【シリーズ秘書】あの孫正義を10秒で説得した瞬速プレゼン術とは?<前編>

傍にいると「焼け死ぬ」と怖れられたほど、アグレッシブに働く孫 正義社長。その元秘書・三木雄信氏は、秘書からプロジェクトマネージャーを任され、現在は独立、経営者として活躍するまさに元祖「2.0の秘書」だ。その彼が会得した最強のコミュニケーションスキル、瞬速プレゼン術を公開!!


①瞬時のYESは居合い斬りで勝ち取る

秘書のゴールは、社長の生産性を最大限あげること。社長の時間を1 秒たりとも無駄にしないためには、コミュニケーションの高速化が必須。そのスキルが、「瞬速プレゼン」。孫社長の場合、承認を得るのに10秒以上かけられません。なので、ツカミが肝心。私は、「絶対決める」という気迫を持ち、大きな声で、「○○の件です」と切りだしていました。こちらの真剣さが伝わらないと、耳を傾けてもらえませんから。いわば居合い斬り。勝負は出だしで決まります。

②ボス相手に喋りすぎるな

瞬速プレゼンに、無駄な言葉や過剰な敬語はNG。「○○の件です」と切りだしたら、即結論を告げ、その理由を3 つだけ述べる。ひとつ、ふたつでも構いませんが、3 つなら説得力が増します。もっとも、仕事ができる人は1 を聞いて100を知る。孫社長は、結論を言えば瞬時に理由を察してくれたので、説明すらいりませんでした。絶対やってはいけないのは、理由や言い訳から入ること。何を言いたいのか伝わりづらく、多忙な相手ほどスルーされる危険性が。

③ボスの思考が途切れた時がプレゼンの好機

瞬速プレゼンは、タイミングも命。相手の意識が他にある時に話しかけても聞いてもらえないので、仕事がひと区切りし、思考が途切れた時がチャンス。私は、会議と会議の合間やトイレに行くタイミングを狙っていました。同時に、相手にとって〝現在の優先順位〞を見極めるのも重要。早すぎると、相手の関心がまだ高まっておらず、答えが出なかったり、後日考えが変わる場合がありますし、直前だと、万が一仕切り直しとなった時に間に合いません。内容にもよりますが、7~10日ほど前に一度投げかけ、前日再度確認、当日念押しするのがお薦めです。

④聴覚より視覚が重要と心得よ

承認を得るのに説明を要する場合もあります。それでも、10秒を死守するにはメモを作成するのが有効。人は、同じ時間なら耳で聞くより目で見たほうが多くの情報を理解できるのです。鉄則なのが、A4用紙1 枚に簡潔にまとめること。伝える内容が複雑な場合は、図を活用するなどして、ひと目で理解できるような工夫を。それより大きいサイズや枚数だと、余計なことを加えたくなり、相手が理解し、判断する時間を増やすことになりかねません。

⑤社長の考えを自分に「イタコ」してこそ秘書

秘書時代、私が意識していたのは、「社長ならどう考えるか」。しだいに、社長が求める情報や行動がわかるようになり、先回りして提示できるようになりました。社長の人格を憑依させるのです。これも、瞬速プレゼン成功の秘訣だったと思います。今でも、問題があると、「孫社長ならどうするか」と考えます。そんな風に誰かになりきると、気づかぬうちに自分にかかっていたマインドブロックが外せます。結果、思いもよらない打開策が浮かぶことも。

後編に続く


短時間で、成果を導く「瞬速プレゼン」術。ソフトバンク時代に培った最強のコミュニケーションテクを、解説。効率よく働くヒントが詰まった1 冊。

『孫社長のYESを10秒で連発した瞬速プレゼン』
三木雄信 著
すばる舎 ¥1,400

Takenobu Miki
1972年福岡県生まれ。東京大学卒業後、三菱地所を経て、ソフトバンクに入社。社長室長やプロジェクトマネージャーを務めた後、2006年「トライオン」設立。現在は英語習得プログラム、「TORAIZ」運営のほか、他社のプロジェクトマネジメント支援なども行っている。

Text=村上早苗 Photograph=Bloomberg