【小山薫堂×小池アミイゴ】羽田空港で見たあの言葉の意味は? 旅する日本語⑧「涼飇」

今から飛行機に乗ろうと、羽田空港の出発チェックインロビーで頭上を見上げると、 壁面に巨大なアートギャラリーが広がっているのに気づくはず。それは、旅と日本語をテーマにした「旅する日本語」展。放送作家・脚本家の小山薫堂さんが耳慣れないけれど美しい日本語をもとに、旅にまつわる小さな物語を執筆し、 イラストレーターの小池アミイゴさんが絵画を描いたアートプロジェクトだ。このシリーズは、ふたりが作品に込めた想いを綴ったアナーザーストーリー全11集。


涼飇

風はどこから吹いてくるの?
わたしがそう尋ねたことがきっかけで
父と二人旅をしたことがあった。
風車を頼りに
風の居場所を探す旅。
結局あの時、風のおうちは
見つからなかったけれど
旅の間じゅう、父とたくさん話ができた。
あれから三十年・・・
毎年父の命日には
子供たちといい風を探して
日本のあちらこちらを巡っている。

【りょうひょう】
涼しい風。


Kundo's Another Story
小学生低学年の頃、ある時父親と二人でドライブをしました。その時私は、なぜかたくさん父親に質問してみようと思ったんです。

ドライブ中、最初にした質問が「風はどこから吹いくるの?」でした。それをキッカケに父親といろいろなことを語り合ったという記憶があって……。

この凉飇という言葉とその意味を見た時に、父親に質問をしながらドライブしたことを思い出し、これをヒントにして書きました。文中とは違い、私の父親はまだ生きていますが、今でもクルマを運転していると、父親とのドライブを思い出します。


Amigo's Another Story
震災直後、ボランティアで行った福島県いわき市豊間。目を覆う悲惨な風景の隣にも、気持ち良い浜風があることを知りました、

その後に間を置かず、今度はその風にだけ出会う目的で行ってみると、砂浜の波打ち際に立つカモメたちに出会いました。近づこうとするとサッサと離れるカモメたち。気づけば彼らは必ず太平洋からドンと吹き付ける風に向かって立っている。

その姿が、人生の荒波に立ち向かう人たちの姿と重なったのです。

「風はどこから吹いているの?」

僕はカモメの風車を頼りに「風の居場所」をこの浜辺で知ったように思っています。


旅する日本語展 2018
国内線第1旅客ターミナル2階南北出発チェックインロビーにて「11」の日本語をテーマにした放送作家・脚本家の小山薫堂による旅の物語と、イラストレーターの小池アミイゴが色鮮やかな絵画を展示中(2019年の3月31日まで)。旅の物語と写真を全国から募集する「旅する日本語投稿キャンペーン」も、7月2日から開始予定。詳しくは公式HPまで。
https://event.tokyo-airport-bldg.co.jp/tabisuru/


Text=加藤久美子(ゲーテWEB編集部)


小山薫堂
小山薫堂
放送作家、脚本家。1964年熊本県生まれ。『料理の鉄人』など多くのTV番組を企画。脚本を手がけた映画『おくりびと』では、アカデミー賞外国語映画賞受賞。名レストランの経営手腕にも注目が集まる。
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