アマボクシング問題、鈴木長官の軽すぎる辞任勧告 ~ビジネスパーソンのための実践的言語学⑥

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「反社会勢力との交友が事実であれば、一刻も早く辞めるべきだ」ーーー鈴木大地スポーツ庁長官

相撲、レスリング、アメフト、そしてボクシング。鈴木大地スポーツ庁長官は、スポーツ界で問題が発生するたび、律儀に取材に応じ、コメントを発表する。今回の日本ボクシング連盟、山根明会長についての不正判定や反社会勢力との交際など多数の疑惑についても、「反社会勢力との交友が事実であれば、一刻も早く辞めるべきだ」と発言。当の山根会長から「なぜ調べもせずに、山根明を差別しているんですか? スポーツ庁長官! 五輪大臣!」と反論を食らっている。

見た目から言葉づかいまで、いまどき珍しいほどわかりやすい悪役に徹している山根会長の味方をするつもりはないが、鈴木長官のコメントに漂う、どうしようもない“軽さ”については、これまでも気になっていた。

「すべての選手が安心して競技に取り組める環境の整備に全力を挙げ、報告要求にしっかり対応していただきたい」(レスリング女子・伊調馨選手へのパワハラ問題で、日本レスリング協会に対して)

「このタックルは如何なものか??」(日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題について、自身のTwitterにて)

「大きな社会問題になっている。アメフト存亡の危機だ」(同問題について、日本アメリカンフットボール協会会長らの訪問を受け)

「正直、またかという感じ。日馬富士の暴力事件が起きて、再発防止に取り組んでいる最中にもかかわらず、こうした暴力事件が起きた。非常にがっくりしている」(大相撲の十両、貴公俊が付け人に暴行した問題について)

いずれもごもっともなコメントだ。だが、日本のスポーツ界を束ね、指揮する当事者としての危機意識は感じられない。どこか他人事で、コミットしているようでしていない。世論を見極め、それにおもねる方向でコメントを出しているだけなのではないだろうか。実際、鈴木長官がさまざまな事件の問題解決のために、自ら積極的に動いたという話は、ついぞ聞いたことがない。自分は安全地帯に身を置いて、コメントだけで“参戦”し、スポーツ庁長官としての体裁を保つ。これだけ問題を起こしている業界のトップであり、責任を問われても仕方がない立場であるにもかかわらず、自ら責任を取ることも、解決のためのアクションを起こすこともしていない。

日本のスポーツ界にはびこっているパワハラやセクハラ、暴力事件などを解決することは、スポーツ庁の重要な役割だ。ミニ栄やミニ内田、ミニ山根は、まだ日本中あちこちにいるだろう。なぜ彼らのような指導者が生まれ、権力を握ったのか。どうすれば彼らの横暴を止められるのか。いま鈴木長官が考えるべきは、そんな根本的問題の解決方法だ。2020東京オリンピック・パラリンピックに向け、これまで隠されていた多くの問題がまだまだ噴出するはずだ。いま大臣がリーダーシップをとって、しっかり対処しなければ、スポーツ界全体の信頼がどんどん失われていくだろう。

ビジネスの世界にもこういう人物は少なくない。社会のため、会社のためと、立派なことを口にはするが、身に降りかかるリスクは巧みに回避し、自分の利益はしっかりと守る。表ヅラがよく、人付き合いも下手ではない。リスクを犯さないからミスも少ない。そのため意外と出世したりするのが困りものだ。

彼らは、火のついたボールが手元にあれば、涼しい顔ですぐに誰かにパスをする。そして言うのだ。

「危ないから気をつけてください」

ええカッコしいで、当たり障りのないことを言う人には気をつけたほうがいい。彼らは決して自分で火を消そうとはしない。下手にかかわると、こっちがヤケドする可能性が高い。

Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images


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