「夫のことを嫌いになりたい」 〜元NMB48須藤凜々花

2017年、第9回AKB48選抜総選挙の際に結婚宣言を行い、同年8月にNMB48を卒業した須藤凜々花。彼女がテレビや取材では言い切れなかったこと、捻じ曲げられて伝わってしまったこと、そういったものを赤裸々にではなく、丁寧に書いていく連載コラム、「りりぽんのスキスキ委員会」6回目。


「人間は大きな幸せを前にすると急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいるの」

by深キョン

Netflixで『下妻物語』を観たら、深キョン様がとても素敵なことを仰っていました。

なぜ急に『下妻物語?』と思った方もいらっしゃるでしょうか。

この映画には、樹木希林さんが出演しています。

先日の訃報を受けて、寂しさでいっぱいになりました。

そしてこの映画を観返していたのです。

樹木希林さんの、夫である内田裕也さんへ向けた言葉の全てが大好きです。

「全部、好きです。すべて何もかも好きです。もし、来世というものがあって、生まれ変わることがあるのなら、また巡り合うことがないように。出会わないように、気をつけたいわね。彼と出会ってしまえば、また好きになって大変な人生を送ることになるから」

“好き”がとっても伝わります。

私は、愛することや愛されることよりも、好きであることの方が尊いと感じます。

偏っているからです。

偏りを貫く人は、無敵です。

惚れたら負け、ともいいますし、大概のヒーローは女ができたら弱くなります。

しかし、"好き"という感情の持つ力は、人間最大の情熱になり得るものなのではないかと思います。

愛することよりも、好きであることのほうが、勇気がいる。

愛していたら、振られても愛せる。好きだったら、振られたら死ぬか殺したい。

でも、好きだからできない。

"好き"のほうが、未熟かもしれないけれど、嘘がない。

真っ直ぐでスカしてない。

私は、夫のことが好き過ぎるせいで傷つくことが多いから、嫌いになりたいと本気で思うことがある。

もちろん嫌いにはなれない。

でも、夫を振り向かせるためなら、嫌いになれる。

『スカーフェイス』というギャング映画を観た。

ギャングのボスの女は決まってあたりがキツい。

かっこいい。

好きな男に冷たくできる女はスマートだし、冷たい女に惚れられてる男もスマートだ。

私は犬みたいな女が可愛がられると思ってそうしていたけれど、彼に犬みたいな女を可愛がる男になってほしくない。

彼には強くいてほしい。

だから私が強くなる。

惚れた方が必ず負けるなら、私は彼にきっと負け続ける。

ならば私はわざわざか弱い女を演じる必要はなくて、強くなればなるほど、彼という存在がさらに強くなる。

という考えで私はクールな彼に「もっと俺にくっつけ!」と言わせるまでに成長した。

好きが過ぎると嫌いにもなれる。

私の"好き"をナメないで頂きたい。

惚れた方が負けなら、惚れられた方は勝ちなのか?

それはそうだ。

でも、勝ち続けるとは限らない。

主導権を握っているのは本当は惚れた方だ。

負け続けるか、負けることをやめるか、勝負の行方を選べるのは惚れた方だけなのだ。

だから媚びる必要はない。

好きでいることと媚びることは絶対に違う。

だって私は好かれるために惚れたわけじゃないもの。

好きな人を嫌いになれないのは、好きだから無理なのではなくて、嫌いになるのが怖いからだと思う。

好きな人を嫌いになって、楽になるのが怖いからだと思う。

こんなに傷ついて、耐えて、不安を感じながら守ってきた二人の幸せを、失うことで得られる幸せがあるという事実が怖いからだと思う。

私は怖くない。

二人より一人の方が楽になることを知っているし、楽であることの退屈さも知っている。

退屈さを捨てる勇気を持って結婚した。

幸せは勇気と共にある。

食費を節約してやりくり上手になるよりも、私もいっぱい稼いで彼にいいお肉を食べてほしい。

そして他の女を褒めたら冷たくする。

一生褒めてろボケが。

私は無敵。

でも最近、

「このハンバーグ世界一うまい」

と言われて恐れ慄きました。

すぐに返事できない。

幸せ怖すぎわろた。

なぜ新婚はノロケ話をするのかわかったぞ。

幸せにビビってるんや。

「どうせ別れる」という誰かのツッコミで幸せ原液を薄めないと早死にするんじゃ。

私もいつの日か自由が丘のカフェで夫の悪口をママ友と言い合いたい。

幸せを乗りこなしたい。

そんな日は来るのだろうか。

樹木希林さんのように、強くてかっこいい惚れた方になりたいです。

ご冥福をお祈りいたします。

ずっと大好きです。


Photograph=斉藤大嗣 Stylist=平みなみ Hair & Make-up=竹中真奈美


須藤凜々花
須藤凜々花
1996年東京都生まれ。2013年「第1回AKB48グループドラフト会議」において、NMB48に加入。NMB48の12thシングル「ドリアン少年」ではセンターを務める。’17年、第9回AKB48選抜総選挙の際に結婚宣言をおこない、同年8月にグループを卒業、現在に至る。著書『人生を危険にさらせ!』(堀内進之介との共著、幻冬舎)。
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