なぜ、フランス人は日本のMANGAが好きなのか?【ジャポニスム2018】

日仏友好160年の記念イベント「ジャポニスム2018:響きあう魂」が、2018年7月から開催され、すごい盛り上がりだったという。縄文から若冲、琳派、アニメまでパリ内外の100近くの会場で、さまざまな日本の文化芸術を紹介。フランス人は日本のカルチャーをどう見たか、国立新美術館の真住貴子さんに話を聞いた。


MANGAという言葉は、フランスでは日本のポップカルチャー全体のことをいう

現代日本文化の代表格としての「MANGA」と、日本の首都「TOKYO」。世界に広く知られるこのふたつの言葉を結びつけた展覧会が、2018年11〜12月にパリのラ・ヴィレットで開かれた。「MANGA⇔TOKYO」展だ。

いまの日本をよく伝えるための企画であったわけだが、なぜ「MANGA」であり「TOKYO」だったのか。展覧会を企画・担当した国立新美術館 教育普及室長 主任研究員の真住貴子さんが、その狙いをこう語る。

「MANGAという言葉は、フランスではいわゆる漫画そのものだけでなく、日本のポップカルチャー全体をも指し示します。そこでこの展覧会ではMANGAという言葉のもとに、まずは日本の漫画、アニメ、ゲーム、特撮作品などのフィクションの精髄を見せようとしました。

ただし、MANGA文化としてはたいへんな広がりがあるので、監修の森川嘉一郎先生の提案で紹介するにあたってもうひとつのくくりを加えました。それがTOKYOというキーワードです。

日本のMANGAはいつの時代も、大都市・TOKYOの特徴や変化を鏡のごとく刻々と映し出してきました。展示ではTOKYO(現実)にまつわる描写をフィクションから拾い上げて、原画、模型、映像などでたどれるようにしました。ポップカルチャー作品と共に人々の心に浮かび上がるTOKYOを見ていただこうという趣旨です。

フィクションのなかのTOKYOを追っていくとあらためてわかるのは、TOKYOほど繰り返し、徹底的に壊されてきた都市もないだろうということ。たびたびカタストロフィと復興が描かれています。これは現実世界でも地震、火事、戦災に幾度も見舞われてきたTOKYOという都市の記憶が影響しているのではないでしょうか」

展示の目玉として用意されたのは、TOKYO都心部の1000分の1模型。サイズはなんと17m×22mにも達する。

「南は羽田空港、北は池袋、西と東は新宿高層ビル群からスカイツリーあたりまでを含む範囲の精巧な模型です。主にその空間内で起きたフィクションの出来事を探していきました。模型の上には巨大なスクリーンがあって、そこに国会議事堂を攻撃しているゴジラの映像が流れると、模型上の国会議事堂あたりにスポットライトが当たるしくみになっています。フィクションと現実世界を結びつけて見てみようという試みですね」

たとえ直接のファンでなくとも、フランスで日本のMANGAへの関心は高く、広い層にまたがっていると実感するという。

「なぜ日本のMANGAカルチャーがこれほど人気があるのか、その理由を知りたいという人はかなりいるようです。社会現象に対する関心ということですね。そうした問いにひとつの答えを差し出せたらというのが、この展覧会の目指すところの一つでした。

日本の文化がフランスで多くの人の強い興味を惹きつけているのは事実です。MANGAへの関心が、若い人の日本語を学習する動機になる例も多いようです。かつてはフジヤマ・ゲイシャ、近年ではソニーやトヨタのテクノロジーを通して日本の存在を知る人が多かったでしょうけれど、いまは漫画やアニメが日本を知ってもらう入口になっていますね。大いに求められているのですから、これから日本の現代カルチャーは、もっともっと海外へ出ていっていいと感じます」

Takako Masumi
国立新美術館主任研究員教育普及室長  1995年、東京藝術大学大学院修了。'97~2011年まで学芸員として島根県立美術館、島根県立石見美術館に勤務。’11年、文化庁芸術文化調査官として主にメディア芸術、現代美術などの振興を担当。'15年より現職


Text=山内宏泰 Photograph=太田隆生(人物)、Hiroyuki Sawada(展示、提供:国際交流基金)