ユベントス守護神ブッフォンの“笑えないジョーク”を反面教師に~ビジネスパーソンの言語学83

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座83、いざ開講!    

「君は武漢の出身かい?」―――ユベントスのGK、ジャンルイジ・ブッフォンが中国人のファンにむかって

毎日のように感染者の数が増え続ける新型コロナウイルス。ついに東京マラソンの一般参加が取りやめとなるなど、日本も緊急事態の様相を呈してきた。そんななか伝わってきたヨーロッパサッカー界からのニュースは、イタリアが誇るGK、ユベントスの守護神ジャンルイジ・ブッフォンの暴言だった。カップ戦の終了後、出待ちをしていた中国人のファンに彼はこう言ったという。

「気をつけて、君はコロナを持っているかもしれない。見てみよう。あぁクソッ! 君は武漢の出身かい?」

口調はあくまでもジョークだったようだが、ブッフォンの差別的な発言はイタリア国内外から批判を浴びることとなった。だが、この発言を批判できる日本人がどのくらいいるのだろうか? ネット上には今回の新型コロナウイルス問題について中国人を批判する声が飛び交い、各地のマラソン大会で中国人参加者に自粛を促すなど、国籍だけで排斥するかのような動きも少なからず見られる。

新型コロナウイルスについては、まだあまりにも情報が少なく、疑心暗鬼になってしまう気持ちは分からないではない。でもだからといって、差別や偏見を許してはならない。

かつて中国の広東省や香港で流行したSARSが世界的に問題となったとき、ヨーロッパで露骨に嫌な顔をされた経験がある。「私は日本人です」と言いたい気持ちにもなったが、考えてみれば日本に来たイギリス人とドイツ人とフランス人を完璧に見分けることなど容易ではない。同じように、欧米の人間に中国人と日本人、韓国人を見分けることは難しいのだ。

ましてや今回の新型コロナウイルスでは、日本は武漢(中国)に次ぐ感染国として世界から注視されている。「君は日本の出身かい?」とジョークでもなんでもなく言われる可能性は高い。いま日本人のなかにある中国人に対する差別感情は、そのまま自分たちに跳ね返ってくるだろう。

もはやわれわれは当事者だ。中国からは対策を学ばなければならないし、ともに解決に向かって動いていかなければならない。差別や偏見は何も解決しない。そんなことよりも現実を直視して前に進まなければならないだろう。

Text=星野三千雄