【仕事術】プレッシャーをビジネスの推進力に変える「メンタル超人」への道

世界的な大舞台、衆人が固唾を飲んで見守るなか、期待通り、いや期待以上の結果を出す「メンタル超人」。彼らはいったいどんなマインドセットでその場に臨んでいるのか? レベルは違えど、大きな契約のプレゼンやセミナーの講演など、緊張感高まるシーンは誰にでも訪れるもの。その時上ずった声、震える手を鎮めて自信たっぷりに振る舞うには? 100人体制のプロジェクトの指揮を任され、多くのビジネスパーソンを「メンタル超人」へと引き上げてきたメンタルトレーナー西井健一氏が、メソッドを伝授する。

感情をコントロールする「固定観念」

メンタルが強い人と弱い人で1番違うのは「出てくる感情」。それをコントロールする方法を身に付けて「メンタル超人」になれば、ストレスをパワーに変えることができるようになります。

たとえ同じ出来事に遭遇したとしても、出てくる感情は人によって大きく異なります。メンタルの強い人が「楽しい」「うれしい」「面白い」「ワクワクする」とポジティブな感情が湧き出る場面で、メンタルの弱い人は「嫌だ」「面倒だ」「腹が立つ」「イライラする」と、ネガティブな感情が表に出てしまう。どこに違いがあるのでしょうか。

カギを握っているのは『固定観念』です。感情は考えて出るものではなく、固定観念を通して自動的に出てきます。「出来事→固定観念→感情」というプログラムが存在するわけです。まるでロボットを制御するプログラムのように、無意識に操られているのです。「Aという出来事ではXという感情を出せ」「Bという出来事ではYという感情を出せ」というように。このやっかいな指令を出しているのが固定観念なのです。

固定観念とはいったいなんなのか?

固定観念は、自分の経験から生まれた「思い込み」と言い換えることができます。例えば「私は話すのが苦手だ」などというのも固定観念のひとつです。そう思い込み、自分にある種のロックがかかってしまう。「話すのが苦手だ」という固定観念があると、人に話しかけられた時にネガティブな感情が出てきてしまうのです。

一方で「話すのが得意だ」という固定観念を持っている人は、話しかけられるとポジティブな感情が出てくる。こう書くと当たり前のように聞こえますが、問題は、だれもが固定観念に縛られていながら、その存在に気付いていないということが問題なのです。

悪い固定観念を破壊せよ!

「話すのが苦手だ」という固定観念を持っているせいで、誰かから話しかけられる度に、ネガティブ感情が出てきてしまう、そんなことを無意識に繰り返しているとしたら、そんな残念なことはない。

では、どうしたらこの負のループから抜け出すことができるのか。カギは、固定観念を壊すことにあります。人は自分の固定観念を「当然のことで仕方がない」と信じ切っていますが、それは単なる経験則の産物であり正しいとは限らない、かなり曖昧なもの。となればこれを壊して負のループから抜け出すことを考えましょう。この厄介な司令塔=固定観念を破壊するカギは、① 悪い固定観念を見つける、② 別の新しい考え方で上書きする、のふたつです。

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《ステップ① 悪い固定観念を突き止める》
人に話しかけられてネガティブな感情になっていても、私たちはそこに固定観念が存在することに気づいていません。知らないうちにネガティブな感情に陥っているのです。まずスタートは、自分が認識できていない固定観念を発見することです。ヒントは「ネガティブ感情の近くに、悪い固定観念がある」ということです。

なくしてしまいたい悪い固定観念とネガティブ感情は紐づいていますから、自分が「ネガティブな感情になったな」と認識できた時、その状況をメモしておくのです。書かないとすぐに忘れてしまうので必ず書き留めておき、後で見返すのです。そうすると、自分がネガティブ感情に陥る時のパターンが見えてきます。そのパターンこそが固定観念の正体なのです。

《ステップ② 別の新しい考え方で上書きする》
さっきも言ったように、固定観念は単なる経験則や思い込みです。実はなんの理論的根拠もありません。ですからとっとと捨ててしまうに限ります。方法は新しい、よい考え方で上書きすること。そうすると固定観念が書き換わります。

