"理想の大人"と本音トーク! 真心ブラザーズ ~野村雅夫のラジオな日々vol.13

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、来年で結成30周年を迎える真心ブラザーズのおふたり!


内なる心の声

肩に無駄な力が入っていない。キャリアは長いのにおごっていない。真心ブラザーズは僕にとって「なりたい大人」のイメージだ。4年ほど前に僕からのラブコールもあって番組に来ていただいて以来、おふたりがこれまたコンスタントにアルバムを作っているので、定期的にお会いできているのが嬉しいところ。今回は『INNER VOICE』というアルバムの発売日当日9月5日にお越しいただけるということで、作品についてじっくりとうかがおうとは思っていたものの、思いもかけない方向に脱線。それはそれで、とことん楽しめたのでありました。

桜井 はい、真心ブラザーズの桜井秀俊です。

YO はい、YO-KINGです。よろしくお願いします。

桜井 何やら、これ、番組が帯になって…

YO 出世?

桜井 雅夫さん、出世街道まっしぐら?

雅夫 出世とは特に思ってないですけど…

YO ついていこう、ついていこう!

雅夫 ハハハ

桜井 アミーチアミーチ(友達)

YO ついていこうぜ!

雅夫 出世うんぬんは別として、一緒に歩んでいただきたいなという思いです。

桜井 謙虚な姿勢だ

雅夫 真心のおふたりは、この夏はどう過ごしていましたか? 9月5日にアルバム『INNER VOICE』が発売になったわけですが、結構前に録り終わっていましたよね?

YO 夏前にはね、終わってましたよ。

雅夫 じゃあ、夏はのんびりした感じで?

YO 夏はもう、ずっと漫画読んでましたよ。

桜井・雅夫 ハハハ

YO 刃牙(バキ)も全部読んだし

桜井 このクソ暑かった夏を漫画でやり過ごしたと…

YO 『カムイ伝』も読んじゃったし…

雅夫 『カムイ伝』読んじゃいましたか。なぜ急に今?

YO ハハハ

雅夫 何を思い出したんですか?

YO その前は『あしたのジョー』を読んでたので、やっぱりね、名作ってものをもう一回読んでみようと。ジョーもカムイ伝も良かったですよ。

雅夫 それぞれ、かなり巻数もありますから…

YO そこそこあるね。

雅夫 名作を振り返るって言ったって、時間が無ければできませんからね。夏にピッタリだと。

YO ピッタリだね。時間はたっぷりあるから。

雅夫 ハハハ! 桜井さんは横で苦笑いしてますけど

桜井 すごいなぁ

雅夫 その桜井さんは、夏はどうだったんですか?

桜井 わりと時間があったので…

雅夫 フフ

桜井 外に出て、元気に遊んでたら、「桜井、日サロに行ったの?」と聞かれるくらい、真っ黒になりました。

YO 日サロ説だよ。

雅夫 確かに、かなり…

YO 日サロが大好きなんだよ。

雅夫 YO-KINGさんは、まったくと言っていいほど、焼けてないですよ。

YO いや、比較するとあれだけど、僕はこれでも焼けてる方なんです。もともと色白なんで。

雅夫 ですかね〜? その肌を見てると、余計に、よっぽどカムイ伝だったんだなって思っちゃいますけど。

YO まぁ、まぁ、まぁ。白土(しらと)の夏、三平の夏でしたね。

雅夫 若いリスナーは、後はグーグルで何とかよろしく。ただ、漫画を読んだりしながらも、YO-KINGさんは、寺岡呼人さんがソロ活動25周年を記念して組んだ新バンド「カーリングシトーンズ」に参加されました。勝手知ったるメンバーが集ってますね。おふたりの他に、奥田民生さん、斉藤和義さん、浜崎貴司さん、トータス松本さん、合計6名です。9月23日(日)にはZepp東京でデビューライブがあるそうで。

YO そう、デビューライブですよ。デビューライブ以外の予定はないんですけどね。

雅夫 でしょうね。

YO ハハハ

雅夫 一方、桜井さんは、ウルフルズが大阪万博公園で開催する恒例の野外ワンマンライブ「ヤッサ」で…

桜井 はいはい、ギタープレイヤーの代打を務めさせていただきます。

YO マジで?

雅夫 YO-KINGさん、見どころは?

