弱々しい、だからこそ真実味がある。再起の道を歩む清原和博の言葉~ビジネスパーソンの言語学100

各界のトップランナーたちのコメントには、新時代をサバイブするヒントが隠れている。当コラムでは、ビジネスパーソンのための実践言語学講座と題して、注目の発言を独自に解釈していく。100回目、いざ開講!

「不安、絶望、微かな希望。これが今の僕の全てです」ーーー4年間の執行猶予期間を満了した元プロ野球選手の清原和博

誰もが認める才能を持ち、高校生のころからスター街道を歩んだ。だが、それゆえに虚勢を張らざるを得ず、いつしか覚せい剤に溺れた。そんな元プロ野球選手の清原和博氏が覚醒剤取締法違反容疑で現行犯逮捕されたのは2016年2月。その後、裁判で懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を受けた清原氏だったが、この6月執行猶予期間を終え、コメントを発表した。

「逮捕されてから、この4年間で私自身がどのように変われたのか、実感や自信を持てずにいるというのが正直なところです」

「自分の行為を悔いる日々の中で、薬物の恐ろしさ、この病気の実態を知り、人と繋がっていくこと、人に助けてもらうことの大切さを知りました」

コメントの最後に添えたのが、直筆の文字だ。

「不安、絶望、微かな希望。これが今の僕の全てです」

復活と呼ぶにはあまりにも弱々しい。かつて虚勢を張り続けた男の素直な言葉。徹底的に自分の弱さと向き合った男だからこその謙虚な言葉。堂々と胸を張るのではなく、背中を丸め、小さな声で吐き出すような言葉だったのではないだろうか。そんな姿が思い浮かぶからこそ、染み入るものがある。執行猶予が終わったからといって、その過去が消えるわけではない。自信はなく、不安を抱え、ときには絶望すらするだろう。だが、救いがあるのは、清原氏がこれからの人生に“微かな希望”を感じているということだ。

「薬物との戦いに終わりはありませんが、私はこれからの人生を薬物依存症で苦しむ人たちと、野球界、とくに私自身の原点でもあります高校野球に捧げたいと考えております」

弱々しい言葉だからこそ、真実味がある。おのれの弱さを知った男の真の強さを身につけたのではないだろうか。だからこそ応援したくなる。できれば自身の望む道を進み、いつかかつてのような明るい笑顔を見せてほしい。もう番長ではない。大きな荷物を背負った一人の男だ。誰もが弱く、何かしらの荷物を背負って生きている。意外にも端正な直筆の文字を見て、「ゆっくり行こう」とその大きな肩をポンと叩きたくなった。


Text=星野三千雄