数値目標が会社を破壊する! 日産新CEOが直面する新しい時代 ~ビジネスパーソンの言語学73

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座73、いざ開講!


「できないことをできると言わせてしまう文化をいつの間にかつくり上げしまった」―――新体制のスタートにあたり記者会見を行った日産自動車・内田誠CEO

カリスマ経営者、カルロス・ゴーン前会長の衝撃の逮捕から1年。今年9月には、あとを継いだ西川廣人CEOも自らの不正報酬の問題をうけて辞任。業績も悪化、難問山積の日産自動車の新体制がようやくスタートした。まだ53歳と若い内田誠専務が新社長に選ばれたのは、恐らくここからの立て直しが長丁場になるであろうという見通しによるものか。内田CEO自身も、会見では終始厳しい表情で日産自動車の現状を語った。

「国内工場における完成検査問題や、経営者不正から明らかになり、事業の運営上の問題や脆弱なガバナンスなど大きな問題が表面化しました。これにより企業としての社会的信頼を失うだけでなく、ハードルの高い計画を推し進めた結果、急激な業績低下を招いてしまいました」

「ハードルの高い目標達成のために短期的成長を求めた行動を起こすことになり、技術開発や商品開発のプロジェクト、将来に向けた設備や人材などへの必要な投資に影響を及ぼすことになりました」

たとえば、対前年比などわかりやすい目標を設定し、その達成のための努力をうながすということは、どんな企業も行っているだろう。内田新CEOが語ったのは、その手法の弊害だった。恐らく日産社内では、実現可能な目標ではなく、「上司がよろこぶ」目標設定が行われ、その達成のために多少の無理をしてもいい悪しき文化がはびこっていたのだろう。目標にしばられ、目先の“数字”を追い求めた結果、日産から魅力的な自動車が少なくなっていった。このことは経営陣の不正以上に、会社の存続を揺るがす問題だ。

「目標設定において、できないことをできると言わせてしまう文化をいつの間にかつくり上げてしまった」

「経営層と社員が意見を言い合える、反論が許される企業風土をつくっていきたい」

無理やり売ろうとするから販売店へのインセンティブが増加し、その分、開発のための資金が減少する。‟できないことをできると言わせてしまう文化"のなかで無理な目標設定と形だけの目標達成を繰り返していれば、社内のモチベーションも低下するしかない。

少子高齢化が進み、若者の自動車離れも顕著な時代だ。日本全体の消費力が落ちている現状、どんなに魅力的、画期的な商品でも思うように売れないというのは、他の業界でも同じだろう。そんな時代に数字だけを追い求める経営では、どこかにひずみが生まれてしまう。ガソリン車がEVに変わっていくように、人を動かす"燃料"も変わっていくべきだ。日産の再出発がそんな時代を変える突破口になることを望む。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images