プロフットボーラー久保裕也「監督が誰であったとしても」 BORDERLESS STRIKER 第4回

世代交代が進むサッカー日本代表において、24歳、久保裕也は間違いなくキーパーソンに挙げられるだろう。5年前から単身海を渡り、周囲に日本人がほぼ誰もいないスイス、ベルギーで武者修行を続ける道を自ら選択。なぜ、この男はあえて厳しい環境に身を置くのか。なぜ、この男は国境に捉われることなく成長を求める道を歩むのか。6月に開幕するロシアW杯を前に、苦悩し、進化し続けている若きストライカーが、その知られざる思いを「ゲーテ」だけに綴る連載エッセイ。

「僕はこの監督交代を冷静に受け止められている」

日本代表の監督が交代となった。寝耳に水だったので、かなり驚いたが、不思議と落ち着いている自分もいる。なぜ、どのような理由でこのタイミングで監督が交代することになったのか、僕の立場では何もわからない。それでも誰もが日本代表の勝利を目指し、そのために懸命に考え、決断を下したということは信じたい。

日本代表チームに入ると、みんながひとつの思いを共有していることが分かる。選手も監督もスタッフも、ただひたすら勝つことだけを考えている。ハリルホジッチ前監督もそうだったし、西野朗監督も当然同じだろう。思い描く勝利への道すじは、それぞれ少しずつ異なっているかもしれない。でもサッカーは、自分たちが点を取り、相手の点をそれ以下に抑えれば勝ちというシンプルなスポーツだ。思いがひとつであれば、大きな方向性がずれるということはありえない。そう思えるからこそ、僕はこの監督交代を冷静に受け止められているのかもしれない。

監督が交代したことで、代表チームの何が変わるのか、変わらないのかは分からない。ひとつだけ分かってのは、誰が代表に選ばれ、ワールドカップに出場できるか、みんながゼロ地点に戻ったということだ。もともと自分は当落線上にいる選手だと思っている。その意味では、今までもこれからも、やるべきことは変わらない。ただゴールを目指し、走り続けるだけだ。

いま僕自身が集中すべきは、目の前にあるベルギーリーグのプレーオフ。これまで2戦行われて、僕が所属するヘントは2連勝。僕は1戦目にPKで得点をあげたものの、2戦目は勝利に貢献することはできなかった。優勝を目指し、厳しい戦いが続く時期だけに自分の力を思い切って発揮できないのは、すごく悔しいし、もどかしい。コンディションは悪くないし、出場すれば結果を出す自信もある。ワールドカップに向けて、結果がほしいという気持ちも、もちろんある。でも自分が出るかどうかは、自分で決めることは出来ない。

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世界中を見渡しても、どんなときもポジションを約束されている選手は、メッシやクリスチアーノ・ロナウドなど数えるほどだと思う。それ以外の選手は、常に結果を求められ続ける。そうやってポジションを得るために戦うのもまたサッカーなのだ。特に僕のようなストライカーの役割は明確だ。ゴールを決められるかどうか。決めればポジションを与えられるし、そうでなければ外される。どんなチームであろうと、誰が監督であろうと、それは変わらない。

海外でプレーするようになって、メンタルがいかに重要かを感じるようになった。僕の場合、偶然カラダに当たって入ったようなゴールでも、得点することができればテンションが上がり、自然と調子も上向いてくる。逆にどんなに良いプレーを続けていても、ゴールを決められない日が続くと自信がなくなり、モチベーションも下がってくる。どうして決められないんだろうと悩み、試行錯誤する。それが良い結果につながればいいのだが、必ずしもそううまくはいかない。そうすると、一生懸命悩んだぶん、余計に落ち込むことになる。ゴチャゴチャ考えず、開き直って「とりあえずシュートをうとう」と思ったときのほうがうまくいく場合も少なくない。結局、自分を救ってくれるのは、ゴールでしかないのだ。

ずっとプレーをしていれば、良いときもあれば、悪いときもある。そんな経験を繰り返してきて、どんなときも平常心を保つことを心がけるようになってきた。特に調子が悪いとき、思い通りにいかないときは、落ち込みすぎないようにしながら、自分のやるべきことを見つめ直し、そこに集中する。いまは僕にとって試練のとき、我慢のときかもしれない。でもだからこそ、コンディションを落とさないようにしながら、チャンスを待つ。そしてチャンスが来たら、ゴールを決める。それが、それだけが僕の仕事なのだ。

第5回に続く

第1回「ハングリーな環境で強くなりたい」
第2回「オフの時間の過ごし方」
第3回「マリ戦、ウクライナ戦を振り返って」
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Composition=川上康介


久保裕也
久保裕也
1993年山口県生まれの24歳。京都サンガF.C.のU-18に在籍していた2010、'11年と2種登録でトップチームに登録され、チームに帯同。高校3年だった'11年はJ2で10得点と活躍した。19歳だった2013年6月に単身欧州に渡り、スイス1部スーパーリーグのBSCヤングボーイズに移籍。昨年1月からはベルギー1部、ジュピラー・プロ・リーグのKAAヘントに所属し、移籍後7試合5ゴールの活躍でチームを上位プレーオフ進出に導いた。日本代表は、高校生だった'12年のキリンチャレンジカップでA代表初選出。昨年W杯最終予選では2試合連続ゴールを決めるなど、日本の本選出場に貢献した。
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