自らを追い込み、責任を背負うことで劇的に成長を遂げた大坂なおみ

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。112回目、いざ開講!

「新しいなおみも古いなおみもいない」―――2年ぶりに全米オープンを制した女子テニスの大坂なおみ選手

記者が「新しい自分になったと思うか?」と質問した気持ちもよく分かる。今回の全米オープンでの大坂なおみのプレーは、グランドスラム初優勝を遂げた2年前とは、質が違っていた。20歳だった前回は、若さと勢いの勝利。だが今回は、しっかりと自らのテニスをコントロールしていた。決勝戦の試合後、コートにゆっくりと寝そべり、勝利の余韻にひたる姿が印象的だった。

「素晴らしい選手たちが崩れ落ちて空を見上げてきたのを見てきたから、どんな景色なのかを自分も見てみたかった。とても素晴らしい瞬間だった」

決勝では、第1セットを失いながらもメンタルを立て直し、勝利に結びつけた。彼女の成長は、試合後のコメントにもよくあらわれている。

「新しいなおみも古いなおみもいない。自分がどうやって成長できるかだけだと思う。すべての失敗から学ぶことはある。この大会からも学ぶことは多かった」

「自粛期間は自分を見つめ直す期間になった。何を成し遂げたいのか、人々にどう覚えてもらう存在になりたいのか」

コロナで自粛が続くなか、厳しいトレーニングを積んできたという。その間に起きたブラック・ライブス・マター運動では、積極的な発言を続けた。今大会では、黒人への人種差別問題に抗議する黒いマスクを着けて登場し、さまざまな議論を呼んだ。優勝直後のインタビューでは、インタビュアーにマスクの意味を問われ、こう切り替えした。

「あなたが受け取ったメッセージは何でしたか? メッセージをあなた方がどのように受け取ったかに興味があります。話し合いが起きればと。USオープン会場の外で起きていることについては詳しくないですが、より多くの人がこのことを語るきっかけになるといいと思います」

あえて大きなものを背負い、プレッシャーもあっただろうが、彼女は勝ち続けることで、自分の“正しさ”を世界に訴えることに成功したといえるだろう。

「すべて上達につながった。最後は精神的に強い人が勝つ。そういう選手にずっとなりたいと思っていたし、一歩進めた」

2年前、決勝で憧れのセレーナ・ウィリアムズを破り、セレーナの勝利を願った多くのファンに「ごめんなさい」と涙を流した彼女はもういない。フィジカル、テクニック、そしてメンタルとすべてが大きく進化した大坂なおみ。自分を見つめ、失敗から学び、そして勝利からも学ぶ。そしてその発信力で世界をも惹きつけた彼女の時代が、しばらく続くのではないだろうか。


Text=星野三千雄