川島永嗣が取材中に涙した理由。『耐心力 重圧をコントロールする術がある』10月11日発売

サッカーW杯で3大会連続日本代表の正GKを務めた川島永嗣の著書『耐心力 重圧をコントロールする術(すべ)がある』が10月11日に発売。これまでのサッカー人生において、川島はいかに自らに降りかかってきた重圧と闘い、それをどのように乗り越えてきたのだろうか。この本は、川島が激動の実体験を通して身につけた「重圧をコントロールする方法」の極意を示し、 また、ロシアW杯に関しても詳細に明記した、ひとつの「史実」となる書籍。企画・編集を手がけた雑誌「ゲーテ」編集長・二本柳陵介が、その制作秘話を明かした。前編は、川島が取材中に涙を流した理由。


唇を噛み、身体を震わせながら涙を流した。重圧が、川島の心と身体を蝕んでいた。

2018年7月12日。ロシアW杯の激闘を終えたばかりの川島永嗣選手はその日、バカンスから帰ってきた。

「沖縄行ったのですけど、台風の影響であまり楽しめないことがわかって、急遽、香港に行きました」

約1年前から本格的に準備を始めた川島選手の書籍。その仕上げとして、ロシアW杯の話を聞かなければならない。貴重なオフの時間をもらったのだった。

自身3度目となるW杯で、川島選手は注目を集めた一人だったと思う。正直、あまりポジティブではない注目のされ方だった。だからこそ、何があったのか、を彼の口から聞いておきたかった。

話の起点は、監督がヴァイッド・ハリルホジッチから西野朗に替わったところからだった。川島選手はフランス語が話せるということもあったと思うけれど、非常によくヴァイッドとコミュニケーションを取っていた。だから、ロシアW杯を「やっぱり一緒に戦いたかった」と話し、こう続けた。

「ヴァイッドにメールは一通、送っています。またいつか、ヴァイッドの元を訪ねて、話をしたい」

厳しいこともたくさん言われた。ムカついたこともあった。でも、たくさんの気づきを得られた。ヴァイッドは、試合もきちんとチェックしていて、リザーブリーグの試合での、ちょっとしたミスまで把握していたというから、「見てもらえる」感と説得力はあったのだと思う。

大会前の日本での合宿や試合、渡欧してからの合宿やスイス戦、パラグアイ戦など、順番に話を聞いていった。その後、本大会へと話題は移っていく。コロンビア戦でのフリーキックでの失点、セネガル戦のパンチングミスなど、彼にとってあまりポジティブではないこの2試合をいかに戦い、3戦目であるポーランド戦へと向かったのだろうか。

セネガル戦の後、西野監督と個別に話した話。そして、試合前日の会見出席など、セネガル戦とポーランド戦の間には、数多くのトピックがあった。

ポーランド戦前日の記者会見。西野監督から登壇者に指名された。

そして私は、「周囲からの激しい圧力や非難があったことは知っていましたか?」と聞いた。

「報道はシャットアウトというか、見ないことは簡単なんですね。でも、メールが来るんです。こんな風に批判されているけど、大丈夫か?って。ありがたいことなんですけどね(笑)それで、まぁいろいろ言われているのは感じました」

その後、どうやって切り替えたのか?

流れを変えることができたのだろうか?

そう、質問した時だった。

川島選手は少し肩を震わせ始めた。そして、歯を食いしばりながら目を真っ赤にした。声をかけずに見つめていると、彼の目から涙がこぼれ落ちた。取材中に涙を見せるというのは、なかなか経験がないことだった。

この4年間、激動の日々だった。所属チームが決まらない浪人生活。欧州生活ではサポーターにクルマの窓を割られ、パンクさせられ、試合中のスタジアムでは、前GKの名前を連呼された。そして、今回のW杯では、日本国民からも批判の対象になった。

思い出したのだろう。知らず知らずの間に心と身体を蝕んでいた重圧を。この日、突然こぼれ落ちた大粒の涙は、ストイックに戦い続けた男が見せた、自己解放の瞬間そのものだった。

通常、書籍づくりにおいて、時事性の強い章は前の方には持ってこないのが、私的にはセオリーなのだけれど、今回はあえて、ロシアW杯備忘録を1章とした。実際に戦った選手の「史実」として、今後も読み継がれるべきだと思うからだ。

サッカーやスポーツに関わる人はもちろん、幅広く感じてもらえる、そんな本に仕上がっていると思う。

ぜひ、手に取ってください。

後編に続く

Text=二本柳陵介 Photogragh=Getty Images

『耐心力 重圧をコントロールする術(すべ)がある』 
【発売日】10月11日
【定価】¥1400+税
「耐える」という言葉は、今の時代に逆行しているかもしれない。でも「心の体力」が必要な場面は人生で多々訪れる。様々な重圧とハンディを乗り越え、欧州で戦い続ける川島が提唱する、道を拓く極意。
【目次】
第一章 ロシアW杯備忘録 -苦しんだ先につかんだ、日本サッカーの目指す道-
第二章 心を養う、18の人生訓 -1日1%成長論-
第三章 ひたすら耐え忍んだ、浪人時代
第四章 日本人、そして日本人GKという高いハードル
第五章 夢や希望を繫げていきたい
Eiji Kawashima
サッカーW杯3大会連続日本代表正GK。1983年3月20日、埼玉県生まれ。浦和東高校卒業後、大宮アルディージャ、名古屋グランパスエイト、川崎フロンターレを経て、2010年にベルギー1部のリールセSKへ。12年には、同1部の名門スタンダール・リエージュに移籍したが、15年には約半年に及ぶ浪人期間を経験。その後、スコットランド1部のダンディー・ユナイテッド、フランス1部のFCメスを経て、'18年8月に同1部の古豪RCストラスブールに移籍した。