YO トータスのお尻でしょうね。

雅夫 ハハハ! ちょっと待ってくださいよ…

桜井 それはいつものことでしょ。今回に限らず。

雅夫 YO-KINGさんの盟友、相棒が出るわけですから、「ウルフルズを観に行くのは当然だけど、せっかくならうちの桜井を」って言うもんだと思ったら! そこはトータスさんなんだ。しかもお尻って…

YO トータスさんのお尻はすばらしいですから。

桜井 せっかくだから、観に来なよって言ったんだけどさ。「俺は東京にいて、桜井のチューニングが狂うようにってフォースを送り続ける」なんてことばっかり言うんだよ。

YO そう、それまでにフォースを会得して。

雅夫 今月の課題はそこってことですかね?

YO 物もちょっとは動くようになってきたんで。

3人 フフフ

雅夫 では、そう遠からず会得できるんじゃないかと。

YO そうですね。3弦、4弦あたりを、クイクイっと…

桜井 怖い怖い怖い…

雅夫 では、チューニングがどうなるのかってところを、ヤッサに行かれる方は裏の楽しみとして覚えておいていただければ。やたら桜井さんが「ちょっと待って」って言うかもしれないから。

YO 進行を妨げる、妨げる。

桜井 桜井の3・4弦が甘いぞって。

雅夫 息もピッタリなのかどうなのかよくわかりませんが、真心のおふたりは来年で結成30周年でございますよ。で、リリースされた16枚目のアルバムのタイトルは『INNER VOICE』です。何のSFのタイトルかと思いましたけどね。それこそ、フォース的な感じで「聞こえてくる」みたいな。ま、「内なる心の声」ということになりますが、今日はですね、FM802にも縁のたいそう深いおふたりに、大阪に対する「内なる心の声」を思い切ってぶつけていただこうという企画をご用意しました。良いことも、そうでないことも、この機会にぶちまけることで、すっきりして来年の30周年に向けて進んでいただこうという考えです。

YO なるほど。

雅夫 ここからは本音でいきましょう。

YO 本音トークか

雅夫 内なる声がそのまま出ちゃったという感じでお願いします。何度となくおふたりが訪れている大阪ですが、ぶっちゃけどうなんですか。好きなんですか?

YO・桜井 大好きですよ。

雅夫 では、イヤなところをあえてでもいいですから、挙げてくださいよ。

YO あえて言うなら、802でトイレに行って帰ってきた時に、入り口のドアがロックされて通行止めになってるのがイヤだな。

雅夫 ああああ、あれはね、僕もね、かねてより思っておりました。

YO あれ、シュッと入れたらすごい楽だよね?

雅夫 リスナーにはわからないことですけど、802はお手洗いがビル共用のものなんで、受付よりも外にあるんです。だから、一旦トイレに出ると、戻る時にはオートロックになっていて、しかも僕なんてピッてするパスを忘れて出ちゃうから…

YO 俺もそう! そうなんだよ! 俺も忘れる。でね、あれ酷いのが、うちの事務所も同じ仕組みでさ、パスがないとトイレに行けないんですよ。

雅夫 あらら。

YO でね、そのパスをくれないの。

雅夫 なんでなんですか?

YO なんでなんだろうね。タレントを信用してないんでしょ。

桜井 事務所が入ってるビルまで来たら、マネージャーに電話して「開けて」って言ってるから。

YO 30周年ですよ、僕たち!

雅夫 ハハハ!

YO 30周年なのに入れすらしないんだから! おかしいでしょ、それ!

雅夫 心の声が出てますね。INNER VOICEが。では、桜井さんの心の声をうかがいましょうか。

桜井 大阪に来て、新大阪駅から移動する時にいつも、皆さんの車の運転が豪快すぎて。

YO 怖い?

桜井 自分で運転するのは、ちょっと怖くてできねえなって。

YO なんか、右折をグニョーって行くよね。

雅夫 あたたた…

YO 行列を無視して、直進レーンからグニュって右折入ったりするじゃん。

雅夫 良くないですよね… 僕、実は免許はかつて大阪で取ったんですけど、本当に大変でして…

YO だろうね〜

雅夫 教習所のおじさんが言ったんですよ。「大丈夫や。免許を取るのは大変やけど、ここで取れたら、世界中どこでも運転できるから」

桜井・YO ハハハ!

桜井 認めとる。

YO すごいね~

雅夫 なんて話をしていたら、僕野村雅夫の内なる声もフツフツと…

桜井 なんでしょう? 聞きたいよ。

雅夫 でも、大阪に対しては僕はいつも言ってるので、今日は真心のおふたりに内なる声をぶつけていいですか?

YO ちょっと怖い〜 やめてやめて。

雅夫 1日、何時間くらい働いてるんだろう?

YO 僕らが? えっとね、365日に均していくと…

雅夫 そうですね、日によってかなり違いがあるだろうから。

YO 均すと、1日ね………      45分くらいじゃない?

