"夢"では終らせない! ワイナリーオーナーになる方法をエッセイスト玉村豊男が伝授

たいていの美味しいワインは飲んできた……となると次のステップは、 自分好みのワインをつくるワイナリーオーナー!? その夢を実現した日本人に、その道のりを教えてもらった。


ワイナリーを持つ夢、一体いくらで叶う?

ワイン好きなら一度は頭をよぎる「ワイナリーオーナーになる」という願望。それをかなえたのがエッセイストの玉村豊男さんだ。

長野県に移住後、趣味の野菜づくりの一環として始まったブドウ栽培。当初は自家用の醸造だけだったが、徐々にワインづくりの魅力に惹かれ、2004年に「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」を設立。そのワインは、洞爺湖サミットで供されるなど、高い評価を受けている。

「ワイナリーオーナーというと大富豪の優雅な生活を想像するかもしれませんが、実際はかなり違います(笑)」と玉村さん。

「ブドウは植えてから実をつけるまで3年、その後醸造・熟成を経てワインという商品になるまでに2年。ワイナリーをつくりたいと思っても、形になるまで少なくとも5年間の準備期間が必要なんです。もちろんその間、ワインでの収入はゼロ。最低でも3000万円程度の資金が必要だといわれています」

そんな長い道のりでも玉村さんの元へ相談に訪れる人は後を絶たない。その魅力はどこに?

「ワインづくりはブドウを育てて潰し、発酵させるだけのシンプルな仕事。でも例えば潰す時に粒だけではなく軸も残すのか、発酵は培養酵母か自然酵母かなど、細かい選択肢が無数にある。自分がイメージするワインにどうたどりつくかの選択は自分しだい。自己表現を形にできるのが、ワインづくりの魅力なんです」

ワイナリー経営を志す人を支援すべく、2015年には「千曲川ワインアカデミー」を開講。卒業生にはすでに自身のワイナリーを立ち上げた人も出てきた。

「金融やIT出身など、農業未経験の方ばかり。でも共通するのは、ワインづくりへの熱い情熱です」と玉村さん。そう、オーナーになることは誰もが可能。
まずは一歩を踏みだしては?

醸造から経営まで学べるのが「千曲川ワインアカデミー」。日本初の民間ワインアカデミーと して2015年開講。週末の2日間、年間30日の講義で、ブドウ栽培から醸造、ワイナリー経営まで実践的な知識と技術を学ぶ。受講生の経歴も経営者、医師などさまざま。


ワイナリーオーナーには主に3タイプある

海外も含めたワイナリービジネスでは、オーナーの役割もさまざま。潤沢な資金で一種のステータスとして有名ワイナリーを買収するオーナーもいれば、
ワイナリーを自ら立ち上げ、ワインビジネスに参入するオーナーも。

■名誉や価値を手に入れるプレステージオーナー
ケリングのフランソワ・ピノーの一族が2017年にクロ・ド・タールを買収した金額は2億5000万ユーロとの噂も!  中国やロシアの富豪などが続々とワイナリーオーナーの座に。

■事業として監督する経営重視型オーナー
他の事業で成功しながら、自らワイナリーの経営や味わいの決定に深くかかわるオーナーも。上記の玉村さんや「ケンゾー エステイト」のカプコン創業者、辻本憲三など。

■自分の手で一からつくる醸造家兼オーナー
日本のオーナーはほぼこのタイプ。農地の取得からブドウの栽培・醸造、時に販売まですべて手がける。オーナー自らのスタイルをワインに色濃く反映できる面白さがある。

ブルゴーニュの名門「クロ・ド・タール」。


日本でワイナリーを持つならいくらかかる?

5 年間はワインでの収入はゼロ。その間は単年で収穫できる野菜の栽培や、他の畑やワイナリーの手伝いで収入を確保するのが現状だ。玉村さんのワイナリーはレストラン含め約2 億円で完成。醸造免許・酒販免許等の申請も必要。

■主な予算
準備期間の運転資金(5年)/約3000万円
設備機材費/約4500万円
ワイナリー建設費/約5000万円


土地はどう探す? 醸造はどうする?

少ない生産量でも醸造免許が取れるワイン特区の東御市などに赴き、現地で
適切な場所を見つけたら直接農家と話し、貸与・購入することが多い。土地
が比較的安価な北海道では、ヘクタール単位でブドウ用畑が売買されている。醸造については、機材がない場合は、他のワイナリーや受託醸造施設「アルカンヴィーニュ」などに委託。日本ではオーナー自ら醸造を行うことが多いが、醸造家を別途契約することも。海外経験を積んだ醸造コンサルタントも出てきている。


Toyoo Tamamura
1945年東京都生まれ。ワイナリーオーナー・エッセイスト。東京大学仏文科卒業。『新 田園の快楽』ほか著書多数。ワインラベルの絵をはじめ、画家としても活躍。

Text=牛丸由紀子