“応援購入”という新しい買い物文化を! ~Makuakeの目指すビジョン(後編)

資金を募りたい事業者や団体が、インターネットを通じてサポーターを集める“クラウドファンディング”。この仕組みを使って、新たな買い物のスタイルを提案するのがMakuakeだ。「寄付のイメージが強いからビジネスとして成り立たないよ」という周囲の声をバネに試行錯誤を重ね、創業からわずか6年で東証マザーズ上場(2019年12月)を果たした。そんなMakuakeが提案する、新たな買い物文化とは? 後編ではその成長の過程に迫る。

運動量とスピードでチャンスを掴む――

クラウドファンディングの仕組みを使って新しい買い物文化を作りたいと、中山亮太郎氏(38)が2013年にサービスを開始したMakuake。しかし、クラウドファンディング=寄付という印象が強く、当初聞こえてきたのは「そんな綺麗事はビジネスとして成り立たないよね」と厳しい意見ばかりだった。

左から取締役 木内文昭氏、代表取締役社長 中山亮太郎氏、取締役 坊垣佳奈氏。

そんな状況を打破しようと3人が行ったのが、膨大な数のヒアリングだった。Makuakeでプロジェクトを実行したい企業を募ろうと訪問を重ね、現場の本当のニーズを掴むことに徹したのだ。創業前後の2~3ヵ月で、メンバーで手分けをし約400社を訪問したという。この尋常ではないアポイントにより、Makuakeを使うことによる”資金集め”以外のメリットが見えてきたのだ。

「顧客の反応を開発段階で知れるため、テストマーケティングとして活用できること。商品のリリース前からネット上でPRできるため、広告費も減らせること。また、プロジェクトの成功を実績として使えるため銀行の融資を受けやすくなる他、量産前に必要な数を把握できるため在庫リスクを軽減できるなど、事業者にとって嬉しいメリットが次々に見えてきました。あの運動量がなかったらチャンスポイントは見えてこなかったと思います。」(中山氏)

もうひとつ徹底したのが、圧倒的なスピードだ。準備期間は作らず2013年の5月7日に会社を登記し、わずか3ヵ月後の8月7日にサイトをオープンさせた。取締役の坊垣佳奈氏は、このミニマムスタートが重要だったと振り返る。

「立ち上げてから見えてくることの方が多いと思ったんです。これでいいだろうって思って作ったものが正しいとは限らないじゃないですか。サイトのUIや使いやすさ、また老若男女に使ってほしかったので、デザインや色合いなど全体的な雰囲気や世界観はこだわりました。でも、機能は実行者側のニーズや世の中の反応を見ながら変えていく必要があると思ったんです。」(坊垣氏)

「実行者とサポーター、両方のユーザーのニーズに柔軟に対応していく」という、いってしまえば見切り発車的なスタンスが、世の中のニーズに即座に対応し、数々のヒット商品誕生に結び付いたのだ。

2017年には、1億円を超えるプロジェクトまで誕生した。和歌山の企業が考案した、自転車とバイクの要素を組み合わせた”折りたたみ式の電動ハイブリットバイク”には当時国内最高額となる1億2000万円を超える応援購入金額が集まった。企業の大きさや場所に左右されることなく、“よいアイデアは広がる”というMakuakeの夢を体現することができたのだ。

和歌山のスタートアップ企業が考案した折り畳み式のハイブリッドバイク「glafitバイク GFR-01」。目標金額の300万円がわずか3時間で集まった。

また最近では、自宅で特別な体験ができるお取り寄せスイーツのプロジェクトが、気軽に楽しめる食体験として注目されている。人気和食店「大門 くろぎ」と南青山の洋菓子店「GENDY」がコラボレーションした、抹茶を練りこんだビターキャラメルバーは夢の競演と話題に。

世界一予約の取れないと言われるスペイン「エル・ブシ」に勤めた日本人パティシエ・松本氏監修の「至極のアイスジェラートケーキ“Tridente”」は、Makuake限定でトリュフやワインがふんだんに使われ、”ここでしか味わえない特別感”が消費者の購買意欲をくすぐっている。

ストーリーや背景を知った上で買うことによって、より特別な体験ができる。Makuakeを通して消費者の喜ぶ声をダイレクトに聞くことで、事業者側は「もっと喜ばせたい!」と、アイデアを出し、工夫を重ねる。現場の声を近くで聞いてきた取締役の木内文昭氏は、日本のモノづくりの在り方が変わってきているように感じるという。

「売り手と買い手の関係が、縦の関係から、徐々に横の関係になりつつあると思っています。ユーザーにどう喜んでもらうか、どう驚きを届けるか、これまで以上にユーザーに真剣に向き合っていないと受け入れられないと分かり、事業者の姿勢も変わってきていますね。エンドユーザーに直接評価されるというMakuakeのシンプルな仕組みが、もともとあった価値観をうまく表現できたとのだと感じています」 (木内氏)

10年後、Makuakeの目指す世界―― 

「そんなの綺麗事でビジネスとしては成り立たない」と相手にされなかった事業が「圧倒的な運動量とスピード」で、昨年には東証マザーズに上場を果たすまでに成長。しかし3人とって上場は、やっとスタートラインに立った状態だという。

そしてこのタイミングで次なる目標を考えた時、Makuakeで浸透させたい買い物文化がどのようなものなのか、社員全員で改めて考えたという。そこで生まれたのが、「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現というビジョンだ。 

上場前のタイミングで社員全員で考えたMakuakeのビジョン。渋谷区のマクアケ本社の壁に記されている。

「社員の幸福度の高い会社は、NPO法人としては成り立つが、ビジネスとしてはなかなか成り立たないと言われています。でも、私はそれを両立させていきたいんです。逆に社員の幸福度が高ければ、ビジネスは成立するはず。それを信じて今までやり続けてきました。上場することで稼ぐための会社に変わってしまうということは、よくある話かと思います。でも私たちは『Makuakeを通して目指す世界を実現させたい』とピュアに信じてやってきて、少しずつそれを受け入れてもらってきました。なので、これからもそれを信じてやり続けたいと思います」(坊垣氏)

「今まで、可能性がないと思われていた仕組みが、可能性があると思ってもらえるようになりました。上場はギアチェンジにはなった。でもビジョンに向けた進捗としてはまだスタートラインですね。これまでは機能や価格、なんとなくのデザインで買い物をしていた人が多かったと思うのですが、今はそこから+αが求められるようになったと感じます。その商品が作られた背景や想い、価値観。そういうことをセットにしないと満足できなくなっているステージに消費者がきていると思うんです。例えば、食が好きな人は、少しでも豊かな食体験を求める。まだあまり知られていないお店を知っているとか、どんな生産者が作っているかという背景を語れるとか。そういう+αの体験をMakuakeでしてもらいたいです。SNSやインターネットの普及でいろいろな世界が繋がったかのように言われますが、もっと多様な切り口で繋がることができると思う。応援購入という文化で、もっともっと世界を繋げていきたいと思っています 」(中山氏)

「Makuakeの提案する“応援購入”は、まだ一部で浸透し始めただけ。自分たちの目指す目標にはほど遠い」と3人はいう。この買い物文化は、日本にしっかりと定着するのか――。彼らの挑戦の幕はまだ上がったばかりだ。
 

Text=田中美紗貴(ゲーテWEB編集部) Photograph=太田隆生