雅夫 ハハハ!

桜井 フムフム

YO マジで。

桜井 働いてるっていう実感は無いんだよ。

雅夫 ほうほう。

YO たとえば、移動をどう捉えるか。まぁ、移動は遊びだよね。移動は仕事じゃないよ。

雅夫 桜井さんはどうですか?

桜井 これが労働感は無いんですよ。

雅夫 あ〜、そこだ!

桜井 仕事はしてるよ? してるんだけど、遊ぶこととか、映画観るのもさ、遊んでるんだけど仕事っていう感じもするし。

雅夫 それをね、僕はある種のフリにしたかったんですよ。と、ここで、改めて、アルバム『INNER VOICE』の発売、おめでとうございます!

YO・桜井 ありがとうございます。

雅夫 昨年の9月に『FLOW ON THE CLOUD』をリリースされて、よく何年ぶり何枚目とか言ったりしますけど、おふたりはここに来て、期間が…

YO 短い。

雅夫 そうなんです。僕がおふたりにインタビューさせてもらうようになったのは4年ほど前からで、ちょうど25周年で自前のレーベルDo Thing Recordingsを設立されたっていうタイミングでした。これはちょっと、出しすぎじゃないですか?

YO ハハハ!

雅夫 頻度が高いんですよ。大御所らしからぬ感じがします。

YO 趣味だからね。

雅夫 そこなんですよ。一応ミュージシャンとしては、労働ですよ。音楽を作るのは。客観的にはね。曲を作って、レコーディングして、リリースするということは。でも、おふたりを見ていると…

桜井 労働じゃないよね〜

雅夫 ほら、『カムイ伝』も読んでるし。

YO 『カムイ伝』読んじゃってるしね。

雅夫 労働の感じが薄いんですよね。

YO まだ出せるよ。出せって言われたら。

雅夫 何がですか?

YO 年に2枚くらいわ。

雅夫 資料に目を通していると、最近は曲もスタジオに入ってそこでどんどん組み上げていって、もう一発撮りだと。

桜井 そうです。

雅夫 効率はいいんだけれども、そんなことが本当にできるのかと。

YO できるできる。

桜井 未発表のテイクもいっぱいあるから。もう棚がパンパンですよ。

YO たとえば、明日からスタジオに入って、1年前に出した『FLOW ON THE CLOUD』をもう一回録り直して、出してもいいよね。

桜井・雅夫 ハハハ!

桜井 まったくの焼き直し?

YO いや、ジャズってさ、同じ曲を何度もやるじゃない。

雅夫 なるほど。

YO マイルスとか聞いてるとさ。ああいうのをロックってなんでやらないんだろうって思うわけ。20年後の『サマーヌード』とかさ。それがアルバム単位であっても面白いじゃない。

雅夫 そうですね。いわゆるセルフカバーっていう企画をやるとしたら、だいたいアレンジを変えて、代表曲を…

YO ベスト的なね。

雅夫 そうじゃなくて、丸ごとだ。

YO そう。丸ごとやっちゃう。それをさ、3日くらいでやっちゃうわけ。あとは、お金をかけないで、欲しい人だけ買えるっていうシステムでいいんじゃない?

雅夫 確かに。でも、これがもし、つい先日会ったような人とレコーディングするんだったら、そう上手くはいかないわけですよ。

YO その通り。そういうことなんですよ。さすが!

雅夫 レコーディング・メンバーが気心知れてるから。

YO ノムさん、さすが。

雅夫 伊藤大地、岡部晴彦、奥野真哉。それぞれにご自身たちでもご活躍の方でございます。

YO 名人です。

雅夫 名人芸は、そんなに時間をかけない。

YO 名人が集まると、本当にシンプルですぐできちゃうのね。

雅夫 いい会議は早く終わる。

桜井 まさに!

雅夫 だらだらやっても、しょうがない。

YO そう。しょぼい会議は時間泥棒。

雅夫 ハハハ! これを僕はね、今この瞬間だけ、802の館内放送だと思って喋りましたからね。

YO なんか大丈夫? 帯が無くなっちゃうんじゃないの?

