本田圭佑のリーダー論「僕ほど組織、チームの力を信じている人間はいない」【本田思考。13】

本田圭佑は、言葉を使うことで、自らをインスパイアし、世界にサプライズを起こす。その脳にはどんな言葉=「本田思考。」が隠されているのだろうか。


今の僕はチームの弱点がすぐに見えるし、長所を高めることもできる  

またしても"無職"になった。フィテッセを1ヵ月半で退団したのは自分自身の判断だし、次に向かうために必要なプロセスだった。常識はずれであることはわかっている。だが、世間の常識がどうであれ、自分自身を高めるために必要なことであれば、僕はためらうことはない。

こういうことを繰り返しているから、僕のことを個人主義者だと思っている人も多いだろう。だが、決してそうではない。もちろん僕個人としては、死ぬまで自分を高め続けたいと思っている。でも一方で僕ほど組織、チームの力を信じている人間はいない。例えばテニスや陸上のような個人競技をしたいかと言われたら、そうは思わない。個人でできることは限られるけれど、チームとして一体になった時、そこには個の集合体以上の大きな力が生まれるから。メッシでもC・ロナウドでも2対1のサッカーで勝てるはずがない。

それでも僕が個人主義者に見えるのは、人前に立って誰よりも先に動き、声をあげるリーダータイプだからだろう。僕のリーダー歴、マネジメント歴は長い。思えば幼稚園のころから僕はリーダーだった。遊び場では率先してみんなを仕切り、遊びのルールを決める。もちろん子供だから、そのマネジメントは利己的だった。強引だったし、時にはケンカにもなった。でもそんな数々の失敗から人間関係の機微を学んでいったようにも思う。

サッカーでもビジネスでもリーダーに必要な要素が3つある。ひとつはチームの目標、ゴールを明確に示すこと。サッカーであれば勝利だし、ビジネスであれば企業としての成長。プロのサッカーチームは、自分が一番だと思っている選手の集まりだ。彼らに勝利のためには何が必要かを理解させることでチームとして機能する。どんなに優れた選手が集まっていてもバラバラの方向を向いていてはチームとして勝利を得ることは難しい。だからこそ優れた監督やチームリーダーの存在が不可欠なのだ。

さらに大切な要素は、個の人材を育成していくこと。経営者の僕には約100人の部下がいる。組織の一員になると、人間はどうしても目の前のことが気になる。自分の今日明日のことばかりを見て、組織としての未来が見えなくなりがちだ。だからリーダーが環境を整え、未来を見せなければならない。彼らのことはもちろん、彼らの家族のことまで考え、どうすれば稼がせてあげられるか、どうすれば個として成長できるかを考えることが重要だ。

そして、一番大切なのはリーダーがあるべき姿を自分の行動で示すことだ。率先して自分を犠牲にし、好機でも危機でも感情を抑えて冷静に振る舞う。

僕はサッカーでもビジネスでもリーダーとしての自分の資質を磨き、高めてきた。今の僕はチームの弱点がすぐに見えるし、長所を高めることもできる。チームには絶対に必要な人材だと思う。五輪代表に入るチャンスがあれば、必ず貢献できる自信はある。

⑭に続く

Composition=川上康介

本田圭佑
本田圭佑
1986年大阪府生まれ。J リーグ名古屋グランパスエイトでプロデビュー。W杯に3大会連続で出場し、全大会でアシストと得点を記録。2019年11月にオランダリーグのフィテッセに入団したが、12月に退団。次なる動向が注目される。カンボジア代表の監督も務める。
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