実は例外を経験したり、思い込みに気づいたりすると、意外と簡単に固定観念は書き換わるものです。例えば「話すのが苦手だ」と思っていたのに、人にウケることが何度か続くと、「話すの苦手じゃないかも」と固定観念が書き換えられる。「破壊したい悪い固定観念」よりも良い考え方を見つけることが、固定観念書き換えの近道です。

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悪い固定観念を打破する考え方

では、書き換えに用いる新しい考え方はどうしたら見つけたらいいのでしょうか?次の3つの視点がその際の心構えになります。

《視点①「自分は間違っているかもしれない」と考える》
人はついつい自分が正しいと思い込んでしまいます。そして一度思い込むと、他の考えが見えなくなってしまいます。しかし、自分が間違っていることはよくあること。「もしかしたら間違っているかもしれない」。そう意識しておくだけで思い込みに縛られず、物事を柔軟に捉えられるようになり、新しい考え方を受け入れやすくなります。

《視点②事実は1つでも解釈は無数にあると考える》
例えば同時に上司に呼び出された3人がいるとします。訓示を受けた3人は、上司に対してこう考えています。

A氏「私たちのために、やる気を高めてくれた」
B氏「パワハラを受けた」
C氏「ミスで上司に叱られた」

出来事は同じでも、人によって解釈はさまざま。そういう認識を持てば、ひとつの解釈だけに固執せず、別の考え方を受け入れやすくなります。

《視点③他の視点に立ってみる》
3つ目は、「あの人だったらどう考えるだろう?」と他者の立場で考えることです。特に、成功者の思考を想像してみるのがお薦めです。あなたがネガティブな感情を抱く場面でも、まったく異なる捉え方をすることに気付くことができます。もしチャンスがあるなら、想像してみるだけでなく、直接身近な成功者に意見を聞いてみるのも効果があります。

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新しい固定観念を定着させる

ここまで「破壊したい固定観念を見つける」→「見つけた固定観念を別の考えで上書きする」という方法を説明してきました。ここまで到達できれば、ゴールはもうすぐ。仕上げは、新しい固定観念を次の3つのステップで定着させましょう。

《ステップ1 自動反応を止める》
固定観念がやっかいなのは「自動反応」だということ。本人がまったく意識しなくても、勝手に感情が出てきてしまいます。まずこれを止める必要があります。それには次の行動を差しはさむことが有効です。

現)出来事 → 感情 → 行動
新)出来事 → 感情 → ストップして考える → 行動

このように、今まで無意識だったところを、一度ストップして考える時間を取るのです。この時役立つのが、先述のメモ。ネガティブ感情が出てきそうなパターンをあらかじめ把握しておけば、同じような場面に気付きやすくなり、自動反応を阻止できます。

【ステップ2】新しい方の考えを取り入れる
自動反応をストップした際に、今までとは別のアイデアを取り入れてみましょう。例えば「成功している人がしそうな反応」と同じやり方を真似てみるなどが有効です。

【ステップ3】考えなくても自動的にそうなるまで何度も何度も繰り返す
最初のうちはいちいち考えてやっていても、繰り返しているうちに勝手に脳や体が反応するようになってきます。そうなれば定着完了。よい感情が自動反応しはじめます。

いかがでしょうか。固定観念を書き換えれば、ネガティブな感情よりもポジティブな感情が出る場面を増やすことができ、日常のストレスをエネルギーに変えることができるようになります。ぜひ悪い固定観念をひとつひとつ破壊し、メンタル超人になってください。

 Kenichi Nishii
パーソナルビジネスコーチ。1973年大阪府生まれ。大阪大学大学院電子制御機械工学専攻修士課程修了。富士通株式会社に勤務後、WEBデザイナーになるため転職。人間中心の設計手法を学び、大企業のWEBサイトの設計やディレクションを多数手掛ける。現在は、これまでの経験を生かしつつ、人のコミュニケーションや能力発揮をテーマに、執筆や教育活動を精力的に行う。

Text=MGT