パティシエ吉田守秀「パリのライフラインを支える菓子を作る」

新型コロナウイルスの感染拡大が世界を一変させている。3月17日からロックダウンがはじまったフランス・パリで暮らす日本人に、現地在住のカメラマン、松永学が話を聞いた。    
   

今だから物理的には離れるが、心の距離を縮める菓子が必要   

パリ7区にある超人気パティスリー「MORI YOSHIDA」。オーナーパティシエの吉田守秀さんとは、彼がお店をオープンした時に撮影で初めてお会いしました。フランス人に負けないフランスらしいお菓子作りと、その妥協をしない姿勢に圧倒されました。

吉田さんは、1977年静岡県生まれ。「パークハイアット東京」等を経て、2005年、静岡に「ナチュレナチュール」を開業。2009年にフランスに渡り、2013年、「MORI YOSHIDA」 をオープン。またたく間に人気店となります。その後、2年連続でフランスのTV番組 「LE MEILLEUR PÂTISSIER LES PROFESSIONNELS 」で優勝。フランスで最も有名な日本人パティシエとして知られ、2019年末には東京・渋谷スクランブルスクエアに出店しました。

現在、パリは政府によって、レストランやカフェ、ブティックなどは、すべて閉鎖。ただ、パティスリーは、フランスでは生活に不可欠なライフラインとして営業を続けることを許されています。今の状況、そして故郷、日本に対して思うことをうかがいました。

「お店を開けるか、閉めるか悩みましたが、これまで7年間、『MORI YOSHIDA』が今までやってこられたのは、この街の人たちのおかげなので、この街の人たちが困ってる時には何か手助けができたらと、日頃の感謝をカタチにするために営業する決断をしました。

感染対策として、店内はお客様2名に限定し、外に並んでいただく際には最低1メートル間隔をあけてもらうようにしました。お客様の動線を考慮し、商品の配置も通常と変えました。

フランス人のお客様は、完全防備な人と無防備な人とで真っ二つに分かれている印象があります。あと日本のニュースでは、パリにほとんど人がいない映像が流れているようですが、リアルなパリは少し違い、スーパーマーケットのようなライフラインは動いていますし、テレワークができない仕事で外出している人もたくさんいます。

4月のイースター期間ですが、通常、イースターに限らず、バカンス期間は地方の別荘やフランス国外に出かける人が多いので、パリのお客様が減るのですが、今回は移動禁止のため、イースターのチョコレートの卵も去年より売れました。外出制限のストレスで、フランス人のお客様は甘いものを求めているようです。

お店は営業していますが、自分の菓子作りでとても大事にしているマルシェが閉鎖されてしまい、旬の苺やルバーブのいい素材が手に入りにくい。あたり前のことがありがたいことだったと再認識してます。今あるもので最大限のパフォーマンスが出せるよう、菓子のクオリティーが落ちないよう心がけています。

今、私はお店以外に、ボランティアとしてHôpital Necker-Enfants maladesという子供の病院にもお菓子を届けています。きっかけは、店からわずか300mのこの病院で、16歳の女の子が亡くなったニュースを耳にし、また、病床が足りずこの子供病院にも一般のコロナウイルス感染者を受け入れていることを知ったことです。戦っている方々に手を差し伸べることは一緒に戦っていることと同じと思い、協力させていただきました。

今後、コロナ以前と以後で世界が大きく変わっていくと思います。お菓子も、人と人との物理的な距離は離れていても、心理的な距離を縮められるような、そんな菓子が求められていくのではないでしょうか。そこからまた、新しいアイデアが生まれてくるのだと思います。

日本のみなさんも、誰もが感染者や加害者になり得る状況の中で、未来への不安やストレスを日々感じているでしょう。まず、無理しないように、疲れないように、自分に合ったコロナウイルス対策をしてください。そして、今後どのような状況になっても、それに対応するチカラをつけてください。もちろん、自分も焦っています、いろいろと考えることがあります。でも、ネガティヴに考えたらキリがありません。みんなでコロナウイルスに負けないように頑張りましょう」


Text & Photograph=松永 学