世界で15秒に1個売れるメンズコスメ「ブルドッグ」創設者のイノベーションを起こす秘訣

男性専用のスキンケアブランドとしてイギリスで産声をあげた「ブルドッグ スキンケア フォーメン」。発売から10年あまりで国内シェアはトップ3にランクイン。現在は世界27ヵ国、45、000以上の店舗で販売されるなど、広く支持されているブランドだ。日本でも、2018年4月からECサイトでの販売をスタート。この10月には全国の東急ハンズやロフト主要店舗での本格的な店頭販売もスタートするなど、注目を集めている。来日した創設者のサイモン・ダフィー氏に、「ブルドッグ」が世界中で支持される理由について話を聞いた。


女性ブランドからの派生ではなく、男性のためだけのスキンケアを

CEOのサイモン・ダフィー氏が、ロドリー・フェリアー氏とともにスキンケアブランド「ブルドッグ」を創設したのは、2006年のこと。

「私は、かねてから男性用スキンケア製品に不満を抱いていました。女性用に比べて種類が少ないという点もですが、製品の大半は女性向けブランドから派生したもの。男性の肌は、女性に比べて酸性度が高く、厚みがある。喫煙率や飲酒率、屋外で陽に当たる機会も、女性より男性の方が多い傾向にあるなど、ライフスタイルも異なります。それらを考えれば、一から男性向けに開発すべきなのに、そうしたブランドはあまり見当たりません。また、サスティナブルでエシカルな製品がないことも気になっていました」

起業の契機となったのは、仕事のために在住していたアメリカ・ニューヨークでの体験だ。

「食品から日用品まで、ナチュラルでエシカルなものをそろえたスーパーマーケットに買い物に行った時のことです。天然成分由来のスキンケア製品がずらりと並ぶコーナーがあったものの、売られているのは女性用とベビー用ばかりで、男性用はまったく見当たらない。最先端といわれるマーケットで扱っていないということは、そもそも製品自体が存在しないのではないか。それなら、自分がつくろう。そう思い立ったのです」

異業種への挑戦で抱いたのは、10%の恐怖心と90%のワクワク感

当時、ダフィー氏は、4人のメンバーとともに立ち上げたイノベーションコンサルタント会社で、メインアナリストとして活躍していた。顧客に抱えていたのは、P&Gにコカ・コーラ、スターバックスコーヒー、サムスンといった超がつく大手企業。順風満帆だった仕事を辞め、未知の世界である化粧品の製造に挑戦することに、戸惑いはなかったのだろうか。

「確かにチャレンジングだったと思います。化粧品業界というマーケットを理解することから始まり、素材について学び、配合を研究し、それをつくってくれる工場を探し、倉庫を確保して、流通業者にセールスをかけ……。当初はロドリーとふたりだけで、事業にまつわることはすべて自分たちで手がけていたので、時間に追われる日々でした。資金調達にも苦労しましたしね。けれど、起業に対しては、恐怖心が10%で、あとの90%はワクワク感。もともと、難しいことや厳しいことに挑戦するのが好きなんです。どうやったらうまくいくか、成功するかを考えるのは楽しいし、とてもエキサイティングですから」

経験がないからこそ、消費者と同じ目線で、彼らのニーズを細かくくみ取り、それを製品に反映することができたかもしれない。

「いえ、顧客ニーズのリサーチはしませんでしたし、周りの人に意見を求めることすらしませんでした。(米自動車メーカー、フォード創設者の)ヘンリー・フォードが遺した言葉に、”If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.(もし人々に何が欲しいかと聞いていたら、彼らは『もっと速い馬がほしい』と言っていただろう)“があります。つまり、イノベーションは、顧客のニーズや要望からは生まれないということ。私も同感。自分が信じたものに向かって突き進むことでしか、新しいものは生みだせないと思っています」

