アパレル界の風雲児 近藤広幸 「大事にしているのは、ひとりの女性をハッピーにすること」

去る1月に行われた第8回のゲーテが選ぶビジネス大賞「シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード2018」。ゲーテ編集部は「ビジネスイノベーション ファッション部門」を受賞したマッシュホールディングス代表取締役社長の近藤広幸氏にインタビューを敢行!「snidel(スナイデル)」や「gelato pique(ジェラート ピケ)」、「Cosme Kitchen(コスメ キッチン)」など、多くの女性に支持されるブランドを展開するマッシュホールディングスの近藤氏に、女性消費者の心を掴む秘訣を聞いた。

マッシュホールディングスを応援してくれる人たちに恩返しがしたい

まず、今回のゴールドシグネチャーアワードを受賞された感想をお聞かせください。

単純に、なぜだろうって(笑)。これまでの受賞者の方々を拝見すると、本当に素晴らしい人たちばかりが選出されていて、なぜマニアックなところにきたのだろうと。すごく驚きました。今ファッション業界はイノベーションとはかなり遠いところにあって、世間的にも後ろ向きなニュースが多い。そんななかで私たちに着目していただけたというのは、とても嬉しく思っています。

マッシュホールディングスは、世の中の女性に広く支持されるような事業を多く展開されています。女性の消費行動を読む上で何か気をつけていらっしゃることはありますか。

消費行動を読むというとすごくビジネス用語っぽいのですが、女性の一日の行動だとか、どういう時にどんな気持ちになるのかとか、自分がお客様の目線になってシミュレーションしてみるというのがとても重要だと思います。ファッションでもメイクアップでも、自分にしっくりくるものに出合えた瞬間ってものすごく価値がある。でも意外と、新しいものにチャレンジする機会ってあまりなかったりしますよね。なので、いかにチャレンジのきっかけを与えられるかということを常に考えています。

マーケティングというよりは、これを身につけると気持ちいいとか、テンションが上がるとか、そういった感覚的な部分を大事にしていらっしゃるということですね。

そうですね。丸の内や銀座、新宿などで働いている女性たちを実際に目で見て、情報収集をすることももちろん重要です。でも、一番大事なのはひとりの女性をハッピーにするためのそのシミュレーションをしっかり行うこと。マーケティングはその後ろ盾というか、行動する勇気をつけるための勉強といった感じです。

これがあったら楽しいだろう。何があったらお客様は喜んでくれるだろう。そんな想像力を働かせていった先に、今のマッシュホールディングスの事業がある。

「コスメキッチン」はまさにそうで、どうしても肌荒れがとまらない、アレルギーに悩んでいる女性たちはみんな、今まで薬局や病院に駆け込んでいたわけですよね。でもそうではなくて、オーガニックの力を使って時間をかけてゆっくりと身体本来の健康を取り戻し美しくなっていく。そんな新たな選択肢をお客様に提供できればいいと思いました。

「何度も基本に立ち返ることで、成長を続けられる」と近藤氏。

最近は特に、アジアへのグローバル展開に力を入れていらっしゃいます。何か理由があるのでしょうか。

国内だけではなくて言語の違う国でも支持されることは、ブランドビジネスという点で非常に重要だと考えています。また、幸運にも隣国の人々は肌の色や体型など身体的な特徴が日本人と非常に近い。なので、アジアを中心にグローバル展開するというのはごく自然な流れでした。今年はシンガポール、タイ・バンコクにも進出予定です。

ビジネスでの成功の一方で、チャリティイベントを開催してその売り上げで被災地に公園を作る「MASH park project」といった活動にもご尽力されています。被災地に公園を作るというチャリティは他には見られない試みだと思うのですが、その発想の源はなんだったのでしょうか。

一番強いのは、応援してくれている人たちへの恩返しという気持ち。今思い返すと最初に作ったブランドって、まあひどいクオリティだったんです。色のバランスとか縫製技術とかもまだまだ未熟で、いいものを作りたいという熱意だけでやっていた。でも、そんな僕らの一生懸命さを見てくれたお客様がいた。「まだまだ荒削りだけど、なんか面白いブランドがでてきたから買ってあげようかな」。といった感じだったのかもしれません。でも、そういった人たちに支えられてここまでやってこれた。ようやく人様に誇れるようなものを作れるようになったので、今まで支援してくれた方々に恩返しをしたい。恩返しって何かというと、マッシュホールディングスを応援してよかったと感じてもらうことだと思うんです。じゃあそう感じてもらうにはどうすればいいかと考えた時に、我々が得た利益を社会に還元していき、なおかつお客様も一緒に楽しめる「MASH park project」を思いつきました。

被災地に公園を作るというチャリティ活動ですね。

被災地で生活している大人たちの一番の心のガソリンは何かというと、将来を担う子供たちの笑顔ですよね。子供たちの健やかな成長や楽しく遊んでいる姿が、大人たちを元気にしてくれる。だから、子供たちが喜ぶ公園を作ろうと。また、公園の完成予想図を徐々に公開していくことで、お客さまと一緒にその過程も楽しんでいく。完成したらそこで子供たちが遊んでいる様子をホームページ上で公開するなど、参加してくれる方々には「何に自分たちが投資をし、どういう笑顔につながったのか」ということを体験してもらいたい。居心地のいい、いつまでも遊んでいられるような温かみのある公園ができることによって、少しでも復興の力になれればいいと思っています。

授賞式では記念ボトルが贈られた。
Hiroyuki Kondo
1975年生まれ。マッシュホールディングス代表取締役社長。バンタンデザイン研究所空間デザイン学科卒業。建築デザイナー、エディター、グラフィックデザイナー、CGアニメーションディレクターを経て、’99年、株式会社マッシュスタイルラボを創業。2005年にアパレルブランド「snidel(スナイデル)」、’08年にルームウェアブランド「gelato pique(ジェラート ピケ)」を立ち上げ、’10年からは「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」を運営。2013年、マッシュホールディングスを設立。現在マッシュグループはファッションのみならず、ビューティー、飲食など多岐にわたるビジネスを手がける。

Text=ゲーテWEB編集部 Photograph=鈴木拓也