日本での実績は関係なし! 山口 俊投手を待っていた実力主義の世界~ビジネスパーソンの言語学106

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。106回目、いざ開講! 

「良い球を投げられていなかったから、彼はその代償を支払うことになった」ーーーメジャーデビュー戦でサヨナラ打を打たれたブルージェイズ山口 俊投手についてモント―ヨ監督の談話

ようやく開幕したメジャーリーグ。レイズの筒香嘉智選手がメジャー初安打でホームランを放つなど華々しいデビューを飾ったのに対し、苦々しいデビューとなったのがブルージェイズに移籍した山口 俊投手。タイブレークの延長10回無死二塁から登板し、四球を与えたあとに三塁打を打たれ、チームはサヨナラ負け。厳しい状況での緊急登板だったが、モントーヨ監督のコメントはかなり辛辣なものだった。

「良い球を投げられていなかったから、彼はその代償を支払うことになった」

ベイスターズとジャイアンツで十分な実績を上げてきた投手だ。もしこれが日本なら「初登板だから」「急な登板だったから」と監督が彼を責めることはなかっただろう。だが、どれほど日本で活躍してきたとしてもメジャーではひとりのルーキーピッチャーにしかすぎない。彼が打たれ、チームが負けた。その結果が彼の評価となる。山口もそのことは理解しているようだ。

「本来、ボール球を振らせたかったが、カウント1-0が頭によぎって、甘い所に行った。メンタル的な失投かなと思う」

「見ての通り、結果なので。これが今の自分なのかなと思っている」

日本にいれば一線級の投手として今シーズンも活躍していただろう。だが世界一のリーグでは、そんな投手でも簡単には通用しない。彼はその厳しい環境に自ら身を投じたのだ。決してハッピーなデビューではなかったが、これこそが彼が望んでいた野球だったのではないだろうか。実績も、人気も関係ない。打ちとるか、打たれるか。それだけが彼の評価であり、そこにはどんな言い訳も通用しない。

山口 俊投手は32歳。野球選手としては決して若くはない。どん底からのスタートとなったが、あとは這い上がるだけだ。打たれたのはもちろん悔しかっただろう。でも彼はきっとそんな野球がどこか楽しかったのではないだろうか。厳しい環境で戦うことで、自分を進化させなければならないと強く思えた。監督のいう“代償”を一番最初に払ったことは、彼の成長にとってはなによりも大きな収穫となったように思う。

ビジネスパーソンも入社して10年も経てば、怒られたりミスしたりすることもほとんどなくなるだろう。そのまま安住することもできる。しかし成長を願うならば、あえて自分を厳しい環境に追い込むことも必要になる。辛く苦しい経験は人を否応なく進化させてくれる。そう思うからこそ、山口投手の今後のピッチングに注目していきたい。日本時代よりも数段成長した姿を見る日がきたとき、私たちの心にも熱い思いがこみ上げてくるような気がするのだ。


 Text=星野三千雄