コロナ禍で戦後最悪のGDP落ち込み! 「新しい日常」の先にあるものとは?~ビジネスパーソンの言語学109

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。109回目、いざ開講!

「とにかく『以前の日常』には戻らない。一人ひとりが考えていかないと」ーーー戦後最悪のGDP下落を発表した西村康稔経済再生担当大臣

「100年の1度の危機」といわれたリーマンショックですらGDPの下落は、17.8%だった(2009年1~3月期)。だが、今回発表された今年4~6月期のGDPは、それを大幅に上回る−27.8%。4月に緊急事態宣言が出され、外出自粛や企業の休業が続き、予想された結果とはいえ数字で実態が明らかになると、その衝撃は大きい。

西村康稔経済再生担当大臣は、7月以降は回復期にあるとして、「4、5月を底にもう一度成長軌道にしっかり戻っていくように全力を挙げていきたい」と語ったが、新型コロナウイルスの感染は拡大する一方で、とてもV字回復の道を辿るとは思えない。そもそも国の方針が明確ではない。今回の会見でも西村大臣自身が矛盾した発言を行っている。

「厳しい状況だが、とにかく『以前の日常』には戻らない。一人ひとりが考えていかないと」

「もう一度成長軌道にしっかり戻っていくように」なのか、それでも「戻らない」のか。戻らないのであれば、どこに着地するべきなのか。それを国民“一人ひとり”に考えろというのは、政治としてあまりにも無責任なのではないだろうか。暑い日にマスクをつけず、気がねなく家族や仲間と食事をし、国内外に気軽に旅に出かけるような“以前の日常”が戻ってくることを誰もが願っている。だが、それがすぐにやってくるとはとても思えないのが現状だ。新型コロナウイルスの特効薬やワクチンが開発され、それが全世界に行きわたるには、年単位の時間が必要だろう。

政府は国民に「新しい日常」を求めている。それは手洗い・うがいの習慣や人との距離といった細かなことではないはずだ。だが、新しい日常の先にある、新しい日本、新しい世界のビジョンを示してもらわないと、安心して生活することができない。経済を優先するというのならば、医療体制の完備と後遺症などへの対策が必要となる。「後遺症があるかもしれないけど、若い世代は重症も死亡も数が少ないから旅行してもいい」といわれても、なら出かけようという人は少ないだろう。政府の方針が見えない限り、企業としてもとにかく耐え忍び、様子見を続けるしかない。

来年、再来年、5年後、10年後、この国はどうなっているのか。「とにかく『以前の日常』には戻らない」というのであれば、その新しい姿を見せてもらえない限り、国民の不安な日常は続くし、経済の回復もありえないだろう。


Text=星野三千雄