桜井 出る杭は打たれちゃうよ〜

YO 俺ちょっと離れようっと。

雅夫 いやいやいや。そこは共に歩んでいただかないと。

YO 共に? マジかよ〜

雅夫 そこへいくと、うちの番組の会議は早いですよ。週に一回あるんですけど、30分以内に終わりますから。

YO 絶対そんなもんですよ。

雅夫 そう。確認だけ。アイデアはね、その場でいくら考えたって出ないものは出ない。

YO 出ないよね。

雅夫 それこそ、インプットしとかないと。そこで、おふたりのような時間の使い方。直接は関係ないようなことでも、なんかこうっていう。

YO わかります。すごいわかります。あと、お喋りするんだったら、色んな人とどんだけプライベートで会ってるか。

雅夫 ほんとだ。会議室でではなく。

YO 違う。だからスナック行って、色んなテーブルのバランスを考えながら歌わないとダメじゃないですか。そういう社会的なコミュニケーションをどれだけしてるかが、こういう場で出ますからね。

雅夫 気がつけば、ここまでまったく曲の具体的な話はませんね。

桜井 一切してないね(笑)

YO 大丈夫、大丈夫。

雅夫 真心のおふたりの曲はあんまり説明すると野暮ったくなるっていうところもあるんですが…

YO そうそうそう。

雅夫 まずは『メロディー』っていう曲があって、おふたり共にソングライターですから、交互ぐらいのバランスでそれぞれの曲が入ってアルバムが構成されてます。やっぱりYO-KINGさんの作品には、いわゆる良いことだけじゃない、世間的な常識だけじゃない教訓みたいなところが今回も奮ってました。

YO 奮ってます。

雅夫 桜井さんの『Z』。この車ソングにはしびれました。実は僕、えらいポンコツの車に乗ってるもので。

桜井 そうですか!

雅夫 僕は桜井さんのように昭和のセダンに乗ってるわけじゃないですけど。いつか目の覚めるような高級車に乗りたいなと思いながら、やっぱり今のが好きだったりして。

YO なるほど。

雅夫 おふたりがね、いわゆるラブソングだけじゃなくて、普通は若手のミュージシャンが曲にしないような車ソングを書いちゃう感じ?

YO そうだね。

雅夫 最高でございました。

桜井 ありがとうございます。

雅夫 これからおふたりはツアーに入っていくわけですが、それこそさっきの話じゃないですが、ツアーになると曲がどんどん変化していくぞってことですよね?

YO そうじゃないですか、きっと。

雅夫 もう『メロディー』も何分になるかわかんないですよ。

YO そういうことなんですよ。まさに。

雅夫 もともと6分くらいですよね。それがもしかしたら10分くらいになるかもしれないし。

桜井 そう言えば、去年の『FLOW ON THE CLOUD』の『その分だけ死に近づいた』って曲が、特にツアーでものすごい成長したような感じがするんです。

雅夫 それはアレンジもだんだんこなれていくってことですか?

桜井 そんなに変化させたってわけじゃないんだけど、曲の重量が何倍かに上がった感じがして。それを考えると、さっきYO-KINGさんが言ったように、それを普通にやっちゃうってのも確かに面白いなと。

YO 欲しい人だけ買って聴くっていうね。パッと録れちゃうから。

雅夫 まずはCDを手にしていただいて。

YO そうそう。元を聴いていただいて。

雅夫 ライブツアーには「HOLD BACK THE TEARS」というタイトルが付いておりまして、全19都市21公演なんですが、同時に弾き語りツアー「続・サシ食いねぇ!」もございます。こちらは対バンならぬ、タイマンライブです(笑) さらには、イベントにも色々出られます。そして、9月29日(土)に大阪・万博公園もみじ川芝生広場で行われる「OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る! ヤッサ2018 ガッチューOSAKA!」では、桜井さんのチューニングがどうなるのか、YO-KINGさんのフォースは会得なるのか、そういったことを裏テーマに盛り上がっていただければと思っております。しかし、今回の僕たちの話も盛り上がりましたね。

YO 盛り上がったねぇ。

雅夫 おふたりとも、ありがとうございました。

YO・桜井 ありがとうございました。

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『INNER VOICE』のリード曲としてラジオでも頻繁にオンエアされている『メロディー』には、こんな一節がある。

「モノを創ることは やめられるわけがない」

そう遠くない将来にまたおふたりにお会いできそうだ。嬉しくなってくる。そして、こんな言葉もある。

「この歌の語り手は ぼくなのか 君なのか 彼なのか 誰なのか 時間が決めてくれるだろう」

モノを創っても、それを「俺のものだ」とせず、作品が受け手の心に沁み込めばその人のものになると解釈できるかもしれない。アルバムの資料に謳われている文句は「最強に自由で 体温と匂いを伴う 成熟したロックンロール」という言葉に、僕は深くうないずいてしまう。とことん素敵で、憧れる想いをさらに強くするインタビューとなった。


Text=野村雅夫


野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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