東電SNS投稿に垣間見えた、無責任な意識  〜ビジネスパーソンの実践的言語学17

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!


「若者世代に事業を理解してもらう目的だったが、配慮が足りなかった」ーーー東京電力広報担当者

原発ネタで炎上とは、ブラックジョークとしても、あまりにもタチが悪い。東京電力は、10月29日にSNSの公式アカウントで廃炉作業中の福島第一原子力発電所の建屋内部の画像を投稿。それだけなら、上記コメント通りで東電が意図するところはわかる。問題は、そこに「#工場萌え」というハッシュタグを付け加えたことだ。

2011年の事故以来、世界中から注目されている福島第一原発をまるで工場の幻想的な夜景を披露しているかのような「工場萌え」という言葉で表現することに、東電内部で誰も違和感を持たなかったのだろうか。

SNSの投稿を拡散していくうえで、ハッシュタグは重要な意味合いを持つ。恐らく、東電のSNS担当者の評価は、フォロワーと拡散の数字で決まるのだろう。彼(もしくは彼女)は、そのために知恵を絞って「#工場萌え」という言葉にたどり着いたのかもしれない。東電は問題発覚後、「配慮が足りなかった」として、写真を残したまま「#工場萌え」だけを削除したが、その対応の軽さも気にかかる。

東電にとって、福島第一原発事故はもはや過去の事故なのだろか。「#工場萌え」からは福島の人々に対する配慮も、事故に対する反省も、世界中から見られているという意識もまったく感じられない。事故の当事者であるにもかかわらず、完全に他人事だ。これではフォロワー欲しさに災害の現場を訪ね、壊れた家の前でピースサインの写真を撮ってSNSに投稿したりしている人たちと同じではないか。

おりしも30日には、福島第一原発事故をめぐって業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電元社長・会長の勝俣恒久被告が東京地裁に出廷。被告人質問に対し、無責任な言葉で無罪を主張し続けた。

「津波対策は、原子力・立地本部がしっかりやってくれていると思っていた」

「(最高責任者としての責任を問われ)そういう風に言えるのか……万能ではありませんので」

「業務執行の権限は社長に譲り、社長が助言を求めてきたら補佐する。私は対外的な仕事や付き合いを行っていた」

「(津波の可能性を指摘されていたことについて)半信半疑のムードだった」

こちらも他人事。まるで自分たちも東日本大震災の被害者だといわんばかりの言葉を連ねている。

予見が難しかった地震であり、津波であったことは間違いないだろう。あんな事故がありながらも、東電という企業は存続している。国民の生活に必要であり、他に代わりのいない企業だからだ。だからこそ、今後同じような惨事が絶対に起きないようにしっかりと反省と検証をしていくことが彼らの責任なのではないだろうか。そこには刑期も時効もない。10年たとうが、20年たとうが、東電という会社が続く限り、彼らはそれを続けてかなければならない。それだけの事故だったということをいちばん忘れてはいけないのは、他でもない彼らなのだから。


Text=星野三千雄


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