いきなり打たれた満塁本塁打に新人投手が放った言葉とは?~ビジネスパーソンの言語学101

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。101回目、いざ開講!

「1人目ですか? いいっすね」ーーープロ初登板で満塁本塁打を浴びた福岡ソフトバンクホークスのルーキー・津森宥紀投手

ついに開幕したプロ野球。日本中の注目が集まった開幕シリーズで新人による珍記録が生まれた。21日、福岡ペイペイドームで行われたソフトバンクvsロッテ第3戦の2回表。ソフトバンク先発の二保投手が危険球で退場となり、急遽登板したのがドラフト3位ルーキーの津森宥紀投手だった。デビュー戦がいきなり無死満塁のピンチでの登板というだけで、緊張感ではちきれそうな状況。しかも津森はロッテの打者・井上に満塁本塁打を浴びてしまったのだ。新人投手が1人目の打者に満塁本塁打を打たれたのは、史上初の出来事。それを聞いた津森はこう答えたという。

「1人目ですか? いいっすね」

これぞプロだ。負けて終わりの高校野球ではない。プロ野球は明日からも試合が続き、長ければ10年以上選手生活を送ることになる。ピッチャーであれば、満塁本塁打を打たれる経験はこれからも何度か体験することになるだろう。彼の場合、たまたまそれが1番最初に来ただけだ。

「緊張はなく、抑えてやろうという気持ちで、ワクワクもありました」

「打たれても仕方ないと思って投げた。予想外の結果でしたが、それ以外は抑えられたし自信になりました」

試合には敗れた。普通のルーキーピッチャーなら、落ち込み、自信をなくす可能性もじゅうぶんにあるだろう。それをあっけらかんと「いいっすね」といえるメンタルの強さは、プロ向きといえるだろう。恐らく彼をマウンドに送り出した工藤公康監督もその強さをかって登板させたのだろう。

「いいピッチングをしていましたし、この経験は次に繋がると思います」(工藤監督)

ロッテの佐々木郎希投手のようにみんなが注目する大型ルーキーではない。デビュー戦もとんでもない結果になった。でもそんなところから這い上がれるのもプロの世界の面白さだ。今は社会全体が新型コロナウイルスに満塁本塁打を打たれたような状況だ。でもここで諦めるわけにはいかない。気分を切り替えて前に進むしかないのだ。津森投手がここから這い上がることができれば多くの人に勇気と元気を与えるはずだ。あの満塁本塁打があったからこそ、今の自分がある。いつか彼が胸を張ってそう言えるときがくればいい。そんな思いで、強心臓の無名の新人投手のこれからに注目していきたいと思った。


Text=星野三千雄