証マザーズに上場し、今年1月に発表した第2四半期決算は前年同期比184%の増収だった。収益の中心を占めるのは、YouTube上の動画再生回数に応じて発生する広告収入だ。

UUUMがサポートするYouTubeチャンネルは7000以上で、彼らが投稿する動画の’18年8月の月間再生回数は約40億回を超えた。YouTubeのチャンネル登録者数では、トップ10のうち8つを所属クリエイターが占めるなど、この分野ではひとり勝ちの状況が続いている。

そんな動画クリエイター界の先進企業を率いる鎌田氏の経歴は意外なものだ。大学を中退し、通信系大手上場企業に就職したのは19歳の時。当初の仕事は総務で、「ネットの知識はおろかタイピングも満足にできず、小さな『ぃ』の打ち方も知らなかった(笑)。仕事は契約書の入力業務から始まり、20歳頃からオフィスや社宅の賃貸契約業務を任されました。物件探しで全国を日帰りで飛び回り、何かに追われるように働き続けていました」

その後はソフトバンクショップの出店担当となり、単月100店舗の出店も達成。ショップ運営、アライアンスなどさまざまな経験を積み、’10年には最年少の執行役員にもなった。

「当時は本当に仕事だけをしていて、20代前半の頃の社会での流行をまったく知らないんです。それから子会社の社長になり、その仕事が落ち着いた時に『この先、会社にいて何ができるだろう』と初めて考えて。自分の将来を考える時間もなかった」

そんな鎌田氏だったが、親交のあった孫泰蔵氏からの助言もあり、独立を決意。新しいビジネスを模索したものの、「1年はニートの期間もあった」という。

「新しいネットのサービスも考えましたが、僕はエンジニアではないのでコードは書けない。そのまま職業になるスキルは何もないし、白紙状態で『自由に何をしてもいい』と言われても、自分では何も作れないんです」

そんな時期に再会したのが、前職時代に親交のあったHIKAKIN氏だった。

「彼は以前からヒューマンビートボックスの動画で有名でしたが、久々に再会したら『YouTuberとして生活している』と言っていて。正直、怪しいなと(笑)。僕はずっとB to Bのビジネスで生きてきたので、ユーザーがコンテンツを作り、そこから広告費を得るビジネスモデルは想像してなかった。当時はネットを通じてビジネスのあり方が大きく変わる時期でした」

鎌田氏は過去の取材でも「新しいものって、総じて『うさん臭い』と扱われる」と話すとおり、そこにビジネスのチャンスを見いだした。自分のスキルも活かせる仕事だとも感じたという。

「YouTuberは仕事を依頼された企業との折衝や契約で苦労していることがわかりました。そのサポートをするうえで、僕の前職の経験は役に立つものが多かったんです。問題解決能力とそれに関わるコミュニケーション能力は、僕のスキルと言えるものでしたし、僕の20代の経験はすべてUUUM起業のためにあったのかもしれません」

社長室は一面ガラス張り。会議もできる広いテーブルにノートパソコンとスマートフォン2台を置いて仕事をする。「スマホのうち1台はゲーム用です(笑)」。

ゲーム、マンガが好きでビジネス書は読まない

なおUUUMに所属する人気YouTuberは、所属前から有名だった人も多い。そのマネジメント事業は「誰にでもできたもの」にも見えるが、鎌田氏がそのトップランナーとなったのは、自身がYouTuberと近い感性を持っていたからだ。

「HIKAKINの動画はとにかく面白くて、いくらでも見ていられました。所属してほしいYouTuberには、事前に何時間も動画を見てから会いに行きましたが、それも楽しかったから見ただけだった。結果として僕と感覚が合う人が多く所属してくれるようになりました」

鎌田氏が好きなものはマンガとゲーム。今もはじめしゃちょーと会えば、スマホゲームの話で盛り上がり、多忙な仕事の合間を縫って『星のドラゴンクエスト』のレベル上げにも勤しむ。

