サイボウズ社長 青野慶久 自称世界一のソフトウェアオタク。合理性×チームワークで超先進的働き方を生む

「僕は一度死んでるんです」。  サイボウズ 代表取締役社長青野慶久氏が社長に就任した2005年から06年のこと。上場して会社を拡大することが漠然と経営者の使命と思っていた。ところが2年間で買収した会社が赤字を出し、業績も下方修正。会社の現預金も使い果たす状況に。

 「この世から消えてなくなりたい」とはじめて青野氏は挫折を経験、同時に心が完璧に折れた。そんな時、目にしたのが古巣の松下電工創業者・松下幸之助の「本気になって真剣に志を立てよう。強い志があれば事は半ば達せられたといってもよい」という言葉。

「自分に欠けてたのはこれだ、と。自分は命をかけるほど真剣になったことがなく、ただ運よく来ただけと気づきました」

 ならば自分にとって、「ダメなら死んでもいい」と思える事業とは何なのか。

「それは『よいグループウェアを作り、世界に広げる』こと。それだけは命をかけて、徹底的にこだわろうと決めたんです」

選べる業務形態、育児休暇最長6年。先進的人事制度

 6年間の育児・介護休暇、場所も時間も自由な働き方など、時代の先を行く人事制度もこの時がきっかけ。「こんなダメ社長に力を貸してくれる人たちが、楽しく働けないなんてあり得ない」と、社員の意見を聞き、新たな制度を次々実現。05 年は28%だった離職率が13年には4%に減少した。さらにダブルワークで得た新しいアイデアを本業に反映できると、副業も解禁。

 サイボウズが目指すのは「チームワーク溢(あふ)れる社会」。働き方の改革は、社員の多様性の尊重と個々の自立を可能にした。

「妻が海外出張、夫も大型商談。保育園へ預けに行けないふたりに代わり、上司が商談中に子守、なんてことも(笑)」

 そして今、グループウェアのシェア日本一となったサイボウズが次に目指すのは、もちろん世界一。死から蘇った男には、もう怖いものはない。

本社エントランスホールのカフェスペース。
サイボウズ
1997年創業。中小企業向け「サイボウズOffice」、大規模組織向け「Garoon」など、オフィス向けグループウェアがメインのソフトウェア開発会社。
Yoshihisa Aono
1971年愛媛県生まれ。大阪大学工学部卒業後、松下電工(現パナソニック)入社。2005年より現職。3児の父として、育児休暇を3度取得。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。


Text=牛丸由紀子 Photograph=太田隆生

*本記事の内容は17年2月1日取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)