新型コロナウイルス感染を公表した錦織圭はいつ復帰できる?【コロナ禍のアスリート】

約1年の延期が決まった東京五輪。本連載では、まだまだ先行きが見えないなかでメダルを目指すアスリートの思考や、大会開催に向けての舞台裏を追う。

昨年10月には右ひじを手術

昨年8月30日の全米オープン3回戦を最後に試合から遠ざかっている。右肘手術を乗り越え、ツアー再開初戦のウエスタン・アンド・サザン・オープン(22日開幕、米ニューヨーク)が約1年ぶりの復帰戦の舞台となるはずだった。だが、パンデミックにのみ込まれ、復帰プランは白紙となる。男子テニス世界ランキング31位の錦織圭(30=日清食品)が16日、自身の公式アプリで新型コロナウイルス感染を公表した。

「残念なお知らせがあります。フロリダで検査を受けて新型コロナウイルスの陽性が確認されました。症状は軽いですが、すぐに隔離に入ります。21日に再検査を受け、次の更新をします」

発熱と倦怠(けんたい)感があり、自主的にPCR検査を受診。決戦の地ニューヨーク入りを予定していた前日の16日朝に陽性の結果が出た。ウエスタン・アンド・サザン・オープンは欠場を余儀なくされ、全米オープン(31日開幕、米ニューヨーク)に出場するかは、21日の再検査の結果を待って判断することになった。

生活拠点を置く米フロリダ州は、新型コロナウイルスの感染者が55万人を超え、米国内でも感染拡大が目立つ地域。練習拠点のIMGアカデミーではバスケットボール女子プロリーグWNBAが集中開催されており、会場入りの際に書類の提出を義務付けられるなど厳しい感染予防対策が取られている。錦織自身もうがい、手洗い、マスク着用などリスクマネジメントに細心の注意を払ってきたが、見えない敵を排除することはできなかった。

錦織は昨春から右ひじに痛みを抱え、昨年10月に骨棘(こっきょく)を除去する内視鏡手術を受けた。同11月から肘に負担の少ないスポンジボールによるヒッティング練習を開始。同12月に三十路を迎え「テーマはいろいろあるけど、まず体をしっかり整備したい。フォームや体の使い方がケガにつながった部分も絶対にあるので、長く(競技を)やるために見直そうと思っています」と語っていた。

今年からはマックス・ミルヌイ新コーチ(43=ベラルーシ)を招へい。復帰への道を順調に歩み、公式戦出場が視界に入ってきた矢先、コロナ禍により3月からツアーが中断された。

ツアー中断中の6月には、非公式の慈善大会を開催した世界ランキング1位のジョコビッチ(33=セルビア)が感染。その大会に参加した世界19位のグリゴール・ディミトロフ(29=ブルガリア)ら関係者9人に相次いで陽性反応が確認された。当初、男子ツアーは8月14日開幕のシティ・オープン(米ワシントン)で再開予定だったが、渡航制限などの問題で中止に。女子は8月3日からのパレルモ国際(イタリア)で再開した。

ツアー中断を受け、世界ランキングは従来1年間の算出期間を、暫定的に2019年3月から'20年12月までの22ヵ月間に延長。昨年と今年で同じ大会に出場した場合は結果が良かった方のポイントが加算される。錦織の世界ランキングは離脱中に7位から31位に転落。昨年はウエスタン・アンド・サザン・オープンが2回戦敗退、全米オープンが3回戦敗退と低調な成績に終わっており、今夏の結果次第で上位に再浮上する可能性は十分にあった。

英BBCの報道によると、米国の公衆衛生当局は陽性者に対して最低10日間の隔離を義務付けている。錦織が再検査で陰性となれば、制度上は全米オープンの出場が可能になる見通しだが、復帰戦がいきなり5セットマッチのグランドスラムとなれば、故障リスクは膨らむ。9月にはジェネラリ・オープン(8日開幕、キッツビューエル)、イタリア国際(14日開幕、ローマ)、ヨーロピアン・オープン(21日開幕、ハンブルク)、全仏オープン(27日開幕、パリ)と欧州でツアーが予定されており、復帰を焦る必要はない。'09年にも右肘手術を受け、約1年ツアーから遠ざかった経験がある。日本のエースとして長くコートに立ち続けるためにも、慎重な判断が求められる。

Text=木本新也