Kindleの5200冊を超える蔵書はほぼすべてマンガで、「ビジネス書も新聞も読まないんです」と打ち明ける。UUUMに所属する東海オンエアの虫眼鏡氏、としみつ氏のふたりは、そんな鎌田氏の人柄をこう話す。

「初対面の時、スーツのメンバーに『何でそんなにカタい服着てるの(笑)!』と言っていたのを覚えています。いい意味で社長らしくないので、僕らも緊張せずに話せます」(としみつ氏)

「僕らは感性が若いというか、悪く言えばまだ子供。鎌田さんはそんな僕らの感覚も、やりたいことも理解してくれるので、社会の大人と僕らの距離を縮めてくれる存在です」(虫眼鏡氏)

驚きや笑いを提供するYouTuberのヤンチャで自由な動画は、若年層を中心に絶大な支持を得ているが、UUUMの企業理念は「セカイにコドモゴコロを」。鎌田氏は子供が「楽しい!」と思うものを今も本気で楽しみ、ビジネスに転換する。

「小学生の頃の『かくれんぼをしているだけで楽しかった』みたいな経験を続け、常に笑っていられる会社でいたいですね。だから好きなこと以外はいっさいやりたくありません(笑)」

本音で話してくれれば何時間でも付き合う

好きな仕事だからこそ向き合う姿勢も真剣そのものだ。睡眠時間は4〜5時間程度で、6時半には起きて会社に向かう。

「会社は10 時始業ですが、その時間になればメールや電話も増えるし、打ち合わせも来客もある。10時前にどれだけ仕事ができるかが勝負なんです」

日中の予定はビッシリ埋まるが、「365日、誰かと食事をしている」というほど人と会うことに時間を使い、特に所属クリエイターとの時間は大切にする。地方在住のクリエイターの元に自ら出向くことも多く、悩み相談では解決策を敢えて言わず、じっくり話を聞くこともある。

「本人が納得しなければ解決しても意味がないし、成長もしない。人に話すだけで悩みが解決することもあるし、本音で語ってくれれば何時間でも聞きます」

鎌田氏はUUUMを「世界で一番個人をサポートする会社でありたい」と話しており、その姿勢はYouTuberからも信頼されている。メイクアップ動画のパイオニアである佐々木あさひ氏は鎌田氏を「絶対に夢をかなえてくれる人」と話す。

「私も活動のなかで迷った時や辛い時、鎌田さんは必ず寄り添ってくれる人。ひとりじゃ解決できない問題は一緒に考えてくれて、『新しい道はこっちじゃない?』と提案もしてくれます」

昨年、「UUUMGOLF」というゴルフの動画チャンネルを新設。古閑美保氏のレッスン動画などが広く拡散され、YouTubeになじみのなかった大人にも視聴者が増えている。ゴルフも鎌田氏の好きなことのひとつで、「かしこまった食事の席よりお互いの人柄がわかるし、ビジネス上の人脈を広げるうえでも役立つ」と話す。また、インスタグラマーと広告主のマッチングを行う企業を吸収し、新しいフィールドでも事業を拡大し続ける。

「UUUMは僕らのマネジメント会社ではありますが、YouTuberに頼りきりな会社ではない。会社として新しい試みをしているし、『俺らがこの会社を支えている』みたいな気持ちには一度もなったことがないんですよ」(前出・虫眼鏡氏)

鎌田氏の座右の銘は「仕事で人は死なない」。今後もリスクを恐れず挑戦を続けていく。「仕事が辛かった瞬間は何度もありましたが、『どんな時も絶対的な解決策は必ずある』と僕は思っています。あと、好きなことなら何度失敗しても継続できる。成功する秘訣は成功するまでやり続けることです」

Kazuki Kamada
1983年東京都生まれ。19歳で大手通信会社入社。多岐にわたる分野で実績をあげ、2011年よりイー・モバイル一次代理店の責任者を務める。その後、HIKAKINとの出会いを経て、2013年、UUUMを立ち上げる。


Text=古澤誠一郎 Photograph=鈴木規仁


今年6月から、ゲーテWEBにて、UUUM鎌田和樹社長のビジネス対談連載がスタート。乞うご期待!