錦織 圭、八村 塁、岡崎慎司も参戦した「eスポーツ」が持つ力とは?

STAY HOMEが続くなか、注目を浴びているスポーツが「eスポーツ」である。テニスの錦織 圭、バスケットボールの八村 塁、サッカーの岡崎慎司らトップアスリートも次々と参戦。2020年に、世界市場規模では1400億円に達する見通しの新たなスポーツの魅力とは? 

WOWOWやYouTubeで生配信された"復帰戦"

赤土のコートで、錦織 圭(30=日清食品)が鮮やかなロブショットを連発した。バックハンドの強烈なダウンザラインも披露。1次リーグ1勝2敗で決勝トーナメント進出を逃したものの、見せ場は作った。昨年10月に右肘を手術。約半年ぶりの"復帰戦"は笑顔も多く、終始リラックスしていた。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、4月27日に開幕したマドリード・オープン。錦織、ナダル(33=スペイン)、ズベレフ(23=ドイツ)ら出場した男女各16選手が手にしたのはラケットではなく、ゲーム機のコントローラーだった。5月のトーナメントを中止した主催者が企画したオンラインゲームによる慈善大会。ゲームソフト「テニスワールドツアー」を採用し、各選手は自宅からバーチャルの世界で競い合った。優勝者は15万ユーロ(約1740万円)の賞金からツアー中断により経済的に苦しんでいる選手の支援に寄付。主催者はマドリードのフードバンクに5万ユーロ(約580万円)を贈る。

大会はWOWOWやYouTubeで生配信された。公式サイトで、錦織は「私たちはみんな、早くコートに戻りたいと思っているけれど、たとえ家にいてもこのような形でファンを楽しませることはできるし、今はそれが必要です」とコメントしている。

ゲームでファンを楽しませたのはテニスだけではない。4月4~12日にはNBAが現役選手16人によるゲームトーナメントを開催。大会は米スポーツ専門局ESPN2で全米へ生配信され、公認ソフト「NBA2K20」で熱戦を繰り広げた。このソフトの日本での公式アンバサダーを務める八村 塁(22=ウィザーズ)も出場。準々決勝で優勝したブッカー(23=サンズ)に敗れたものの、1回戦では巧みなコントローラー捌きを見せた。

米メジャーリーグも各球団から1選手、計30選手が参加するゲーム大会を開催。国際サッカー連盟もサッカーゲーム「FIFA20」による慈善大会を主催し、日本からは岡崎慎司(34=スペイン2部ウエスカ)が出場した。

外出が制限され、大規模イベントが開催できない中、自宅でプレー可能なゲームが脚光を浴びている。eスポーツは2018年にインドネシアで開催されたアジア大会で公開競技として実施され、サッカーゲーム「ウイニングイレブン」では日本代表の2人が金メダルを獲得。'22年に中国・杭州で開催予定のアジア大会では正式種目に昇格する。近い将来、五輪種目に加わるとの見方も強い。

'19年の国内市場規模は61.2億円で、世界市場は'20年に1400億円に達する見通し。賞金総額が数十億円規模の大会もあり、'19年7月の大会では16歳の米国人が300万ドル(約3億2000万円)を獲得した。eスポーツの競技人口は世界に約1億人とされる。欧州、米国、台湾、韓国、中国などに多く、世界でトップ100位以内のクラスになれば、スポンサーが付き、マウスやキーボードなどの提供も受けられる。

いまや、なりたい職業の上位にユーチューバーやeスポーツ選手がくる時代だ。公園や広場などが閉鎖され、運動できる環境は激減。感染リスクの少ない家に籠もり、ゲームに熱中する子供達にコントローラーを手放せと言う理由を探すのは現実的に難しいのではないだろうか。eスポーツの部活化が進み、昨秋の茨城国体でも競技が実施された。むしろ、野球やサッカーなどに励む子供を応援するのと同様に、テレビやパソコンの画面と向き合う姿を後押しするべきなのかもしれない。

マドリード・オープンの公式サイトでチチパス(21=ギリシャ)が残したユーモアたっぷりのコメントが新たな時代を象徴していた。

「ビデオゲームをしていても人生に何の役にも立たないと言っていた両親が間違っていたことを証明できて嬉しい」

Text=木本新也