どんな時もブレない! 17歳藤井聡太七段、"普段通り"の強さ~ビジネスパーソンの言語学99

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。99回目、いざ開講!

「対局については普段通り臨むのが一番いいかなと思いました」ーーー初のタイトル戦となった第91期棋聖戦の初戦を制した藤井聡太七段

久しぶりに、曇りのない希望を見た気がした。藤井聡太七段にとって初のタイトル戦となった第91期棋聖戦。相手は、現在棋界最強といわれる渡辺明三冠だ。破竹の勢いで挑戦者に駆け上がった藤井七段もさすがに苦戦すると思われたが、初戦で会心の勝利をあげた。タイトル挑戦者としては史上最年少。このまま5番勝負を制すれば、もちろん史上最年少のタイトルホルダーとなる。対局後の藤井七段は、相変わらずの冷静な口調で17歳とは思えぬ強心臓ぶりを見せた。

「先勝することができてよかった。第2局までしばらく時間があるので、しっかり調整したい」

「長い持ち時間で渡辺棋聖と戦うのは初めて。中盤でいくつか思いつかない手を指され、こちらも見習わなければならない」

「対局については普段通り臨むのが一番いいかなと思いました」

淡々としたコメントも“普段通り”。タイトル戦用に師匠から和服をもらっていたというが、この日は「勝手がわからなくて」ということでスーツ姿。そんな普段通りのスタイルも、大舞台でも舞い上がることのない藤井七段の強さを象徴しているかのようだった。

これで3月以降10連勝。新型コロナウイルス問題が大きくなっていく中で一気に成長したといわれるのは偶然ではないだろう。普段は高校に通っている彼は、この期間ふだん学業に割いている時間の多くを将棋に傾けることができたのだろう。一時はタイトル戦の開催も危ぶまれていたが、そんななかでも着実に成長した姿をファンに印象づけた。

この新型コロナウイルス騒動で多くの人がこれまでの生活を変えざるを得なくなった。“普段通り”でないことでパフォーマンスが低下したと感じている人も少なくないだろう。しかし17歳の藤井七段は、それが言い訳に過ぎないことを教えてくれている。自分にとってなにが重要かということをしっかりと見つめていることができれば、むしろ成長することもできる。藤井七段の将棋人生においては、まだまだスタート地点あたりの1勝に過ぎないかもしれない。だが、この1勝が日本全体に与えたインパクトは大きい。どんな時もブレずに前を見続ける。17歳の棋士は、その大切さと、力強い勇気を私たちに与えてくれたような気がする。


Text=星野三千雄