【HEROs】サッカーJ3福島ユナイテッドFC「クラブが存在する限り、街作りに貢献したい」

2017年10月、アスリートによる社会貢献活動の輪を広げていくことなどを目的に「HEROs SPORTSMANSHIP for THE FUTURE」(以下、HEROs)が日本財団によって創設された。GOETHEでは社会貢献活動に励むアスリートの声を伝える連載をスタート。第3回は、試合会場にて福島県産の農作物や加工品を販売・PRを実施するブース「ふくしマルシェ」を設置するなど風評被害払拭に寄与している「福島ユナイテッドFC」の思いを届ける。


地元に愛され、経済効果を生むクラブになりたい

2011年3月11日。日本人にとって“その日”のことは誰しもが忘れることはできないが、このチームにとっては間違いなく必然的な使命を担った日である。東日本大震災から7年が経過。「福島ユナイテッドFC」の選手たちは、いまだに風評被害を払拭しきれていない福島県産の農作物をスタジアムやホームページで販売するなど、ガチンコで農業に取り組んでいる。その企画発案の中心人物である竹鼻快GMは、その意義について、こう語る。

「福島県は第一次産業である農業が盛んな土地柄だったけど、やっぱり一番は原発の問題でものが売れなくなった。県が克服していこうという課題は、地元のサッカークラブとしても、協力していきたいという思いがあります」

スタジアムで出店している「ふくしマルシェ」のブース

県や市、そして、アウェイクラブチームの理解と協力も得ながら、スタジアムで農作物を販売・PRを実施するブース「ふくしマルシェ」を設置。地元のスーパーマーケットなどでも販売するなど、今やサッカークラブの枠を超えて、彼らが作る農作物は“福島ユナイテッドFCブランド”として確立され始めている。その原点は、「地元に愛されるチーム作り」と竹鼻GMは語る。

「サッカーに興味がない人に対し、いかに“福島ユナイテッドFCがあってよかった”と思ってもえらえるかというのが発信点。震災があった当初から、とにかく福島をアピールしようと思っていた。県や市から委託を受けて、アウェイに試合にいく時に入場ゲートで観光パンフレットを配って、“ぜひ福島に一緒に遊びにきて下さい”と声をかけていたのですが、あまり効果が実感できなかった。風評被害をいかに払拭できるのかということをサッカークラブとして考えた時に、直接的に農家さんと関わってやれることはないかと思いつきました」

桃の収穫風景

県内の生産者、販売者を回り、「野菜の仕入れをさせてください」と直訴。若い農業従事者と組んで、農家の名前と福島ユナイテッドFCのコラボという形で次々と商品を世に送り出している。りんごや桃の木をクラブで買い取り、年間5、6回の作業を選手が取り組む。決して、PRのために行動しているのではなく、受粉から選定まですべて自分たちの手で行う。

そうした地道な取り組みの甲斐もあって現在では、クラブの名前は地元で知られ、サッカーチームとしての収益も年々増えている。竹鼻GMは、'07〜’11年にガイナーレ鳥取でGMを務めていた際、「サッカービジネスの限界を感じていた」と振り返る。その経験が今に生かされている。

「鳥取で痛感したことは、100人からお客さんが始まって、徐々に増えて行き、1000人、2000人となってきた。2週に1回ホームゲームがあって、2000人規模が移動するというイベントは鳥取市はないので、経済効果が表れてきて。簡単な話をすると、鳥取駅前の飲食店のおっちゃんは、ガイナーレの試合なんて観に来ないけど、緑のユニホームが店にくるとお金が落ちるという認識がだんだんできてきて。そうするとチームに目がいくようになる」

チームとして買い取ったりんごの木

地元に経済効果をもたらすようなチーム作りを考えた結果が農作物だったが、福島ユナイテッドFCはその取り組みだけで満足することはない。チームの練習でも使用している十六沼運動公園で、小学生や草サッカーの大会を実施。参加者に地元の温泉宿やホテルに泊まってもらい、街の活性化に貢献している。

