「それ、会社病ですよ。」日本のホワイトカラーの生産性が最低な理由 Vol.17


深夜残業を禁止して、朝型勤務に切り替えようという大手商社の取り組みが話題になりました。しかし、雇用や勤務体系を少しでも変えようとすると過敏に、ネガティブに反応するのが、日本です。労働者の酷使につながる、働かされる時間が増える、と。しかし、変えないと大変になる、という危機感を持っている会社も少なくありません。
 背景にあるのは、法体系を含め、日本の労働慣習が大量生産工場方式のままになっていることです。一斉に9時に始まり、5時に終わる。しかし、これでは今の時代にマッチしない。もちろん、9時5時の労働のほうが生産性が上がる産業もあります。過去において、そのスタイルが豊かな中産階級を多く生みだしたことも事実です。
 しかし、今や産業構造は大きく変わりました。知識集約型の産業あるいは働き方が、世界で大きな利益をもたらしている。時間ではなく、成果で管理されるべき時代。にもかかわらず、制度も感覚も変えられないのでは、生産性は上がりません。これも、日本のホワイトカラーの生産性が世界が驚くほどの低さになっている大きな要因のひとつでしょう。
 日本特有の事情があったことも不運でした。団塊世代のホワイトカラーの役職を無理に作らなければならなかった。結果として、「報告・連絡・相談(ほうれんそう)のための会議」が現場に溢れました。今でも1日中会議で埋まっているという中間管理職は少なくありません。

個が牽(けん)引する知識集約型の産業では、「ほうれんそう」はあくまで個の発想を豊かにし、刺激を得る手段として存在します。ところが、「ほうれんそう」自体が目的化してしまう現場が続出した。「ほうれんそう」のための資料やレポートづくりといった生産性のない仕事が生みだされ、本末転倒の現象にホワイトカラーが振り回されている。今なお、これは改善されていません。しかも、「ほうれんそう」を行うだけで、成果を追う活動をしていない管理職が、山のように滞留している。
 一方で、今や企業にとって戦力として欠かすことができなくなった女性の活躍を、旧態依然とした勤務形態が阻んでいることも顕在化しています。今、働き方を大きく変えなければ、日本企業の生産性は上がらない。すなわち、賃金も上がらないということです。
 このような構造変化のなかでは、“労働者の味方”であるかのような政策が、そのように機能しないことがあるという点に注意しなければなりません。民主党政権時代、古きよき時代に戻そうという規制強化の動きが何をもたらしたか。結局、非正規雇用をさらに増やしただけだったのではないか。実態とフィットしない仕組みをいくら作り上げても機能はしないのです。
 イデオロギーでは今や物事は解決できない。グローバリゼーションをなかったことにすることはできません。制度の再設計は、いずれにしても待ったなしになるのです。

Text=上阪 徹 Illustration=村田篤司
*本記事の内容は14年1月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい