アンドアート松園詩織「"アートの持ち方"の概念を変える」【女性起業家】

SNSやインターネット技術が発展した現在、かつてないほど女性が起業しやすい時代が訪れた。豊かな感性や打たれ強いしなやかさ、そして、現状を打破する行動力を持つ女性起業家たちのビジネスに迫る。


小額からでも世界的な名作と接点を持てる

わずか5万円で著名作品のオーナーになれる。そんな革新的なビジネスで業界に激震を与えたのが、松園詩織さん率いるANDART(アンドアート)。

「アートは、暮らしを豊かにする素晴らしいもの。でも、日本では、アートを所有できるのはごく一部で、大半の人にとって手の届かないものでした。そんな現状を変えたかったんです」

こうした想いを抱くようになったのは、あるアートイベントに携わった経験から。

「アートの価値や値づけの仕方、マーケットの仕組みなど、アートの業界は、素人にはわかりづらい一面があります。しかも、著名アーティストになると作品は高額だし、大型のものは展示スペースの問題もあるので、所有しようと思う人が少ないのもムリはないなと。それだと、アートは一部の富裕層の間でだけ取引され、場合によっては、海外に流出してしまうこともあり、日本にとっても大きな損失。そこで思いついたのが、複数の人でアートをシェアするサービスでした」

もともと起業への興味はあったという松園さんだが、アートに関するキャリアはほぼ皆無。

世界的な人気を誇るKAWSの「NO REPLY」。趣旨に賛同したGMOインターネット熊谷正寿氏が出品。6月、7月の2回に分けて販売された1700万円分のオーナー権(5万円~)は、両日ともに数十分で完売。オーナーは、オーナー権の保有率に応じた優待が享受できるほか、権利をサービス内で売買することも可能だ。

「でもそれは、固定観念に縛られず、一般の人の視点に立ったサービスを生みだせる強みでもあります」 

異端=希少価値が高いと捉え、武器に変えてしまう。そんな強さが、松園さんにはある。

「友達からは"男っぽい"って言われます(笑)。COOを務める高木千尋は前職の上司で、『あなたの5年間を私にちょうだい』と言って、口説きました。安定した生活を捨てて来てくれたのだから、結果を出さないと」

大胆な発想とデータに基づいた戦略、人を動かす熱意。それは確実に形となっている。実際、6月に同社初の販売となる世界的アーティストKAWSの作品、7月に日本を代表する有名彫刻家の大型作品と続き、計4300万円分のオーナー権がそれぞれ即完売と、滑りだしは順調だ。

「作品は"オーナー"となった限られた方のために、特別展示パーティなどを予定しています。また、アートは多くの人に見られた方が幸せという思想の元、商業施設での展示もしていきたい。共同保有によって日本にパブリックアートが増え、誰もが気軽に楽しめるようになる。そんな未来を目指します」


松園詩織の仕事における三種の神器

Shiori Matsuzono
1988年東京都生まれ。学習院女子大学卒業後、サイバーエージェントに入社し、デジタルマーケティング事業や新規事業立ち上げを経験する。2018年、ART GATE(アートゲート)を設立、’19年7 月に ANDART に社名、サービス名を変更。https://and-art.jp/


Direction=島田 明 Photograph=丸谷嘉長(カウンタック写真部) Text=村上早苗 Hair & Make-up=豊田まさこ