コシノジュンコ「日本文化の遊び心のある美にパリは惹かれている」【ジャポニスム2018】

日仏友好160年の記念イベント「ジャポニスム2018:響きあう魂」が、2018年7月から今年2月まで開催され、すごい盛り上がりだったという。縄文から若冲、琳派、アニメまでパリ内外の100近くの会場で、さまざまな日本の文化芸術を紹介。フランス人は日本のカルチャーをどう見たか、装飾美術館での「ジャポニスムの150年」展でアドバイザーを務めたデザイナーのコシノジュンコさんに話を聞いた。


「私のなかではジャポニスムは20年来も取り組んできた大きなテーマ」

「ジャポニスム2018」はたいへんな盛り上がりを見せました。装飾美術館での「ジャポニスムの150年」展アドバイザーを務め、和太鼓集団DRUM TAOのフランス初公演「和太鼓 DRUM TAO 『DRUM HEART』」で衣装デザインをするなど深く関わってきた身としては、うれしいかぎりです。

装飾美術館「ジャポニスム150年」展。©Graziella Antonini

ただし思うのですが、この盛り上がりは、何も2018年に突如として湧き起こったわけではありません。

私はファッションデザイナーとして長年パリコレに出てきましたので、日本とパリを往復するのが毎年の習慣でした。あちらで仕事をしていて、いつも肌で感じてきたものです。パリは日本を見ている、興味を抱いている、知りたいと心から思っていると。

思い返せば1998年のこと。その1年は「フランスにおける日本年」と位置付けられて、さまざまな催しが企画されていました。その際にもジャポニスムの展示があり、私も参加しました。

それまでの私は国や地域を意識しない、独自の普遍的なテーマを追い求めていました。自然が織りなす「○」のかたちと、人為でつくられる「□」のかたちを組み合わせて造形したりですとか。98年に、いい機会だと思い、初めて日本をテーマにデザインしてみました。そのときは、最も日本らしい存在として「竹」をモチーフにしたのです。

日本をテーマにした私のデザインは、フランスでも好評を得ました。日本の伝統的な文化や美的感覚はオリジナリティにあふれていて、他の地域の人たちからすると、本当に珍しくて神秘的に見えるようです。

衣食住といった生活と強く結びついて「美」が展開されていく。日本のそうした事物に、とりわけ世界の人たちは惹かれるのです。たとえば、お弁当という文化もそうです。かつて江戸時代の京都では、大事な相手をもてなすために鴨川のほとりへお誘いをすることがあった。川の上に席をしつらえて、将棋でも指して、その場でお弁当を開いて食事をする。器から料理まで心を尽くしたものを用意して、そのひとときの楽しみのためだけに供しました。

なんとも贅沢な遊びです。本気の遊び心によって、その場にだけ浮かび上がる美を実現させる。日本文化の根幹に通ずるそんな価値観と精神性は、永遠にすたれるものではありませんし、いつの時代のどの地域の人の心にも響くものとなります。

そうした日本の美を、私は1998年以来、表現してきました。私のなかでは「ジャポニスム」は20年来も取り組んできた大きなテーマです。

2017年にフランス・ギメ美術館で「Kimono,au bonheur des dames」展を開いたのに続いて、翌年「ジャポニスム2018」に携わることとなったのは、いわば私の日本の美探求の総決算ですね。

「ジャポニスム2018」をきっかけにしてよりいっそう、フランスでまた世界中で、日本の美が普遍的な価値を持って輝いていくのを私は願っていますし、もちろんそうなると確信しています。


Junko Koshino
大阪府岸和田生まれ。文化服装学院デザイン科卒業。在学中(19歳)に、装苑賞を最年少で受賞。1966年、東京・青山にブティック『コレット』をオープン。’78年、パリコレクションに初参加。’85年には北京にて中国最大のショーを、’90年にはニューヨーク・メトロポリタン美術館でファッションショーを開催。舞台衣装のデザインや、スポーツユニフォームのデザインなど服飾デザインのみならず、家具や花火のデザイン等も手がけ、講演・TV出演等、幅広く活躍する。


Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生