効果が評判となって口コミで広まってリピーターも続出

化粧品業界は、大手メーカーがシェアの大半を占めている。そこを相手に、たった2人きりの小さな会社が挑むには、圧倒的な競争力のある製品が必須だ。

「最も重視したのは品質です。ブランドイメージがよかったり、パッケージが洒落ていたりすれば、消費者は、一度は手に取ってくれるかもしれません。けれど、効果がなければ、リピートすることは決してないでしょう。反対に、使ってよかったと実感していただければ、顧客になってくれるだけでなく、周囲にすすめてくれるかもしれない。実際、ブルドッグの製品は、大々的な宣伝をしていません。しかし、口コミで広がり、今ではさまざまな賞をいただくまでになりました」

高い品質を維持するために、ブルドッグがこだわっているのが原料である。

「大切なのは、何を使って、何を使わないか。普通肌向けのオリジナルラインには、アロエベラやカメリナ油、緑茶成分を、敏感肌用のセンシティブにはバオバブにオート麦、ウィローハーブ、脂性肌用のオイルコントロールには、ヘーゼルとウィローパーク、ジュニパーといいうように天然成分をベースにし、人工着色料や合成香料、動物由来成分は使っていません。パッケージも同様で、現在は、環境にやさしいサトウキビ製プラスチックパッケージをメインにしています。これは、男性用スキンケアブランドでは初の試み。私たちのブランドを契機に、こうしたサスティナブルでエシカルな取り組みが、いつの日か業界水準になってくれれば嬉しいですね」

前向きなエネルギーを発することは経営者の“責任”

わずか10年あまりで、世界中にファンを獲得し、今なお躍進を続けているブルドッグ。代表的なアイテムであるオリジナルモイスチャライザー(保湿クリーム)の年間販売数から算出すると、なんと15秒に1個売れているという実績を誇る。その成功の秘訣を問うと、「ひとつは品質の髙さ、もうひとつは人材です」と、ダフィー氏。

「ふたりだけで始めた企業ですが、アロマセラピストやブレンダーなど、外部の優秀な人たちに力を貸してもらいました。ここ数年で社員数はぐんと増えましたが、それぞれがプロフェッショナルだし、モチベーションも高い。素晴らしいチームだと自負しています。この仲間たちがいるからこそ、ここまで来られたのだと思っています」
 
創業間もない企業に、優秀な人材が集う。その理由は、いったいどこにあるのだろう?

「肌タイプに合わせた天然由来成分を使う、環境に配慮した製品をつくるといった企業理念に共感してくれたこともあるとは思いますが……、経営者として私が心がけているのは、常に前向きなエネルギーを発すること。悲観的な経営者より、ポジティブで情熱的な経営者のもとに、人は集まってくるような気がします。それに、パッションは伝染するんですよ」
 
確固たる信念と情熱を持つ経営者のもとに、それに感化されたポジティブなスタッフが集う。その相乗効果は、大きな可能性を秘めている。ブルドッグの快進撃は、この先も続くに違いない。


Simon Duffy MBE
1976年イギリス・ロンドン生まれ。’96年にオックスフォード大学入学。2000年、広告代理店グループSaatchi & Saatchi に入社後、’02年、4人の創立メンバーとともに、イノベーションコンサルタント会社Fahrenheit212を設立。'06年、ロドリー・フェリアー氏とブルドッグを立ち上げ、’07年からイギリスにて製品を発売。'16年、MBE(大英帝国五等勲爵士、団員)受勲。


BULLDOG
現在世界で27ヵ国45,000店舗で展開し、代表的な製品であるモイスチャライザー(保湿クリーム)が、15秒に1個売れているという実績を持つスキンケアブランド。2007年にイギリスで創業し、、スウェーデン、韓国、アメリカ、ドイツ、オーストリアをはじめ、さまざまな国で愛される。
https://jp.bulldogskincare.com/


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Text=村上早苗 Photograph=坂田貴広