新型コロナとの“見えない戦争”に打ち勝つための唯一の方法~ビジネスパーソンの言語学90

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座90、いざ開講!

「真珠湾攻撃や9.11のような瞬間が、局所的ではなく、全米で起きる」ーーーアメリカ公衆衛生局のジェローム・アダムス長官がテレビ番組にて

日本でもついに緊急事態宣言が発令された。2ヶ月前は、中国で起きた「対岸の火事」だった。ダイヤモンド・プリンセス号で感染者が増えていることもどこかテレビドラマを観ているような感覚があった。イタリアをはじめとするヨーロッパ、そしてアメリカでの惨状を知り、危機感に火が着いた。しかしもはや日本も火のなかにいたということだ。

すでに新型コロナウイルスの感染者が36万人、死者も1万人を超えた(7日時点)アメリカでは公衆衛生局の長官がテレビ番組で厳しい認識を示した。

「大半のアメリカ国民のなかで、人生でもっともつらい一週間になる」

「真珠湾攻撃や9.11のような瞬間が、局所的ではなく、全米で起きる」

そう、いま私たちは見えない戦争の真っ只中にいるのだ。爆撃機が飛んでくるわけではない。テロリストが爆弾を持っているわけではない。極論すれば、誰もがテロリストであり、生体兵器のような存在であり、それを本人すら認識できないというのがこの戦争の恐ろしさだ。

対応が遅すぎる。経済対策が不備だ、不公平だ。政府や自治体に対するいろいろな不満はあるだろう。だが、もはやそんなことを言っている場合ではない。売上を維持するため、目標を達成するために部下を出社させ、仕事をさせることが、彼らと彼らの家族の健康を脅かすことになる。少しストレスがたまったからと、つかの間の酒席を楽しむことで自らがスーパースプレッダーと化すきっかけになる。自身の行動が誰かを病に、死に追い込む可能性がある。この戦争に勝つためには、今はひとりひとりが覚悟を持って自らを戒めるしか術がない。

トランプ大統領は、「恐ろしい局面を迎えつつある」としながら、「トンネルの先に光が見え始めている」と発言している。

「ある一定の地点に到達しなければならないことは全員が分かっている。それは死者に関する限りは恐ろしい地点になるが、同時に事態が変わり始める地点でもある」

できることなら、日本では“恐ろしい地点”を通過することなく、事態が収束してほしい。そのためにも今はとにかく自重するしかない。不平不満はすべてが終わってからぶちまければいい。日本がおかしいと思ったなら変えていけばいい。そのためのパワーを失わないためにも、私たちはこの戦争に勝たなければならないのだ。

Text=星野三千雄