また、2017年からは7月から8月にかけて県と協力して、桃をモチーフとしたユニホームを着て試合をするという取り組みを実行。今年の夏には、福島産の商品に対してネガティブな情報が流れていたタイに出向き、「FUKUSHIMA PEACH MATCH」という試合を行った。そうした画期的な取り組みは、Jリーグからも評価。昨年、HEROs賞を受賞し、今や全国区となっている。

2017年HEROs賞を受賞。HEROsアンバサダーの佐藤琢磨(左)から表彰された竹鼻GM

「もちろんサッカーチームとして強くなることが最優先ですが、クラブが存在する限り、その活動によって街作りにどれだけ貢献できるのか、ということはずっと続いていく。ふくしマルシェについても、もう一歩踏み込んで何か新しいことができないかな、と常に考えています

福島ユナイテッドFCは、公の場で「風評被害払拭」という言葉を使わない。それは、純粋に高品質な地元福島の農作物の価値を“広めたい”、“取り戻したい”という思いを伝えたいからだ。これからも、地元から愛され、そして、地元民の生活の中に当たり前のように存在するサッカークラブとして、活動の幅を広げていく。

2018年からは米作りも開始
FUKUSHIMA UNITED FC
福島県福島市・会津若松市をホームタウンとする日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するサッカークラブ。(所属ディビジョン:J3)。クラブ名のユナイテッド(UNITED)は「結ばれた、団結した、統一した」の意味に由来し、チーム・選手・スタッフ・サポーター、そして福島がひとつになって福島の発展・活性化のために活動していくことを表現している。



【HEROs AWARDとは?】

社会のため、地域のため、子供達の未来のため、競技場の外でもスポーツマンシップを発揮している多くのアスリートたちに注目し、称え、支えていくためのアワード。その年、最も「社会とつながるスポーツマンシップ」を発揮したアスリート、チーム、団体を表彰し、次の活動へとつながる支援を行う。


【HEROs AWARD 2017受賞者】

■HEROs of the year賞■
スポーツの力を活かした社会貢献活動のモデルにふさわしい、もっとも優れた「アスリート」を表彰。アスリート部門より1名を選出。

宮本恒靖:~スポーツを通じた民族融和プロジェクト~ボスニア・ヘルツェゴビナのスポーツアカデミー「マリモスト(小さな橋)」の挑戦


■HEROs賞■
スポーツの力を活かし優秀な社会貢献活動を行った「アスリート」「チーム・リーグ」「NPO」を表彰。アスリート部門:3名、チーム・リーグ部門:1団体、NPO部門:1団体を選出

<アスリート部門>
アスリートが自発的・主体的に取り組んでいる社会貢献活動を対象とする。
(NPO法人等の立ち上げ、または他の社会貢献活動団体と連携して実施している事業を含む)

・鳥谷敬:「RED BIRD PROJECT」
・アンジェラ・磨紀・バーノン:「Ocean’s Love」
・坂本博之「こころの青空基金」

<チーム・リーグ部門>
チーム・リーグが主体となって、競技、スポーツに関連する資産等(選手、チーム、スタジアム等)を活かして行う社会貢献活動を対象とする。

福島ユナイテッドFC(サッカー):風評被害払拭活動「ふくしマルシェ」

<NPO部門>
NPOが主体となり、スポーツの力を活かして行う社会貢献活動を対象とする。

一般社団法人世界ゆるスポーツ協会:すべての人々にスポーツを

※各部門の活動動画はHEROs AWARD 2017Webサイトで視聴可能


Text=鈴木 悟(ゲーテWEB編集部) 






福島県福島市・会津若松市をホームタウンとする日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するサッカークラブ。(所属ディビジョン:J3)
クラブ名のユナイテッド(UNITED)は「結ばれた、団結した、統一した」の意味に由来し、チーム・選手・スタッフ・サポーター、そして福島がひとつになって福島の発展・活性化のために活動していくことを表現している。