ペットは相棒か? ~素人目線 松浦勝人の生き様 ~


どんな動物より、人間が一番残酷だ

子供の頃、家にはいつも犬がいた。最初に記憶があるのはサニーという名前のシェパード。幼稚園の頃だと思うけど、ある日、両親が朝からものすごく慌ただしくしていた。サニーの様子もいつもと違う。サニーのお産だった。真っ赤な赤ちゃん犬が5匹生まれて、最初はびっくりしたけど、それがしだいに丸々とした子犬に育っていく。とてもかわいかった。
 
 ある日、知らないおじさんが子犬を見にやってきた。その晩、5匹いた子犬が4匹に減っている。しばらくすると、また別の知らないおじさんが子犬を見にやってくる。その晩、子犬がまた1匹減る。子供の僕は、せっかく生まれた子犬がいなくなってとても寂しい思いをした。でもシェパード6頭をいっぺんに飼うのはさすがに無理なので、子犬を知り合いに分けていたようだ。父親は犬好きで、サニーが亡くなってからも、ビーグルやパグ、柴犬を次々と飼っていた。子供時代、僕にとっては、家に犬がいるのがごく当たり前のことだった。

ある日ペットショップに立ち寄ってみると

仕事を始め、ひとりで暮らすようになった頃は、忙しすぎて、犬と暮らそうなどという余裕は全然なかった。でもある日、ペットショップに寄ってみると、いろいろな熱帯魚が売られているのを見つけた。じっと動かず、岩にしか見えないんだけど、餌を目の前にチラつかせると、突然、大きな口がバカッと開いて、餌を食べる魚がいた。ほかにも見たことがない不思議な生き物がたくさんいる。そこから熱帯魚にハマりだした。ディスカスという魚から始めて、どんどん種類が増えていき、水槽の数も増えていった。

淡水魚から海水魚まで手を広げていく。淡水魚の水槽には水草を入れる。海水には水草というのがあまりなくて、サンゴを入れる。色も華やかだし、ブラックライトをあてると光るので、ものすごく派手で艶やかな水槽になる。でも、僕にはなんだか落ち着かない。緑が基調の水草の多い淡水魚の水槽のほうが好みだった。多分、魚を飼うというよりも、水槽を見て楽しんでいるのであって、絵画や美術品を鑑賞するのに近い感覚なのだと思う。

そこからさらに爬虫類にも興味が広がって、イグアナやウォータードラゴンを飼った。イグアナは草食だけど、ウォータードラゴンは肉食。金魚やコオロギを食べる。ただ飼うだけじゃなくて、大きな水槽の中に生態系みたいなものを作る。水を浅く張って、水辺を再現する。ウォータードラゴンは陸地にいる。水の中には小さなアロワナを入れる。さらに、亀を入れると、亀は陸と水を行ったりきたりする。

新社屋の打ち合わせスペースから見える景色は、六本木一丁目の仮オフィス時代とは違い、周りに高いビルがなく遠くまで見渡せる。

ここに餌のコオロギを入れると、ウォータードラゴンがかぶりつく。水に落ちるとアロワナが食いつく。亀も口にくわえようとするけど、動きが鈍いのでアロワナに横取りされてしまう。そこで、亀は餌を捕まえると、陸に上がって隠れて食べようとする。でも、今度はウォータードラゴンに横取りされてしまう。亀はいつまでたっても餌を食べられない。生きている金魚やコオロギが食べられてしまう容赦ない弱肉強食の世界、そんな生態系を見ているのが面白かった。友人が子供を連れて遊びに来た時、このような生態系を見せるのはあまりよろしくないんじゃないかと心配したけど、その子は見るなり大興奮だった。後で、友人に「大丈夫だった?」とたずねると、その子はまた連れていってほしいとせがんでいるという。

小アジの群れがとサメが泳いでいる。それがかっこいい

さらにエスカレートして、サメも飼い始めた。映画『ジョーズ』に出てくるホオジロザメの小型版みたいなホワイトチップシャークとブラックチップシャーク。サメのなかには、いつも泳いでいないと死んでしまう種類もいるため、広い水槽が必要になる。既製の水槽では小さすぎるので、特注で作るしかない。そこに数トンの水を入れるので、この設備を整えるのがかなり大変だ。

餌は、生きている小アジを入れる。10 匹ぐらい入れると、アジも食べられたくないから群れになって泳いで身を守る。それをサメが襲って食べる。小アジの群れが泳いでいて、サメが泳いでいる。この様子が、かっこいい。

いつも生きているアジを与えるわけにもいかないので、普段は冷凍のイカを与えたりする。すると、サメは生きているアジを追わなくなる。サメも、楽を覚えてしまう。アジも襲われることがなくなるものだから、緊張感を失って、群れを作らずに、バラバラに泳ぐようになる。水槽として、全然かっこよくないことになってしまう。サメの獰猛(どうもう)さ、非情な弱肉強食の世界。それを眺めているのは面白かった。確かに残酷だけど、人間ほど残酷じゃない。彼らが残酷なのは、あくまでも食べることについてだけ。人間みたいに、悪知恵を働かせたり、陰で何かを企んだり、人を脅したり、貶めたりはしない。あるのは食欲だけで、人間のように何種類もの欲を持っているわけじゃない。

愛犬ティーカッププードルのあんず

最近、また犬と暮らし始めている。周りの人から、「こういう時はどうやってしつけたらいいですか?」と質問されるんだけど、当たり前だけど僕はトレーナーでもないし、詳しくもないから聞かれてもわからない。だけど、ひとつだけ思うことは、犬って、こういう風にすればかわいいでしょ? というのが、多分わかっているんじゃないかということ。やっぱり人懐っこくて、寄ってくるし、くっついてくる。今は忙しいから寄ってくるな、くっついてくるなと言ってもくっついてくる。犬がそんな格好をするかなという蠱惑(こわく)的なポーズをして、誘ってくる。それがかわいい。きっと人間は、まんまと騙されているんじゃないかと思う。少なくとも、僕は騙されている。

松浦社長の愛犬ティーカッププードルのあんず。

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松浦勝人
松浦勝人
エイベックス代表取締役会長。1964年神奈川県生まれ。日本大学在学中に貸しレコード店の店長としてビジネスを始め、以降、輸入レコードの卸売り、レコードメーカー、アニメやデジタル関連事業などエンタメに関わるさまざまなジャンルに事業を拡大し続ける。
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