プロフットボーラー久保裕也 ロシアW杯「日本対ベルギー戦を見ながら」【連載番外編①】

ロシアW杯最終予選では2試合連続ゴールを決めるなど貢献しながら、本大会では日本代表落選という憂き目にあった久保裕也。それでも、この若きストライカーは、悔しさや悲しさを受け止め、それを未来の糧にするために、決して足を止めないことを決意した。5年前から単身海を渡り、周囲に日本人がほぼ誰もいないスイス、ベルギーで武者修行を続ける道を選択し、常にあえて厳しい環境に身を置いてきた24歳。ロシアW杯後の、知られざる思いを「ゲーテ」だけに綴った。  


日本が負けたことに対する悔しさはなかった。

7月28日からベルギーリーグでの3シーズン目がスタートする。ベルギーに戻ったのは、6月18日。チームでのキャンプに参加し、1シーズン戦うための体を作ってきた。もちろんベルギーでもワールドカップは盛り上がっていた。それでも僕は、やはり日本戦を見ることができなかった。応援したい気持ちはあったし、結果は気になる。だが、やはり自分が出ていない試合を見るのはつらい。なんとなく、日本の試合を避けてしまっている自分がいた。

僕が日本の試合を見たのは、決勝トーナメント1回戦のベルギー戦だった。自分にゆかりの深い2つの国が試合をするとなると、避けては通れない。思ったより冷静に見ることができた。単純に面白い試合だと思ったし、日本も強豪相手に一歩も引かない戦いができていたと思う。勝つチャンスはあったと思うが、それをさせなかったベルギーが一枚上手だったということだろう。

あの劇的な幕切れのあと、日本が負けたことに対する悔しさはなかった。試合を見ていても、その舞台に立っている選手たちをうらやましいと感じることはなかった。2ヶ月前、代表に選ばれなかったショックは大きかった。でも、いつまでもそれを引きずっていても仕方がない。しっかりと気持ちを切り替えることができたのは、自分としてはよかったと思っている。

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1サッカーファンとしては、このワールドカップを楽しむことができた。特にクラブのチームメイトであるGKロヴレ・カリニッチがいるクロアチアの活躍は印象にのこっている。モドリッチやラキティッチなど、トップリーグのスター選手が集まっていながら、誰もがチームのために懸命にプレーする。厳しい戦いが続くなかでも決して諦めることなく、前を向いて走り続ける姿を純粋にすごいなと感じていた。準決勝のイングランド戦は、僕のなかでは今大会いちばん印象にのこっている試合だ。あのときのクロアチアの勝利に向けた執念、エネルギーは感動ものだった。

気持ちはもう新しいシーズンに向かっている。僕が所属するKAAヘントは、先シーズン4位。今シーズンは3シーズンぶりの優勝が最大の目標であることは言うまでもないが、最低でもヨーロッパリーグ進出の3位以内は確保したい。決してリーグ内で突出した力を持つチームではない。先シーズンは序盤のつまずきでチームがまとまらず、シーズン中の監督交代などもあった。上位進出のためには、まずクロアチアのようにチームが一致団結して戦うことが重要だろう。そして僕も“点取り屋”としての仕事をまっとうしなければならない。

まずは今シーズン、しっかりと自分の仕事をしてチームを勝利に導きたい。それがきっと僕の未来につながる唯一の道なのだ。

番外編②に続く(7月28日掲載)


【連載最終回】サッカー日本代表落選について「すべてを受け止め、前を向く」


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Composition=川上康介


久保裕也
久保裕也
1993年山口県生まれの24歳。京都サンガF.C.のU-18に在籍していた2010、'11年と2種登録でトップチームに登録され、チームに帯同。高校3年だった'11年はJ2で10得点と活躍した。19歳だった2013年6月に単身欧州に渡り、スイス1部スーパーリーグのBSCヤングボーイズに移籍。昨年1月からはベルギー1部、ジュピラー・プロ・リーグのKAAヘントに所属し、移籍後7試合5ゴールの活躍でチームを上位プレーオフ進出に導いた。日本代表は、高校生だった'12年のキリンチャレンジカップでA代表初選出。昨年W杯最終予選では2試合連続ゴールを決めるなど、日本の本選出場に貢献した。
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