小山薫堂の旅の必需品とは?「旅とは日常を俯瞰して見つめる眼鏡みたいなもの」

旅をより快適に、より素敵なものにしてくれる「旅の必需品」。放送作家で脚本家の小山薫堂さんが旅に欠かさずに持っていくものとは?


徐々に体に馴染むグローブトロッター

旅に持っていく必需品は何か? まず旅自体が私の人生に欠かすことのできない必需品です。私にとって旅とは、日常を俯瞰して見つめる眼鏡みたいなもの。眼鏡というよりも、老眼鏡に近い。毎日の生活の中には、近過ぎて見えなくなっているものが、いっぱいあります。でも、旅に出て距離を置くと、何気ない毎日の生活が「幸せなものだなあ」と実感できます。

そうした感覚を身につけると、日常の風景も変わって見えてきます。例えば、毎日の通勤時。「これも旅なんだ」と思うと、何度も見ている風景がいつもと異なるように感じます。新しい発見に、気持ちが前向きになります。ですから、旅自体が必需品であり、私は毎日、旅をしているのです。

具体的な物としての必需品は、まずはスーツケース。以前はリモワ派でしたが、最近はグローブトロッターのトロリーを愛用しています。実は、かなり前からグローブトロッターは気になっていたんですが、「重たそう」との印象を持っていました。でも、ハワイで「グローブトロッター100周年記念モデル・ハワイ限定バージョン」に出会い、一目惚れ。購入して使ってみると、意外なほど軽い。使うほどに自分の体に馴染み、体の一部になってくるような楽しさがあります。

表面にハワイ諸島のシルエットがプリント。

“記憶の栞”にスマイソンのトラベルノート

スマイソンのトラベルノートも欠かせないアイテムです。2003年にロンドンのヒースロー空港で見つけて購入してから、旅には必ず携帯しています。ちなみにヒースロー空港は、映画『ラブ・アクチュアリー』にも描かれている、人の出会いにあふれた素敵な空港です。

トラベルノートには、行きの機内で、便名、座席番号、旅の目的、同行者の名前などを記入。帰りは旅のちょっとした思い出を書き込みます。内容は、「おそらく忘れてしまうだろう」と思えること。大切なことは、頭で覚えていられますからね。例えば、「ドイツ・ケルンのDAIKANというラーメン屋。醤油味と塩白湯味で迷ったが、塩白湯を選んで正解だった」という感じ。このノートはいわば、その旅の情景を思い出す“記憶の栞”です。

カバーのTRAVEL NOTEの文字が刻印されたノートは、ついに3冊目に突入。

ライカは、やっぱりライカだった

カメラはライカを愛用しています。ライカM7は、発売当時から使っているので、もう20数年になりますね。M8が発表された頃は、カメラがアナログからデジタルへと移り変わる過渡期。ライカも時代の流れのデジタルカメラを発売しましたが、デジタルになっても、ライカはライカでした。たいていのデジタルカメラはSDカードを側面から差し込む形式を採用していますが、ライカは「カメラの底からフィルムを入れていたから、SDカードも下から入れる構造にしよう」と考えた。ライカって、そういうところに情熱を注ぎます。そんな社風というか、ブランド哲学に、心惹かれるんですよ。

ライカの本社「ライツパーク」は、フランクフルト国際空港から車で1時間ほどのウェッツラーという街にあります。私も訪ねましたが、ライカの社員はもちろん、街の人々も心からライカを愛しているんです。ライカのブレない姿勢が、企業と街の一体感を生み出しているのでしょうね。ライカはものづくりのお手本のような存在です。

現在、愛用するM10.ほかに、くまモンとコラボしたライカも所有。

これからも旅を続け、自分を磨いていきたいと思っています。


Text=川岸 徹 Photograph=太田隆生



小山薫堂
小山薫堂
放送作家、脚本家。1964年熊本県生まれ。『料理の鉄人』など多くのTV番組を企画。脚本を手がけた映画『おくりびと』では、アカデミー賞外国語映画賞受賞。名レストランの経営手腕にも注目が集まる。
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